株式会社カオナビ 取締役副社長 COOの佐藤寛之氏に聞く「コロナ危機における人事課題II」【第1回目】(後半)
2020年5月12日(火)、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」を提供するHR Tech スタートアップ 株式会社ZENKIGEN(代表取締役CEO:野澤 比日樹)は、日本初のCHRO養成講座「CANTERA」を運営する株式会社All Personal(代表取締役:堀尾 司)と共同で、新型コロナウイルス関連の緊急対応に奔走する人事担当者の悩みにリアルタイムで答える「コロナ危機における人事課題の相談所II Vol.1」を実施いたしました。
今回は株式会社カオナビ 取締役副社長 COOである佐藤寛之 氏をゲストに迎え、堀尾氏と清水が参加する形で1時間のウェビナーを開催しました。
記事後半では、フリートークでの質疑応答の詳細についてお伝えする。
記事前半はこちら。
Q1. コロナの収束が見えない中で不安を感じる社員は多いと思います。社員にどのようなメッセージを発信していますか。
佐藤:月に一度の全社会議で代表から話をしています。その際、事前に確認した社員からの声を踏まえた上で、安心トーンでいくのか、頑張るぞ!と盛り立てるのかチューニングしています。
僕自身は、COOとしてSlack上で考えていることをつぶやいています。コロナをきっかけに話しかける機会は意識して増やしました。発信を増やすと反応が返ってきますし、そこを踏まえて会社全体のメッセージを代表と相談しています。
また新規事業を皆で考えるチャンネルも開設しました。こういう時期だからこそ在宅でも元気になろうという気持ちで始めたのですが、かなりいいアイディアが出てきました。
Q2. 部門を超えたコミュニケーションが必要だとのお話がありましたが、交流の活性化と運用のポイントを教えてください。
佐藤:Zoomにトークルームを作りましたが、うまくいきませんね。冷静に考えれば、ただ仲良くしましょうと言われても、会ったこともない人と飲みにいかないし、雑談なんか弾むわけがありません。
ですから新規事業の部屋のように、共通のテーマがあってリラックスしながら話せる環境が必要だと思います。本業にリーチする形で、部門を横断するようなコミュニケーションが生まれるプロジェクトスタイルを通じ、イシューとかタスクを意図的に生み出していくことは大事かもしれません。
堀尾:ベンチャー企業の例ですが、一般職全員を対象に、1か月ごとにメンター、メンティのシャッフルを始めました。インプットではなく、アウトプットの機会を加えたネットワークを作ろうという意図があります。意図的に愚痴を言える存在を作り、毎月シャッフルすることで飽きずにいろいろなことができるようです。
また、家族の悩みを話す部屋や、4~5社が会社の壁を越えて同じ趣味の人が集まるグループを作っているところもあります。皆さん、アウトプットの場を作りたいのでしょうね。
Q3. 社内の雰囲気を見たいと、対面を希望される就職活動中の学生、求職者がいます。どのように対応すべきでしょうか。
佐藤:そもそもオフィスに誰もいないので難しいですね。
今後、企業に帰属する誘因は、誰と働くか、どこで働くかという物理的なものから、どんな仕事をするか、どんなタスクに取り組むかに移っていくとの論調もあります。仕事そのものが面白くないと人を惹きつけられないとも言われますが、そうなったら、1つの会社にコミットすることや正社員であることの意味は薄くなってしまうでしょう。僕自身はワンチームのような姿勢が好きなので、採用に限らず組織の力を信じられなくなることへの懸念は持っています。
堀尾:チームの力を信じているからこそ、場所が変わってもチーム力を求める傾向もあるかもしれませんね。リモートの環境で、人事側も応募者側も決めきれない話はあると思います。
採用側は相手に合わせすぎず、決断できない時はご縁がなかったと割り切ることも必要になってくるでしょう。一方、応募者の方も、今後は仕事がリモートに移行する可能性を前提に物事を決断できる人が市場で求められますので頑張ってほしいです。
Q4. 緊急事態宣言の解除を見据え、段階的にオフィス勤務に戻す予定です。カオナビさんではどのように対応されていく予定ですか。
