これから始めるオンライン採用「知らないとハマる意外な落とし穴5選」
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、各社が「採用のオンライン化」を迫られました。そして同時に「オンライン採用の課題」が見えた年でもあります。
皆様がこの1年で抱えたオンライン採用のお悩みを解決するため、ZENKIGEN(ゼンキゲン)は「オンライン採用の課題解決」というテーマで、就活メディア『ワンキャリア』を運営する株式会社ワンキャリア様と2020年11月12日(木)に合同ウェビナーを開催しました。
本イベントでは、同社でコンサルティングセールス部門マネージャーを務める亀澤さんとZENKIGEN セールスチームの責任者である清水が、「知らないとハマる意外な落とし穴5選」というテーマで実例を出し合いながらセッションを行いました。
目次
コロナの不安感から「学生が何となくエントリーする」時代へ
清水:はじめに「エントリーバブルへの対策」についてですが、亀澤さんはどう捉えていますか?
亀澤さん:「何となくエントリーする候補者」を増やしたエントリーバブルは、オンライン化が生んだ一番厄介な問題だと思います。ワンキャリア上で10月時点の21卒と22卒のエントリー数を比較すると、全体で約3.92倍になっています。1学生当たりのエントリー数の平均で見ると、21卒は2.7件だったのに対し、22卒だと5.7件まで増えました。
清水:この背景には何があるのでしょう?
亀澤さん:新型コロナウイルス感染拡大による不安感です。これだけ悪いニュースが続くと学生の危機意識は高まり、早期段階から採用をはじめる学生も少なくありません。ここでお伝えしたいのが、「今年は母集団が順調と思っていたら危険」ということです。オンラインになったことでエントリーのハードル自体は大きく下がりました。
清水:手軽に応募もしやすいですよね。
亀澤さん:大規模なオンラインイベントに参加している学生だと、10~20社もしくはそれ以上の企業に一括エントリーしているケースもあります。ここで伝えたいのは、エントリー数と学生の志望度は反比例していることです。
清水:今回視聴されている多くの方が、これから22卒採用に臨まれると思います。亀澤さんが思う「企業が直面するかもしれない課題」は何でしょう?
亀澤さん:たくさん入る、志望度が少し薄い候補者のエントリーに対して、どのようにアトラクトしていくのか、が課題となってきます。
清水:きちんとマーケット状況を認識しておかないと、最終面接で自社の志望度が高くない応募者の比率が高かったり、内定を辞退されたりと、採用の落とし穴に陥ってしまう可能性がある訳ですね。
亀澤さん:はい。ここは、企業と学生の心理状況が乖離している点です。人事の皆さんは、エントリー数や学生との接点から上手に接触できている印象を抱いています。一方学生と面談していると、まだ就活を始めたばかりでスキルが伴わない方だと、例年以上に落ちている傾向にあります。そのため「企業の方と全然会えてない」と焦る学生も少なくありません。いわゆる上位校と言われる学生も、同じ不安感を抱えています。
見られる録画説明会には「目次」が付いている
清水:次は「しっかりと説明したのに口コミが1点?」についてお話していけたらと思います。個人的にも興味がある部分です。
亀澤さん:ここでは、ワンキャリアに寄せられた残念な口コミから「説明会編」、「インターン編」、「面接編」に分けてご紹介します。最初は説明会編です。「人事の方が積極的に進行してくださった印象。しかし内容はホームページを読めば分かることが多く、肝心の事業内容の詳細は聞くことができなかった」、「なかなか質問を拾ってくれず、自分たちに都合の良い質問しか答えてなかった」など寄せられました。
清水:学生視点の的確なコメントですね。
亀澤さん:はい。例えば、事業内容はホームページなどから情報が集められると思います。一方、社風や人柄はオンラインでは分からないという声が多いです。できるだけコミュニケーションを目的とする場合はオフラインで説明会を開催し、それ以外は録画で進めたほうが良いと思います。
清水:目的に合わせたコンテンツの準備が必要ということですね。録画説明会の場合、特に気をつけてほしい点はありますか?
