タナケン先生が5,000人の学生にヒアリングしてわかった「イケてない会社」とは
新卒採用トレンド大公開セミナー〜就活ルール廃止後の採用戦略はこう変わる〜
2018年12月6日、WEB面接・動画面接プラットフォーム『harutaka(ハルタカ)』を運営する株式会社ZENKIGEN(代表取締役 野澤比日樹)は、「『就活ルール廃止』を機に、新卒採用は大きく変わる」をテーマに、「第三回 NXET HRカンファレンス」を開催いたしました。
ZENKIGENの手がける地方学生の就活応援プロジェクト『上京しなくてもいい就活』の企業向け活動の一環でもある本イベント。ゲストスピーカー3名をお招きし、企業人事・大学・学生という3つの視点から、これからの新卒採用戦略の方向性についてお話しいただきました。
会場(大手町ビル6階 Inspired. Lab)には、新卒採用に携わられている人事の方を中心に100名ほどの方々がご来場。当日行われたセッションの様子を、レポート形式でご紹介いたします。
- 第1回:株式会社IDOMの就活ルールに左右されない“新卒採用の独自戦略”
- 第2回:タナケン先生が5,000人の学生にヒアリングしてわかった「イケてない会社」とは
- 第3回:出谷氏が語る「日本最大キャリアコミュニティから見た地方採用のポテンシャルと攻略法」
- 第4回:株式会社ZENKIGEN代表 野澤比日樹の語る「就活における不公平」
次世代を育てるために、今、大学と企業がすべきこと
新卒採用において鍵を握るのは「インターンシップ」。5000人の学生が感じた「イケてない会社」とは?
10年間で9大学5000人以上の学生を教えてきたという田中氏。本セッションでは、数多くの学生や企業人事への様々なヒアリングに基づいたデータを紹介してくれた。
まず、平成の新卒採用において顕著だったのが、インターンシップ実施校の急増だという。ただし、実際に行われているインターンシップは「1日型」が主流となっている。
「統計からすると、おそらく3割ほどの企業様が1dayインターンシップを開催されているはずです。先ほどお話されていたIDOMの越智さんが仕掛けているような、参加学生の成長にコミットするような素晴らしいインターンシップは少ないというのが現状ではないでしょうか。『IGNITION』のようなプログラムがひとつのモデルケースだと思っていますが、いかにファンを増やすかですね。1dayを開催している場合ではありません。長ければ良いというものでもありませんが、目的・規模に合わせた期間・負荷のカスタマイズが大事だと私は考えています」
1dayインターンシップのような形式的な採用戦略は今の学生たちにはなかなか響かない。他にも、田中氏がヒアリングした5000人の学生が感じた「イケてない会社」とはどのような会社か、5つ紹介してくれた。
1. 会社説明会で、長々と会社の『説明』をしている会社
2. 入社前の選考プロセスなのに、やたら「裸」チェックする会社
3. 人事は「裏方」だと思っている会社
4. 学生のスケジュールをマウンティング人事
5. 身柄拘束面接
デジタルネイティブ世代は、長い説明を黙って聞いていると7分ほどで「考える」のをやめる、データに対してセンシティブなため過剰な適性検査を好まない、と田中氏は語る。また、新卒採用担当者は常に表に立つべきだという。これだけ「ソーシャル」な時代にFacebookやTwitterやInstagramを使いこなさない「黒子」上司は、学生たちにとってあまり魅力的ではないようだ。
4の「マウンティング人事」に関しては、すぐにでもやめたほうがいい、と田中氏は語る。
「我々の世代とは違って、今は文科省が厳しく、学生は卒業に必要な単位の取得に非常に時間を費やします。一方で、選考を受けても企業側から何週間も連絡がなく、突然届くメールで日時を指定されてしまうわけです。候補日時を複数提示してあげるなどして対等の関係を生むだけでも評価は全く変わってくるのではないでしょうか」
