株式会社マクアケ 代表取締役社長の中山亮太郎氏に聞く「コロナ危機における人事課題II」【第2回目】(後半)
2020年5月15日(金)、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」を提供するHR Tech スタートアップ 株式会社ZENKIGEN(代表取締役CEO:野澤 比日樹)は、日本初のCHRO養成講座「CANTERA」を運営する株式会社All Personal(代表取締役:堀尾 司)と共同で、新型コロナウイルス関連の緊急対応に奔走する人事担当者の悩みにリアルタイムで答える「コロナ危機における人事課題の相談所II Vol.2」を実施いたしました。
今回は株式会社マクアケ 代表取締役社長である中山亮太郎 氏をゲストに迎え、堀尾氏と清水が参加する形で1時間のウェビナーを開催しました。
記事後半では、フリートークでの質疑応答の詳細についてお伝えする。
記事前半はこちら。
Q1. 上場直後の現ステージで事業を推進していく際、どんな点を意識されているでしょうか。また今後、重要視すべきポイントは変化すると思われますか。
中山:上場前後においてもコロナ禍においても、意識は変わりません。と言うのも、本質は何かという点では変わらないからです。
マクアケは社員数がおよそ100名。売上もまだ数十億円前半と事業規模はそれほど大きくないのですが、その中で意識しているのはカルチャーの濃さとビジョンの浸透の濃さ、そしてチームワークですね。
また10人でできる仕事を50人でやらない、1か月で終わるのに3か月かけない、といった生産性は意識しています。そのあたりはカルチャーにも表れていると思います。ミドルマネジメントがワークしていない状況で、人員を簡単に増やしてしまうことはスタートアップでありがちだと思います。
ですから、静脈・動脈の太さと、毛細血管まで行き渡らせるセンサーのようなところは、相当意識してやりました。つまり、マネジメントとしての毛細血管の濃さですね。
マクアケでは今、100人規模でこの濃さができているので、おそらく“500人力”は出せている気がしています。ここへきてようやく、自信を持って組織の拡大のようなことができる段階に来た感じですね。
Q2. 経営計画を見なおす可能性があります。休業や解雇という話が出てくる場合もあると思うのですが、人員整理をする場合、どのような判断で進めるべきでしょうか。
中山:難しい問題ですね。こればかりは人事の責任ではありませんし、コロナでピボットしなければいけなくなったのか、あるいは一過性の辛さなのかで違うのではないでしょうか。一過性であれば、帆の張り方を変えるだけで追い風になっているはずです。
たとえばアパレル業界を見ると、おでかけファッションの受注は下がっているものの、機能性ファッションは伸びています。帆の張り方次第でマーケットが明るくなる場合もあるので、資金調達して何とか乗り越える方がよいのではないでしょうか。
本当に必要な人であれば退職させるべきではないと思います。ワークシェアリングを活用して、伸びている会社に紹介することもできます。
きれい事に聞こえるかもしれませんが、能力ではなく、ビジョンやカルチャーとのシンクロ度を優先した方がいいと思います。会社の向かう先と同じ方向を見ているメンバーなら、最も成果を出していない人だとしても残すべきではないでしょうか。そういう人であれば、絶対一緒に乗り越えていけるという気持ちはありますね。
もし本当に退職させなきゃいけない時が来たら、その苦悩はシェアする方がいいと思います。かっこつけないで中身を分かち合うことが大切だと思いますね。
堀尾:コロナがあろうとなかろうと、スタートアップがピボットできなければ衰退してしまうはずです。だから今回で言うと業界的にシュリンクしているのであれば、もう1回創業期に戻っているのと一緒じゃないですか。4月中に転換できていないのであれば、相当厳しい状況にあるとの前提に立った方がいいと思います。
中山さんのお話にもありますが、創業期のメンバーとしてもう1回一緒にやれるのは誰なのかと、そういう感覚で双方腹を割って話すことが今、求められているのではないでしょうか。赤裸々に話して、それでもついてきたいというメンバーとは一蓮托生である。そういう感覚に立った方がいいと思います。そして腹を割らせることが、ある意味、人事の役目ではないかと思います。
Q3. リモートワーク時に健康面などに変化はありましたか。
