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株式会社カオナビ 取締役副社長 COOの佐藤寛之氏に聞く「コロナ危機における人事課題II」【第1回目】(前半)

佐藤 寛之 (株式会社カオナビ 取締役副社長 COO)

堀尾 司 (株式会社All Personal 代表取締役CEO)

清水 邑 (株式会社ZENKIGEN コミュニティプロデューサー)

「コロナ危機における人事課題の相談所II 第1回目」ライブ配信

2020年5月12日(火)、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」を提供するHR Tech スタートアップ 株式会社ZENKIGEN(代表取締役CEO:野澤 比日樹)は、日本初のCHRO養成講座「CANTERA」を運営する株式会社All Personal(代表取締役:堀尾 司)と共同で、新型コロナウイルス関連の緊急対応に奔走する人事担当者の悩みにリアルタイムで答える「コロナ危機における人事課題の相談所II Vol.1」を実施いたしました。

今回は株式会社カオナビ 取締役副社長 COOである佐藤寛之 氏をゲストに迎え、堀尾氏と清水が参加する形で1時間のウェビナーを開催しました。

コロナ禍は続くと考え成長を見通す

「ぎゅっと働いて、ぱっと帰る」を行動指針に掲げるカオナビさんでは、どのような判断でリモートワークに移行していきましたか。

佐藤:3月頭から在宅勤務の推奨を始め、緊急事態宣言云々という発言が聞こえ始めた3月26日には、出社を停止し、フルリモートに移行しました。僕自身、それまでリモートには反対でした。ベビーシッターや介護サービスの費用を負担してでも、顔を合わせて話した方がよいと考えてきましたから。ですから手法にこだわるというより、どうすれば生産性の高い状況を作れるのか、ゼロ・リセットで考えてみようという姿勢でした。

今回、5万円の「在宅勤務支援金」を一律で付与されたり、細切れに働くことを認める「スイッチワーク」を導入されたりしていらっしゃいますね。

佐藤:大切なのは、お客様に迷惑をかけないことと、事業の継続です。その前提に立つと、細かいルールで縛ることや、平等かどうかという議論はあまり意味がないと思いました。アンケートをとったらWi-Fi環境がない社員もいたんです。そこで思想や制度をあれこれ言うより、必要なものをパッと購入して、事業継続するためのスピード感を大事にしました。

初動が早かったことから、設備面や制度面の検討をする前に、何を止め、何をやるべきなのかについて、経営陣がじっくり議論できたのは有意義でした。その際、この数か月を凌ぐという発想ではなく、コロナ禍が続くことを前提に売上や成長を考える姿勢こそが、ダーウィンの進化論でいうところの変化への適応だと考えました。そもそも8時間、家で仕事するのはムリですよ(笑)。法制度的な問題は一旦横に置いて、一生懸命働く人にとってどんなルールがいいんだろうと考えた感じですね。

初動が早かった秘訣はどこにあるのでしょうか。

佐藤:常に環境の変化に敏感である姿勢は、ベンチャー企業として大切にしなければいけないと、自戒の念もこめて改めて感じました。ですから経営陣には、この未曾有の変化に飲み込まれてしまうのか、あるいは生き残れるのか。これはピンチでもありチャンスでもあるとの感覚がありましたね。

生産性だけでは測れない。リモート時代の働き方

リモートワークでの社員とのコミュニケーションで気をつけていらっしゃる点を教えてください。

佐藤:コミュニケーションの質や量は強烈に意識しますね。

具体的には3つあって、まず短くていいからコミュニケーションや、自ら開示する回数を増やすことですね。いわゆる“信頼の前払い”を意識的にやらないと、コミュニケーションの齟齬や、部下に対するマネジメントのモチベーション低下を招くよねと、これはマネージャーともよく話しました。

2つ目に、部門を超えたコミュニケーションです。同じ部門で仕事をする人はともかく、エンジニアと営業になると話をすることもなくなります。ですから、バリューチェーンを超えた組織としての一体感をどう形成するかを考え、シャッフルのランチを企画したりしました。

3つ目として感じるのは、雑談の大切さですね。オンラインになって「ちょっといいですか」と声をかける機会が圧倒的に失われました。
論理的な会話や効率的なドキュメントによって、確かに仕事全体の生産性は上がるのですが、人間として感情を持ち、きちんとお互いに支え合うような仕組みを能動的に取り入れないと、ロボットみたいな働き方になってしまいます。ですからクリエイティブや、団結力を発揮するという人間らしい活動を引き出す難しさは感じますね。