亀澤さん:「目次(アジェンダ)を付けること」です。チャプターと呼ばれる映像の区切りを入れ、その内容に会社説明、職種採用情報、インターンシップのように目次を付けると、いつでも好きなところから見られます。基本的に動画は最初から最後まで見られることはありません。YouTubeでも平均視聴時間は11分です。ただ学生は1時間の動画でも、自分の知りたいところはしっかり聞きたいと考えています。面接前に要点を録画から見返したい学生も多いため、この配慮は親切だと思います。
「複数の現場社員をアサイン」、「インターン時間は短く、日数は長め」――オンライン時代の人事に求められるスキル
清水:では、インターン編に寄せられた口コミを教えてください。
亀澤さん:「長時間のオンラインワークが、体力的、精神的にきつかった」、「ワーク担当の社員からのフォローは手厚かったが、オンラインのため会社の雰囲気が分からないまま終わった」などがありました。
清水:インターンに関する口コミのポイントはなんでしょう?
亀澤さん:「インターンの設計」と「社員のアサイン」です。インターンの設計で多い相談は、タイムスケジュールの組み方です。オフラインからオンラインの移行に悩まれる企業が少なくありません。
清水:実際にインターン設計が上手にできている企業はどのようなスケジュールで進めていますか?
亀澤さん:学生満足度が高い企業のオンラインインターンは、「実施時間は短く、開催期間は長め」でした。インターンの1日当たりの時間を例年よりも短時間にし、その分、実施日数を1日程度長く設定していました。1日当たりの時間が短いのは、カメラがずっとつながっている状況への精神的な気遣いです。学生からすると、終始見られている感覚での選考となるため、精神的なプレッシャーは相当大きくなります。トータル日数を増加したのは、オンラインワークだと主にテキストコミュニケーションで話を進めるため、相手の雰囲気などが見えないオフラインよりも合意形成に時間が取られてしまうからです。そのため、丸1日がっつりインターンをするよりも、半日のワークを2日に分けてあげたほうが親切でしょう。
清水:学生の気力と体力を慮った設計が求められるわけですね。「社員のアサイン」についてはいかがでしょう?
亀澤さん:ワーク担当の社員がどれだけ魅力的でも、その人しか見られなければ学生はつまらないと感じてしまいます。例えば若手とベテランという組み合わせで参加してもらったり、部署の違う現場社員にそれぞれ参加してもらったり、中途と新卒の組み合わせで出てもらったりなどの工夫が求められます。
清水:説明会でも同じようなことが言えますね。
亀澤さん:はい。ぜひ現場社員をアサインしてください。OG・OB訪問ができない代わりに、社風や人柄を感じたくて、オンラインのイベントに参加する学生が増えています。人事の皆様は、冒頭で会社説明をしたら、後はファシリテーターに徹するぐらいがちょうど良いと思います。現場の方をアサインするのは、必要なスキルかつ学生の満足度を上げるポイントです。
清水:社員側のメンバー選定も、役割を明確化して選定していくことが大事ですね。
亀澤さん:あと意外と学生から見られているのが、ノンバーバルコミュニケーションの違和感です。「フラットな社風と言いながらも、先輩の顔色を気にしながら受け答えをしている」という口コミもありました。相性の良いメンバーを組み合わせるのがポイントです。
事前の準備や機材で差が生じる「WEB面接」
亀澤さん:最後の面接体験談では、「面接官3名を1台のカメラで映していて、マイクが遠かったためか、質問がよく聞こえずスムーズに進められなかった」、「リアクションが薄くて、話を聞いてもらえているか分からなかった」などが挙がりました。これらは、面接満足度が低い企業に共通して挙がるポイントだと思います。
清水:オンライン面接は企業側も事前準備が大事です。特に最近はテレワークのために、面接官も在宅のケースが多くなっています。オフィスでは問題がなかったWEB面接も、在宅環境では通信が安定せずトラブルが発生するケースは少なくありません。中にはこれらの状況に敏感に反応する学生もいると思います。そのため、人事の皆様による事前確認は必須です。学生目線で事前準備を行い、双方慣れてないオンライン選考をリードする形で進めていただくのが良いと思います。
採用体験が「学生の選考意欲」を高める
清水:次のテーマ「学生の体験を高めるべき理由」についてですが、亀澤さんはどう思いますか?