そして、5つ目の身柄拘束面接。北海道から九州まで、地方在住の学生を本社のある東京に呼びつけている企業は多い、と田中氏。学生からすると例えば時給1000円のアルバイトでコツコツとお金を貯めて、夜行バスで東京に向かったとしても数万円はかかってしまう。この地方学生の格差という課題に対してZENKIGENの『harutaka(ハルタカ)』のようなソリューションは非常に有効、と田中氏は語る。
「本当に今の学生は『会社に就職する』というより『人についていく』という感覚が強い。これは確信を持って言えることです。だからこそ、新卒採用の人事の方は割り切って表に出た方が良いですし、入り口となる会社説明会のやり方からいろいろと工夫を凝らしていくべきだと思います」
次世代を育てるために企業と大学が今すべきこと。
では、企業は具体的に何をすべきか。まずHRテックは可能な限り導入を勧める、と田中氏は語る。採用工数を少しでも削減することで、企業人事と学生双方の負担を減らすことができる。また、様々なメディアが乱立するなか、多くの学生が企業のオウンドメディアに注目しているため、オウンドメディアの運営も有効だという。
「例えばIDOMの『IGNITION』の特設サイトにも、実際に参加した学生たちの感想が記載されています。学生たちはこういったストーリーを残してくれることが嬉しいんです」
一方で、次世代を育てるために大学側にもできることがある、と田中氏。
「IDOMの越智さんのお話にあった『リーダーシップ』にも通ずることかもしれませんが、私はよく『授業を聞くな、授業を作れ』と言っています。飲み会でもなんでもとにかく『企画する側』に回ってもらう訓練はしています。また、先ほども申し上げた通り、これからは『インターンシップ2.0』だと思っていて、私自身も企業様とコラボしていくつかインターンシップのディレクションに携わっているところです」
他に、社会人招聘なども積極的に行っているという田中氏。企業が学生たちに早い段階でタッチして「社会のリアル」を伝える機会を生み出している。
「まだまだ大学側でお手伝いできることはたくさんあると思いますので、今後も連携していきたいと考えています」
「就活ルール廃止」後の新卒採用は、「ターム&プール採用」モデルが有効。
新卒採用活動の日程を定めた「採用選考に関する指針」を2021年春入社の新卒学生から廃止するという、いわゆる経団連の「就活ルール廃止」の発表が波紋を広げている。これを受けて、田中氏は新卒一括採用とも通年採用とも異なる「ターム&プール採用」を提案している。
ターム採用は、大学3年の夏から卒業までを、ターム1(大学3年の8月9月・キャリア新卒採用)、ターム2(大学3年の2月3月・新卒採用前期)、ターム3(大学4年の8月9月・新卒採用中期)、ターム4(大学4年の 2月3月・新卒採用後期)と4つのタームに分けて明確にボリュームをかける戦略だ。
タームを設定することで、大学生の学業を脅かすことも、通年で人事担当者を疲弊させることもなくなる、と田中氏は語る。
「各タームは大学生が休みの時期です。このターム採用でしっかりとストーリーを作って、例えばオウンドメディアで『学業の時間を奪わない、選考で負担をかけない、適正なタッチングで採用を進める』というようなことを打ち出せば、今の学生から支持されるはずです」
また、卒業後のプール採用については、数年前に経済同友会が提唱した「新卒・既卒ワンプール/通年採用」を踏襲。ターム制で内定が取れなかった学生や、長期インターンや海外留学をしていた学生もエントリーすることができる柔軟な採用となっている。
「母数としては少ないものの、新卒採用で抜け落ちてしまいがちな優秀層を獲得できる可能性は高まるはずです。実際に、大手企業でも実質このような採用活動を実施して成功している事例があります」
この「ターム」と「プール」のハイブリッド型の新卒採用モデルに戦略チェンジすることで、人事はもっと豊かになり、大学と企業がより健全な関係性を築くことができ、学生にとっても就職活動がより良いものになる、と田中氏は強調する。
「ポスト平成の新卒採用戦略を提案しているとはいえ、企業様が実際に実行していくのは難しい部分もあると思います。まずはZENKIGENの『harutaka(ハルタカ)』を活用するのでも、IDOMの越智さんのモデルケースを導入するのでも良いと思います。私もできる範囲でご協力したいと考えております」