中山:健康面は改善していましたし、成果も含めて、いろんな点で良くなっていましたね。一方で人の成長が事業の成長につながっている部分もあることから、「育成」については気になっていました。
今までリアルで会っていれば、横の人や先輩の背中を見たり、ちょっとした電話でのしゃべり口を聞いてコミュニケーションの仕方を学んだり、すぐ尋ねることができたりしましたよね。そういう「五感で感じる育成材料」が、リモートだとどうしても失われがちなので、後々、そこの部分はボディブローのように効いてこないだろうかと心配すべき点だと思います。
リモート下でもチームの熟練度は結構向上するのですが、個の成長については、今できる目の前のことを一所懸命効率的にやっているが、成長・レベルアップはするのか、という点はすごく注意して見ています。
Q4. カルチャーを醸成していく上で、オフィスは必要だとお考えですか。
中山:コロナ禍の前にフリーアドレス制を導入すると、びっくりするぐらい拡張を抑えることができることが分かりました。その結果、当初より大幅に少ない座席数で済むなという感覚を持てました。オフィスに関しては、事業がマーケットフィットして、しっかりと黒字化したタイミングで今のオフィスに投資しました。僕ららしいオフィスにしたくて、そこに僕らの色、ビジョン、カルチャーを全部投入したというのが今のオフィスです。もし、オフィスの縮小を考えている会社があったとしても、オフィスは自分たちが目指す世界観のショールームだと考え、小さくても、カルチャーを体現するようなリアルの場を持つのがいいと思いますね。これまで世の中一般的にはオフィスは生産性を100%重視して作られことが多かったと思いますが、思想やカルチャーを7割くらい重視して作っていくくらいでも良いと考えています。その場所があることで、リモートでも、なんとなく同じ色になれます。
育成の面でリモートの弊害も感じているので、緊急事態宣言解除後も“いいとこどり”でいきたいと思います。全てのしがらみを取り除き、何が合理的なのかについて、聖域なし、忖度なしで一つひとつメスを入れていくつもりです。
人事の皆さんへのメッセージ
堀尾:ゼロベースで何が大事なのかをハイブリッド式で考えなければいけないと思います。中山さんのおっしゃる“いいとこどり”は絶妙の表現だなと感じます。Geppoで事実を把握していたマクアケだからこそできる部分もありますが、逆に事実を把握すれば同じようにできる可能性も広がります。緊急事態宣言の残り2週間で、徹底的に社員の皆さんの事実や、その裏側による感情を把握して、自社に合ったハイブリッド式の働き方を定義できることが成功の近道だと思います。大変な2週間になるかと思いますけれども、ぜひ一緒に頑張りましょう。
中山:3つあると思っています。1つ目に、ぜひ人事の皆さんは社長だと思って仕事をしてください。社長に意志決定してもらわなければいけないことは、ガンガン言って構わないと思います。
2つ目に解像度をどんどん上げていくことです。とにかくリモートだからこそ、社員とのコミュニケーションを最大化するのが良いと思います。社長では得られない声がいっぱい出てくるはずです。
3つ目が人事施策の瞬発力ですね。ぜひ実行スピードを高めることを意識して、あらゆることをシミュレーションしてほしいなと思います。たとえば、リモートになった時に在宅勤務用の椅子やデスクはどうしようとか、そういう自分の中で考えられることについてです。社長や上司に意志決定や稟議を取らなければいけない場合もあると思いますが、あらゆることに備えることが大切です。
なぜなら、いつどういう形で緊急事態宣言が解かれるかは安倍総理でさえ分かりません。そこに対してギリギリまで情報を手に入れ、解像度を上げた上で正しい施策をしていくことが重要になります。
僕はよく「バットのスイングスピードを上げろ」と言っています。イチローがなぜあんなに安打が打てたのかと言えば、スイングスピードがめちゃめちゃ早いので、ギリギリまで待って正しいスイングができたんですね。ですから、スイングスピードを上げることを意識するのはとても大事だと思います。
とにかく今、人事の皆さんは必要とされています。ぜひリーダーシップを持って人事の仕事をしていただければと思います。
中山 亮太郎(株式会社マクアケ 代表取締役社長)
堀尾 司(株式会社All Personal 代表取締役CEO)
清水 邑(株式会社ZENKIGEN コミュニティプロデューサー)