人とAIが調和する採用DX最前線。ZENKIGENが考えるこれからの採用【イベントレポート】
2020年を振り返ると、急激に採用のDX化が進んだ1年でした。これも新型コロナウイルスが感染拡大する中、各社がWEB面接による選考を導入し、採用を止めないための行動を実践したからです。
まさに「採用オンライン化の元年」といっても過言ではありません。
では、採用のDX化が進むことで、今後どのように就活が変わっていくのでしょうか。
そのポイントを、12/15(火)~12/16(水)に開催された合同会社DMM.com主催のオンライン展示会「業務支援サミット2020」でZENKIGENのデータサイエンティストである小荷田が説明しました。
「人とAIが調和する採用DX最前線」というテーマから、採用DXについて解説し、ZENKIGENが考える採用のこれからを紐解いていきます。
※なお本レポートでは、前半に行われた企業説明、後半に実施された質疑応答をまとめています。
目次
採用活動をAIと人が一緒に創っていく時代へ
本日はよろしくお願いします。自社紹介も兼ねて、ZENKIGENのサービスについて教えてください。
小荷田:私たちは採用全体のDX化を目指し、WEB面接サービスharutakaをはじめ、人工知能(AI)の活用から採用を支援する企業です。面接やエントリーがオンライン化するその先を見据え、生産性向上ではなく、人とAIが調和する未来の創造を実現します。
ここからは、AIを活用したサービスについて、いくつかご紹介します。まず、「エントリーファインダー」というサービスは、自己PR動画内の表情やジェスチャーをAIが解析し、候補者の印象を評価します。
これまでは、実際に会うまで外交性や態度が良好な候補者かどうか分かりませんでした。また、能力の評価もエントリーシート(ES)やSPIなどのテストから測定されています。しかし、本サービスを用いれば、動画の中から意識していることを読み取り、判断することができます。
解析はまず、特徴ごとに情報を分解します。
特徴ごとの評価を入れることで、これまで無意識に行われていた採用判断に解釈性を持たせられるようになりました。
「自己PR動画の評価から合否推奨までを一気に行う方が効率的では?」と考える方もいると思います。ただ、それではどの要素が要因で候補者が合格したかが分からないため、エントリーファインダーでは印象の解析に重点をおいています。
選考にエントリーファインダーを加えることで、書類選考と面接で印象が違う候補者を招きがちな企業も、自社に合う人材に声をかけやすくなると考えます。
候補者に寄り添ったオンライン面接の実現に向けて
小荷田:続いて、現在開発中の面接解析AIについてご説明します。アナログな時代はデータが残らず、面接がブラックボックスになりがちです。この状況にテクノロジーで対応するシステムを開発中です。
企業によっては、採用情報として30〜60分、長いと90分の面接動画を撮りためていると思います。ただ、視聴する時間が無かったり、そもそもどのポイントで確認したら良いか分からないケースが少なくありません。
当サービスは、ライブ面接のデータから非言語情報を中心に、分析エンジンで信頼と尊敬を計測します。非言語情報というのは、体の動きや目線などノンバーバルな内容を指し、ライブ面接では見落とされやすいと言われています。
その状況をサポートするのが本サービスの目的です。映像から得られる約300の特徴を分析し、面接官と人事にその結果をフィードバックします。
実際に良い面接を分析すると、「この人なら話したいと思える」、「候補者と面接官の間で信頼関係が築けている」という結果が見えます。本サービスを通し、視覚的に候補者体験が高まる様子を知ることが可能です。
この開発中のAIは、候補者の内定承諾率を上げるためではなく、適切な面接を実施するためのサービスです。面接官が学生の良さを引き出すことを助け、より良い体験を与えることが可能となります。
今後は職場における上司と部下の1on1など、いろいろなところで活用できるサービスだと考えます。
未来の採用は人間ができない点をAIが補完する
このAIを試験的に活用したサービスの一つに、これから面接受ける学生と実施する面接官をつなぐ「メンココ」というオンライン面接トレーニングがあります。
皆さんの練習場として公開しているのはもちろん、終了後には学生と面接官の双方にフィードバックレポートが送られます。サービスに参加した企業の中には、自社の採用基準を見直した会社もあり、面接の見直しにつながりました。
また面接官の中には座学だけでは不安と感じる人も少なくありません。本サービスは、そうした人の支えにもなれたと思います。
面接官の腕次第では、候補者の能力を引き出せなかったり、誤った印象を与えてしまったりします。特に会社の印象は面接官の印象で決まります。面接官の態度がクチコミとして広まる時代のため、各社が候補者体験に力を入れているぐらいです。
ただ、「実際に自分の面接を見たことのある人はほとんどいない」と思います。また、面接を教えてもらったり、フィードバックをもらったりした経験がある人も少ないのではないでしょうか。
多くの人が自分なりに面接に取り組む中で、人間ができない点をAIが補完できたらと思います。それは面接の質を上げる方が、候補者と面接官それぞれにとって良い体験になるからです。
ここからは参加者より届いた質問をいくつかご紹介します。
Q1.有望な学生に優秀な面接官を充てることはできますか?
