「採用の歩留まり」を改善するための11のポイント
人事担当者として働いていれば、採用の歩留まり率に悩みを感じることも多いのではないでしょうか。「想定していたよりも、面接設定から面接実施人数の歩留まりが悪い」、「応募数は多いけれど、採用予定人数に満たないから追加の採用活動をしなければ」など、人事の悩みは尽きません。そこで、採用の歩留まりを改善するための方法をまとめてご紹介します。まだ各歩留まりを明確にできていないようであれば、まずはそれぞれの歩留まり率を把握しどんな対策が立てられるのかを考えてみてください。
採用の歩留まりは、業界や会社によっても大きく異なります。他社と比べず、自社内の傾向をうまく把握し、事業計画に沿った人員採用計画を実現していきましょう。
目次
採用の歩留まり項目をご紹介
まずは採用の歩留まり項目としてどんなものがあるのか、採用フローを書き出してみましょう。新卒採用・中途採用など採用対象によっても採用フローが異なるため、下記を参考にして、それぞれの人数と歩留まり率を書き込んでみてください。採用管理システムに詳細を入力することで、歩留まりを把握できます。
・エントリー
・説明会(セミナー)予約
・説明会参加
・書類選考&筆記試験
・面接設定1
・一次面接
・面接設定2
・二次面接
・面接設定3
・三次(最終)面接
・内定出し
・内定承諾
・入社
(※新卒採用のフローが多いものを例に挙げています。中途の場合は筆記試験・説明会や三次面接を実施しないケースも。)
歩留まりの計算方法をご紹介すると、入社(採用数)をエントリー数で割る、採用全体の歩留まりを見る場合、あるいは一次面接人数を面接設定1の数で割るなど、項目ごとの歩留まりを見る場合とがあります。一般的にはエントリーから採用までの歩留まり率は、高い方が良いとされています。しかし、応募数が多い大手企業等の場合は書類選考&筆記試験から面接設定1の歩留まりは無視し、面接以降の歩留まりを気にするという場合も多いです。
なぜかというと、大手企業は多くの応募者の中から優秀な学生や候補者のみを厳選して通過させるためです。採用できていれば歩留まりとしては問題ないのですが、もし工数があまりにかかっているということであれば、書類選考や筆記試験のやり方自体を改善する方法も考えられます。例えば、書類選考や筆記試験で人数が大幅に少なくなったとします。これはつまり、今応募してくれている人たち自体が自社に合致していないという別の問題が存在しているわけです。このように各歩留まりを把握することで、自社がアプローチすべき人をどのように変更すべきか、適切な採用手法を再考しようなど、自社の採用活動を改善するきっかけにもなります。
低下しがちな歩留まりは何か?
では次に、低下しがちな歩留まりが何かをご紹介していきましょう。
(1)エントリーから説明会参加
採用フローの最初の方にある、エントリーから説明会参加は大きく歩留まりが下がることも多いです。母集団形成と呼ばれるこのフローでは、自社に興味を持ってもらえるチャンスを逃さないために歩留まりをできるだけ下げないことが重視されます。
現在の就職・転職サイトではエントリー数を上げる施策があるため、「とりあえずエントリー」という層も一定数います。しかしエントリーから説明会参加であまりに該当人数が少なくなってしまうようであれば、エントリー段階で見てもらう内容のブラッシュアップやエントリーからの時間を空けずに説明会を行うスケジューリングなどが必要になってくるでしょう。
(2)書類選考&筆記試験から一次面接
書類選考&筆記試験から一次面接は、大きく歩留まりが下がる場合も多いです。しかしこれは、あまり問題でない場合もあります。というのも応募者が多く、書類選考&筆記試験で足切りをする場合は大きく歩留まりが下がってしまうからです。
つまり、企業の人事担当者側の問題ではなく、入社してほしい学生を絞りこんだ結果であるため、問題視しなくても良いという結論になります。入社してほしい学生が採用予定人数から逆算して少なすぎるなどの問題が生じた場合は、そもそもアプローチ先や採用手法自体を見直す必要があるといえるでしょう。
(3)面接設定から面接
一次・二次などの段階を問わず、面接設定から面接の歩留まりは下がりやすい傾向を持っています。自宅や近隣で用事を済ませられるエントリー・書類選考・筆記試験などと違い、実際に来社してもらうというハードルが大きく歩留まりの低下に関係してきます。
また、面接設定から面接の段階に来ると、他企業からの内定という障壁も出てきます。他社で内定を承諾されてしまった場合それ以上追いかけることが難しくなり、該当者が一気に減る危険性も。採用競合などをよく把握し、採用スケジュールの見直しをすることも必要になってきます。
(4)内定出しから内定承諾
歩留まり率の低下で一番問題なのが、内定出し以降の歩留まりです。内定出しから内定承諾の歩留まり率が低下している場合は、採用競合に負けている可能性が高いです。ここで歩留まりが低下してしまうということは、2つの問題があると予想できます。1つは、自社に合致した人材だと勘違いして選考を通過させてしまっていること。もう1つはこれまでの採用選考過程で採用競合に比べて、自社に入社するメリットを感じてもらえていないことです。
1つ目の「自社に合致した人材だと勘違いしている」件については、求める人材像の共有不足・面接官の教育不足などが問題だと考えられます。早急に改善する手立てを考えるべき状況です。
