「企業変革をする覚悟で」サイバーエージェントの曽山氏が語る動画採用戦略
2018年7月31日、動画面接プラットフォーム『harutaka(ハルタカ)』を運営する株式会社ZENKIGEN(東京都千代田区、代表取締役 野澤比日樹)は、各業界のHR分野に精通した著名な方々をお招きし、初の主催となるイベント「NEXT HRカンファレンス」を開催いたしました。
テーマは、「テクノロジーを駆使した採用革命」。ご登壇いただいた3社(ソフトバンク株式会社、株式会社USEN-NEXT HOLDINGS、株式会社サイバーエージェント)は、採用活動において積極的にHRテクノロジーをご活用されています。その事例も交えて、各社の人材採用における先進的な取り組みについてお話しいただきました。また、採用管理システム『SONAR(ソナー)』を展開するイグナイトアイ株式会社に、『harutaka(ハルタカ)』との連携事例もご紹介いただきました。
会場(住友不動産麹町ビル)には、280名を超えるHR領域でご活躍の方々がご来場。和やかな雰囲気でイベントはスタートしました。当日行われたセッションの様子をレポート形式でご紹介いたします。
- 第1回:「攻めの採用活動」ソフトバンクの源田氏が語るこれからの採用
- 第2回:USEN-NEXT GROUPの住谷猛氏が語るHR革命『超!全力採用』
- 第3回:「企業変革をする覚悟で」サイバーエージェントの曽山氏が語る動画採用戦略
- 第4回:気鋭IT企業のテクノロジーを駆使した採用革命
サイバーエージェントの動画採用戦略
動画を活用した情報発信が採用力の向上につながる
サイバーエージェントは新卒採用を会社設立1年目から実施しており、現在はグループで毎年300名ほどの新卒が入社している。
「『harutaka(ハルタカ)』などを活用した動画面接が有用である一方で、動画による “情報発信”も非常に大事」と語る曽山氏。いくつかの事例を紹介してくれた。
まずはオンライン会社説明会『サイブラリー』。サイバーエージェントでは、会社説明会を基本的に廃止し、すべてをオンラインに切り替えたという。『サイブラリー』というWEBページを立ち上げ、社員一人ひとりによる会社説明動画を閲覧できるようにした。職種や事業で並べ替えができる仕組みになっており、例えば「女性社員」や「エンジニア」といった括りで動画を絞ることも可能。サイバーエージェントの価値観を人事部長として説明する曽山氏自身の動画もあり、多様な切り口で会社説明を見ることができるという。
「リアルの会社説明会は、テーブルや椅子の設置から書類配布等の会場設営から、実際のイベント、アンケート回収、撤収に至るまで、3時間くらいはかかります。これをサイバーエージェントでは年間50回ほど実施していました。オンラインに切り替えたことで、大幅な時間の削減ができたと考えています」
ちなみに、この『サイブラリー』の前身となった取り組みが、自社で展開する映像配信プラットフォーム『FRESH!』で放送されていた『就活チャンネル』という生放送番組(2016年開始)だ。曽山氏と人事スタッフ、事業責任者などが出演し、会社説明やコメントでの質問受付を行い、就活情報を発信。大きな反響を呼んだ。
「実は我々は”ネーミング”にも非常にこだわっております。『サイブラリー』もサイバーエージェントとライブラリーを掛けているのですが、ネーミングの際には、学生の間でどういうネーミングなら流行るのかという視点を重要視しておりました。実際に最終面接で『サイブラリーを見てきました!』とアピールしてくれる学生さんもいますし、”ネーミング”はとても大事だと感じています」
他に、同社ではIRでも経営陣と社員のインタビュー動画、決算発表の動画を掲載しているという。こちらにも学生からの注目が集まっており、採用活動における動画を活用した情報発信の重要性を、曽山氏はあらためて強調した。
様々なエントリープランを用意し、独自の採用イベントを多数開催
様々な募集形態からエントリー方法を選択できる『マルチエントリー採用』を行っているのも同社の特徴。年間40種類以上のインターン、イベントを開催しており、挑戦したいエントリープランを複数選び応募することができるという。
「入口をたくさん設けることで、学生さんたちに様々な切り口で当社に興味を持ってもらう狙いです。サイバーエージェントがどんな会社か分からないという方も当然いらっしゃいますので、多様なエントリープランを用意するのは非常に大事だと思っています」
若手で執行役員に抜擢されている経営陣が経営の考え方や組織課題との向き合い方などを直接伝え、ワークとケーススタディを通じて学んでもらう『Business Leaders College』、デザイナー志望の学生を対象とするInstagramを使用した本選考エントリー、25歳以下の若手クリエイターを対象としたCM作品のコンテスト『Abema TV U25 CONTEST』など、独自の採用イベントを多数開催している同社。なかでも、”就業型インターンシップ”を特に重視している、と曽山氏は語る。
「約1ヶ月間、実際に現場で実務経験をしてもらうことで、確実にミスマッチも防げると考えています」
また、同社は、地方に住む就活生向けの支援パッケージ『FLAT』を提供している。全国の現地でのセミナーや選考会のほか、オンライン選考も実施しており、オンラインとオフラインを組み合わせた取り組みとなっているという。
企業変革をする覚悟で採用活動に取り組む
サイバーエージェントでは、「採用の民主化」にも取り組んでおり、新卒採用強化プロジェクトとして『YJC』が始動している。YJCとは、「良い人を、自分たちで、ちゃんと採用する」の略。人事が戦略を立てる従来の採用とは異なり、事業部と人事がチームになって採用を強化するプロジェクトだ。『YJC』では、現場と人事が9チームに分かれて、それぞれでゼロから採用設計をし、採用人数目標を持って競争しているという。
「スタートアップでは最初は社長が採用を行いますよね。その後、人事に権限委譲しますが、ここで思考停止してしまうことがしばしばあるんです。もっと現場の力を借りることで、採用力を強化することができると考えました。我々はここにゲーム性を持たせたんですが、チームごとに独自の採用活動に取り組んでおり、みんな気合いが入っています」
最後に、曽山氏は、採用力を向上させる3つのポイントをまとめた。
一つは先述した「動画の活用」。そして、『マルチエントリー採用』のインターンやイベントのように、自分たちの会社の価値を文字に落として多様な切り口で表現する「価値の言語化」も重要だという。3つ目は「採用で企業変革」。事業部を巻き込んで採用を強化する『YJC』のように、企業変革をするくらいの覚悟で取り組んだ方が、採用も会社ももっと面白くなる、と曽山氏は語った。