亀澤さん:採用において、学生に良い体験をしてもらうことが企業価値につながると思います。これは綺麗ごとではなく、オンラインでリアクションが見えないからこそ、強くこだわりを持った方が良い点です。
例えばワンキャリアの説明会の満足度で言うと、説明会の満足度が10点満点中8.8ポイントだった回と9.9ポイントだった回がありました。満足度が1ポイント上がるだけで、次の選考に進みたいと希望する人の割合が45%から90%までに上がったのです。たった1ポイントの満足度アップが、当年度の選考への影響はもちろん、翌年度の口コミにもつながります。
清水:満足度の上昇がそこまで選考に影響を与えるのですか。驚きました。ただ一方で、何が学生の満足度向上につながるか悩んでいる企業も少なくないと思います。
亀澤さん:そうした皆様の声にお答えして、今まで学生にしか公開していなかった学生の体験談を、人事の皆様にも公開するサービスをリリースしております。
各社の企業情報やインターン詳細などが調べられます。自社とよく比較される企業をレコメンドして、ベンチマークにすることも可能です。年内には、自社が学生からどのように思われているかをレポートとして見られる機能も実装予定です。
清水:なかなか知ることのできない学生の本音が分かる、非常に優良なサービスですね。
亀澤さん:大半の学生が、企業アンケートには絶対に良いことしか書きません。そのため自分たちが得るデータではなくて、客観的なデータを把握することが体験を考える上では重要でしょう。
オンラインの人材見極めはデータが生きる
清水:ありがとうございます。次のテーマは、 ZENKIGENでもよくご質問をいただく「オンラインでの見極め」についてです。亀澤さんの方も、ご相談は多いですか?
亀澤さん:本来受かるはずの学生を落としてしまっているのではないかという不安感を抱えながら、オンライン面接を行なっているという話はよく聞きます。
清水:当社が9月に実施したアンケートでは、オンライン選考の難しさとして、「見極め」がトップでした。一方、現場の担当者様からは、「意外とオンラインでもできた」という声もいただきます。
清水:リアルとオンラインで一番の違いはノンバーバル、つまり非言語情報が一部限定される点です。例えばリアルだと、候補者の持つ雰囲気や印象から総合的な判断をしていたと思います。ただオンラインでは、その材料が限定されるため、見極めづらさを感じる可能性はあると思います。
亀澤さん:では、オンラインで候補者を見極めたいとき、企業は何を意識したら良いのでしょう?
清水:データです。例えば、当社のWEB面接サービスである「harutaka」は、ライブ面接の様子をリアルタイムで動画に収めます。どういう目線で候補者を見極めていくかを考えるとき、面接の録画データを用いることで精度は上がります。
選考に参加していなかった選考感も含め複数人で動画を確認したり、選考の情報共有にテキストだけではなく動画を用いることで引き継ぎの精度を上げたりすることも可能です。
リアルだとブラックボックスになりがちな面接官スキルの可視化にもつながります。面接の場をオープンにして、面接力を鍛えるためのPDCAを回すことも可能です。
亀澤さん:ありがとうございます。オンラインでの見極めに関連して、参加者の方から「録画での見極め」について質問がありました。「一般的に録画選考は、何度も撮り直しできるのでしょうか?『その場限りのパフォーマンスを見るオフライン面接』、『撮り直しができる録画面接』だと、どちらが正確に学生の実力を見極められるかは、一概に言えない気がします」。清水さん、いかがでしょう。
清水:harutakaを用いた録画選考に関しては、「撮り直しは不可」、「何度でも撮り直しが可能」と設計できるようになっています。ただ当社のお客様の場合は、「撮り直し可能」の企業が圧倒的に多いです。
亀澤さん:それはなぜでしょう?