小荷田:現在、実施できないか検討しています。現状、職場の中でハイパフォーマンスを出している新人と面接の時の評価を紐づける仕組みがありません。
面接の評価、そしてハイパフォーマーだったという内容をデータから解析していきたいです。またこの新人を採用した社員は誰なのかが、次のフェーズで必要になる情報だとも思います。
逆に、組織マッチしなかった候補者を、採用の軸や配属適正などから判断できるようにデータを取りたいです。それにより、優秀な面接官を探し出し、有望な学生に充てることが可能になると考えます。
Q2.AIが浸透してきている昨今ですが、まだまだAIそのものに抵抗がある方も少なからずいらっしゃると思います。その点の解決策はありますか?
小荷田:よりAI自体の理解を広め、AIによる採用を「開かれたもの」にすることだと考えています。構想段階ですが、エントリーファインダーの判断内容については、候補者に可能な範囲、オープンにしていきたいです。
もちろん全てをオープンにすることは難しいですが、「この動画を投稿するのはちょっとまずいのでは」ということをアナウンスする撮り直しサポートなど、品質が高い動画にできるよう候補者をサポートしていきたいです。
また、動画判断が難しくないものについてはAIならすぐにコメントを返せます。自身の特徴を生かせるよう「〇〇な企業に応募してみたら」などアドバイスも含め伝えられたらとも考えます。
Q3.AIの判断をそのまま採用することが怖いという人も一定数いると思います。その辺りはどのように考えますか。
小荷田:例えば某大手通信キャリア企業様では、ESの合格判定はAIが実施します。しかし、不合格となった候補者のESは、再度人間が確認します。
このように、当社はAIができることと、人間ができることをしっかり切り分けています。
特に人の場合、確認順番やその日の体調に、結果が左右されてしまうことが少なくありませんが、AIにはそれがありません。AIがある程度までスクリーニングすることで、採用の品質向上につながると思います。
Q4.社内のDX化を進めるにおいて、どのように説得したら良いでしょうか。
小荷田:少し回答に悩みますが、私は「小さくテスト的に実施するのが良い」と思います。成果が出た段階で、活用範囲を広げていきます。
例えば、ある企業ではいきなり本選考に導入することで反発を受ける可能性を考慮し、インターンやアルバイト採用での導入からスタートしました。
DXというと、すごく大きなシステムを入れて変革するというイメージがあると思います。ただ、自社に合わないものは入れられません。DXが目的になったら会社としてアウトです。
小さなところから試し、自社にマッチするAIやサービスを導入するのが良いと思います。
Q5.対面面接からオンライン面接に切り替える注意点を教えてください。
小荷田:2つあります。1つは事前準備です。接続トラブルの問題で、リスケなどが生じる可能性があるため、事前にネット環境を確認しておく必要があります。また採用に特化していない汎用ツールだと候補者の環境も分かりません。
そのため、候補者の接続状況などが、事前に分かるサービスを使うのが良いと思います。候補者状態を可視化することが、オンライン面接のファーストステップです。
2つ目は利用規約の開示です。オンライン面接では、候補者情報などさまざまなデータが残るため、利用規約は候補者に開示した方が良いと思います。いきなり「分析します」と言われたら、候補者としては怖いです。録画する、しないにしてもどのように活用していくかを明らかにすることをおすすめします。
会場からの質問は以上です。最後に小荷田さんから何かお伝えしたいことはありますか。
小荷田:では、最後にZENKIGENの技術アセットについて簡単にご説明をさせてください。当社では、現在までにデータが数十万件蓄積しており、東京大学や慶應大学とも感情やコミュニケーションに関する共同研究を実施しています。
多元的な人間理解と高度なコミュニケーション解析向けて、社内にはラボという研究組織も立ち上がりました。
感情工学や生理心理学、機械学習、UIUXデザイナーなど、多方面のプロフェッショナルが参画し、引き続きAIプロダクトをリリースしていきます。
ありがとうございました。