佐藤:今後、出社は週に1回になるかもしれませんが、間違いなく従業員が選ぶ形になるでしょう。理念の浸透、文化醸成、生産性の向上、全てにおいて物理的な場所に依存しない工夫をしたいなと思っています。
やっぱり家の方が安全だし、生産性も上がるという方は家で全力を尽くしてもらうし、夫婦2人が家で仕事していると気まずいから交互に会社に行きたいと言うのも、正しい声だと思います。社員が主体 的な意志を持っているということを前提に、働き方を選んでいただくことになると思います。その代わり、どちらを選んだとしても生産性とかモチベーションが落ちない工夫を全員で考えていくことになるでしょうね。
Q5. ウィズコロナにおいて「タレントマネジメント」の範囲で重要な課題になると思われることを教えてください。
佐藤:リモートワークを通じ、プロアクティブに動ける人とそうでない人の差ははっきりしました。優秀な人たちをどう配置し、満足のいくミッションやゴールを設置してあげるのかは非常に重要になると思います。自社におけるリーダーシップとフォロワーシップのバランスであるとか、自分自身どちらが心地よく、またどういう生き方をしたいのか。そのあたりの可視化がカギになってくるでしょうね。
優秀なマネージャーであれば、移動時間に左右されず、東京であろうと大阪であろうと仕事のできる時代が来てしまったわけで、これまで以上に人材獲得競争は進むと思います。ですから、優秀な人が活躍できる環境づくりはより大事になってくるでしょうね。
ただ本質的なところで、自ら企画を考え推進できる人材が求められるという点は、働き方がどうなろうと変わらないと思います。
堀尾:フォロワーシップを持つ人たちも、自分の個性をうまく活かしながらリーダーシップをどのように支えるかというオーナーシップが、すごく重要になってきたんでしょうね。
だからこそ結果だけじゃなくプロセスも見て人事がマネジメントしてあげないと、全員が活躍できなくなってしまうと思います。
Q6. リモートで生産的に働けない社員に対してはどう接していらっしゃいますか。
佐藤:基本的にマネージメントが機能してない状態だって捉えることができるのではないでしょうか。つまり本人にやる気がない、もしくは働きたくないのであれば仕方ありませんが、多くの人は、この会社で何かを成し遂げたいのか、なんらかの社会的な介在価値を感じたくてそこにいるわけです。ですから社員の生産性がなぜ上がらないのか。なぜモチベーションが上がらないのかという問題については、マネージャーがまず真摯に寄り添うべきだと思いますね。
仕事ができないなら切ってしまえと言うのは、あまりにも無責任な話だし、マネージャーとして能力がないことを証明することに他なりません。生産的に働けないのは、自分のゴール設定が不明確だからではないだろうか。タスクの割り振りが不明確なのかもしれないとまず考えることが大切だと思います。
堀尾:社員の皆さんは厳しい状況で働いています。ですから過重労働で生産性が上げられていないのではないか。あるいはマネジメントがどのように自分を可視化して見せているかを見直すといった作業が必要だと思います。仮に少しでも社員のせいにした場合、アフターコロナになった時に逆に人事が疑いの目で見られるという可能性もあります。
佐藤氏からのメッセージ
佐藤:新しい働き方を考えるのはとても前向きな姿勢です。経営陣は、悩みながら進んでいけば、完璧じゃなくてもいいかなと考えるところがあります。一方、人事の皆さんは極めてポライトで誠実で一生懸命な方が多いので、楽天的な経営陣と現場との板挟みになり辛いことも多いと思います。
でもこうした変化の時代は100点ではなく65点、75点でよいのだと思います。今は一緒にトライし、ディスカッションしながら、何か新しいものを生み出すチャンスなのかもしれないと考える時があってもよいと思います。繰り返しになりますが、これからの時代は間違いなく、人事の人達がキーパーソンとなってくるので、仕事に誇りを持ち一緒に将来を考えていきましょう。
佐藤 寛之(株式会社カオナビ 取締役副社長 COO)
堀尾 司(株式会社All Personal 代表取締役CEO)
清水 邑(株式会社ZENKIGEN コミュニティプロデューサー)