オンラインのみで入社された方もいらっしゃいますか。

佐藤:いますね。面接は応募者を多面的に見るために頻度、回数、時間を重ねることで担保しましたが、オンボーディングは難しいですね。

信頼関係が醸成された上でのテレワークは効率が良いと思うのですが、そうした前提がない所でのオンラインは温度感もわかりづらいし、聞きづらいし、難しいのが現実です。新しくジョインした方に対し、オンラインだけでなじんでいただくことは、まだできてないかもしれません。

成功体験を捨て、新しい多様な働き方へ

現状は新しい働き方への挑戦だとおっしゃっていますね。どんな点をチェンジされてきたのでしょうか。

佐藤:過去の成功体験が一切役に立たないので、「前はこうやっていたから」という発言は NG にしています。小規模ながら業界の中で少しだけ先を行っている自負はあるのですが、「僕らのやり方が正しい」「昔はこうやってたんだからコロナが収まればまた戻ってくる」という発言をした時点で、ベンチャーとしてはアウトだなという話は皆で強く意識しています。

たとえば弊社はインサイドセールスが特徴だったのですが、これまでのようにマルケトでアポイントを取得するようなモデルは一切通用しません。そこで、メールでのナーチャリングの方法を考えるとか、ホワイトペーパーを増やすとか、リードタイムが長くなることを前提として、間にウェビナーを入れて全体のリードジェネレーションの形に変えるなど、すべて変えた感じですよね。

新しい働き方の元でマネージャーに求められる要件も変わってくるのでしょうか。

佐藤:相互選択という、お互いに選び選ばれの関係が広がっていくのではないかという期待感は持っています。生産性高く自分らしく働くために、従業員が働き方を選択する時代は明らかに訪れています。

ですから企業としては、多様な働き方とか多様な成果の出し方に対して柔軟に対応していくべきだし、個人はその中で生き残るために、どのように生きてどのように働きたいのかを考えるきっかけになると思います。苦しい時代ではありますが、双方がうまくかみ合えば、新しい形での働き方に脱皮するチャンスになるのでは、と感じています。

働き方が多様になると、制度面や評価のポイントも多様化すると思います。人事はどのようなスタンスでこの変化を捉えていくべきでしょうか。

佐藤:今まで以上に、コーポレートスタッフが重要なポジションになることは間違いないと思います。今回スイッチワーク制度を取り入れましたが、細切れに働くルールを作ることは簡単なんですね。でも本人が望めば、夜中でも土日でも働くのが正しい姿なのかと考えると疑問です。

テレワークでは成果を出せる人間だけが生き残るとか、労働時間も自由に選べばいいという論調があります。でもそれは乱暴だと思います。結局テレワークであろうとなかろうと、プロセスをしっかり見て人を育てていかなければいけないし、成果とプロセスのバランスを見ながら最適な状態に舵取りをしていくのが人事の役割です。だから人事制度も、少しずつアジャストするスピードを上げていかないと対応できないかもしれませんね。

堀尾:社員の納得度は大事ですね。結果もさることながら、プロセスを見れるような納得度もないと評価に対して反発あるでしょうね。だからマネージャーの機能は役割も含めて重要になっていると思います。

佐藤:オープン化や可視化は、よりキーポイントになってくるでしょうね。現場から、性善説と性悪説はどの程度の割合で判断すればよいですか、という相談を受けたことがありますが、答はありませんよね。すべて性善説でよいとも思わないし、性悪説に立って仕事はできません。基本にあるのは納得感とか信頼関係であり、リモートワークになって管理ではなく、本人の自主性に任せるというあるべき所に戻っている感じはあります。

次回の記事後半では、質疑応答の様子を掲載する。

佐藤 寛之(株式会社カオナビ 取締役副社長 COO)

上智大学法学部法律学科卒業後、株式会社リンクアンドモチベーションに入社。大手企業向け組織変革コンサルティング部門にて営業を担当する。シンプレクス株式会社にて人材開発グループ責任者を務めた後、株式会社カオナビに参画。事業の立ち上げを経て、現在は取締役副社長COOとして、営業・マーケティング・サポートなど事業戦略を統括。

堀尾 司 (株式会社All Personal 代表取締役CEO)

2017年6月(株)AllDeal創業。2018年11月、(株)All Personalに社名変更。現在、HRプロダクト開発をメイン事業としながら(株)ベクトルグループ、(株) PR TIMES、SMBCコンサルティング(株)等の人事顧問を務める。過去約200社のスタートアップや成長企業の支援実績。CHRO育成アカデミーCANTERA責任者。 Twitter: @horio_jp

清水 邑(株式会社ZENKIGEN コミュニティプロデューサー)

2018年株式会社ZENKIGEN入社。HRTech領域のカンファレンス「NEXT HR カンファレンス」を立ち上げ。

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