2つ目の「自社に入社するメリットを感じてもらえていない」件については、採用ページ・説明会・面接など、採用候補者にアプローチできるシーンで動機形成ができていないということですから、すべての採用フローで伝えているメッセージ自体を見直すことが重要になってきます。
(5)内定承諾から入社
内定承諾から入社の歩留まりが悪い場合も同様です。採用候補者は「決めかねる」と判断しているわけですから、最終段階で心変わりをしてしまった原因を聞き出すことが重要です。
採用の歩留まり改善方法
では採用の歩留まりを改善していくために、何ができるのかをご紹介します。
<対採用候補者>
(1)採用フロー全体にかかる期間の短縮
歩留まりに大きな課題がある場合、意外と大切になってくるのが採用フロー全体にかかる期間の短縮です。あまりに長引くと他企業で決まってしまう可能性もありますので、新卒採用でも1カ月内、中途の場合は2~3週間に収めるようにしましょう。
(2)動機形成方法の見直し
採用フロー全体のなかで、どの段階にどこまでの動機形成を行えばOKか、そして何を伝えるべきかを決めていくことが重要です。それには過去に入社してくれた人へ、「何を決め手に入社したのか」、「それが実際入社してみてどうだったか」のヒアリングが重要になるでしょう。
(3)伝える内容のブラッシュアップ
入社メリット・できる仕事・仕事のやりがい・面白み・他社にはない魅力などはこれまでの採用活動で伝えている企業も多いでしょう。しかし、それが採用候補者に伝わっているのか、共感してもらえる仕立てになっているのかは確認すべきです。
(4)採用スケジュールの見直し
さまざまなことを伝えたとしても、自社よりも採用候補者が魅力に感じてしまう企業と同時期に採用をしてしまっては勝ち目がない場合もあります。自社にしかない魅力を磨くことを同時並行でやりつつ、他社よりもスケジュールを早めて「人」で動機づけするなど、具体的な手法を実施しなければ大きく改善することは難しいでしょう。
(5)アンケートやヒアリングの実施
説明会内容・内定辞退の時に率直な意見が聞けるよう、「今後の採用活動に活かすためにご協力ください」という風にアプローチしてみるのも良い方法でしょう。会社内にいる環境あるいは年齢の差がある場合などはどうしても外から見た視点や、学生・候補者の視点がわからない場合もあります。意見を聞くことで本当の課題が見えてくることもあるため、課題が不明確な時には実施を検討するのもおすすめです。
<対社内>
(1)求める人材像の共有
求める人材像は社内で共有していることがほとんどですが、解釈が異なる場合もあります。どこにいるどんな人という情報を社内の人を例に挙げて、「◯◯さんの◯◯な顧客対応能力」や「◯◯くんのこういうデータを読み取る分析能力」のように具体的にすることで、採用に関わる人が勘違いすることなく求める人材像を共有することができます。
また、人事以外の部署の場合、自分の部署には「今こういう人が欲しい」というバイアスがかかってしまう場合もあるので、採用目的と求める人材像が何年先を見据えたものかなどを伝えておくと良いでしょう。
(2)面接官の教育
面接で単に学生を「選定する」のではなく、学生に「選ばれる」企業になるためにどんなことを伝えなければならないのかを教育しておくことが大切です。今の採用環境が「売り手市場」で企業が「選ばれる」環境であること、時代背景と共に今の世代が何を重要視しているのかを理解してもらうなどが重要です。
古い考え方のままの面接官を据えるだけで、企業評価が著しく下がる可能性もありますので、そのあたりは人事がうまくハンドリングしていきましょう。
<技術面や外注での解決方法>
(1)動画面接・ライブ面接
インターネットに接続できる環境であれば、遠隔地でも面接ができる動画面接やライブ面接。動画やライブ面接が実施できるなら、これまでの「来社・移動時間」などのハードルを簡単にクリアできます。これだけで不安な場合は、動画・ライブ面接の後に対面を挟むことでハードルを下げられます。動機形成された状態であれば、歩留まりが大幅に下がることも考えにくいでしょう。
(2)自動返信機能
自動返信で明らかに自動返信と思えるような内容ではなく、パーソナライズされたような内容を使って返信することで、会社に対する興味醸成の可能性も上がります。
(3)LINEなどでの気軽な連絡
面接日程の調整などを就職・転職サイトやメールサービスで行うのではなく、LINEやチャットなどの採用候補者がいつも使っているアプリで行うというのも有効な手段です。既読になったかどうかも確認ができるため、読んだ上でスルーしている=興味がない=追いかける優先順位を下げるという判断も可能です。
(4)採用代行サービス
歩留まり率の改善、歩留まり把握のため、採用代行に採用業務をアウトソースするのもおすすめです。予約確認電話や面接日程調整など、対応の速さで大きく歩留まりが変わることも多いです。自社の社員が動けない状態の時にも迅速な対応ができるため、大きく歩留まりを改善できる可能性が高まるでしょう。
これらのことに取り組み歩留まりを把握した上で、翌年からはKPIを置いてどのように採用活動を改善すべきかを考えて実施すると、年を追うごとに歩留まりの改善、採用の充実が図れるでしょう。
まとめ
採用の歩留まりは、問題視すべき部分とそうでない部分があります。その会社の置かれた状況によって変わるため、採用フローとその結果得られた採用人数と質の関連性をよく理解して進めることが重要です。それが分かって初めて自社の課題がどこにあるのかを見つけ、歩留まりの改善に取り組むことができます。ぜひ今回ご紹介したことを参考に、自社の採用活動を改善してみてください。