清水:一発撮りになると、学生側のハードルが非常に上がるからです。当社としても「撮り直しを推奨」しています。例えば間違えて撮影ボタンを押すと、もう撮り直しはできません。この辺りを上手に組み合わせている大手IT企業様では、録画選考において語学チェックの設問だけは一発撮りです。それ以外のパーソナリティーを見極めたい部分は、自己ベストを投稿してほしいという想いから撮り直しを認めています。
オンライン採用の勝敗を分けるのは「AIテクノロジー」
清水:話も終盤に入ってきました。ラストのテーマは「オンライン化のここが危ない!?」です。私が一番良くないと思うのは、「企業側の準備不足」です。応募者は重要な面接に向けて事前準備をしたにも関わらず、面接官の通信環境が不安定でコミュニケーションが取りづらかったり、話をしているのに途中で面接官が会話をかぶせてしまったりするのは、選考の体験価値に影響する部分だと思います。
亀澤さん:実際に清水さんが関わられた中で、オンライン選考の難しさを上手に乗り越えた事例を教えてください。
清水:最近の事例として、大手商社様のケースをご紹介します。同社には21卒採用の本選考でharutakaによるWEB面接を導入いただきました。6月1日の面接解禁に合わせ、3日間で千数百件の選考を全てオンラインで実施できるよう、ZENKIGENも関与させて頂きながら急ピッチで準備をしました。
ただ大変過酷なスケジュールのため、本番で一つでもミスが出ると、雪ダルマ式に失敗する可能性も危惧されていたのです。同社はこうしたミスを防ぐため、事前の接続チェックをはじめ、面接官と応募者のフォローを徹底的に心がけました。
亀澤さん:シンプルですが、事前の接続チェックが手厚いというのは、学生の満足度は上がりますよね。ワンキャリアの口コミにも寄せられています。
清水:意外と「事前の接続チェック」を徹底できていない企業は少なくありません。その他にも、万が一harutakaがつながらなかったときのために、リカバリープランをご提案させていただきました。具体的には、音声通話が上手にいかない場合、60秒内にチャットを通じてSkypeの面接に切り替えるというプロセスです。これらの対策もあり、全ての面接をオンラインで滞りなく実施できました。企業運営という観点でも、オンラインの難しさを乗り越えている好事例です。
亀澤さん:貴重な事例でもあり、それだけ大規模な環境でも準備さえしていればオンラインは可能を体現するエピソードでもありますね。
清水:はい、そうです。最後に亀澤さんから、「オンライン採用の勝敗を分けるポイント」についてアドバイスをお願いします。
亀澤さん:まずスタートは、「学生にこの選考を通して良い体験をしてもらうこと」です。オンラインでは全ての接点がアトラクトポイントになります。説明会、インターン、面接でいかに良い体験を学生にしてもらうかというスタンスで、採用戦略を設計してください。
ただ、良い体験をしてもらいたいというスタンスだけでは、良い体験にはつながりません。手法については、もっと客観的にデータから調べていくべきだと思います。他社が学生に提供するコンテンツをリサーチし、その上で自社の魅力が伝わるようなコンテンツを練ることが求められるからです。
清水:私からも別視点で補足があります。リアルからオンラインに切り替わったことで、移動費や会場費が減ったというお話をよく伺います。そしてこの分をテクノロジーに投資する動きが少しずつ出てきました。
オンライン選考が当たり前になる中で、データを価値化する、オンラインデータxテクノロジーという方法が注目を浴びています。特にAIは注目ワードです。テクノロジーを取り入れた新しい選考手法から戦略面を練り直すことが、今後市場全体で少しずつ進んでくると思います。