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「攻めの採用活動」ソフトバンクの源田氏が語るこれからの採用

源田 泰之 (ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長)

NEXT HRカンファレンスーーテクノロジーを駆使した採用革命

2018年7月31日、動画面接プラットフォーム『harutaka(ハルタカ)』を運営する株式会社ZENKIGEN(東京都千代田区、代表取締役 野澤比日樹)は、各業界のHR分野に精通した著名な方々をお招きし、初の主催となるイベント「NEXT HRカンファレンス」を開催いたしました。

テーマは、「テクノロジーを駆使した採用革命」。ご登壇いただいた3社(ソフトバンク株式会社、株式会社USEN-NEXT HOLDINGS、株式会社サイバーエージェント)は、採用活動において積極的にHRテクノロジーをご活用されています。その事例も交えて、各社の人材採用における先進的な取り組みについてお話しいただきました。また、採用管理システム『SONAR(ソナー)』を展開するイグナイトアイ株式会社に、『harutaka(ハルタカ)』との連携事例もご紹介いただきました。

会場(住友不動産麹町ビル)には、280名を超えるHR領域でご活躍の方々がご来場。和やかな雰囲気でイベントはスタートしました。当日行われたセッションの様子をレポート形式でご紹介いたします。

ソフトバンクの採用とHRテクノロジーの活用

大量の母集団を形成して選抜する方針から、“攻めの採用活動”にシフト

ソフトバンクの採用規模は、16新卒が505名、17新卒が397名、18新卒が385名。19新卒も380名ほどの採用を予定している。一見すると採用人数が徐々に減ってきているように感じるが、実は新卒と並行して行っている中途採用が増えているという。通信キャリアとして不動の地位を確立しているソフトバンクだが、新規参入や格安スマホの登場、さらには次世代通信「5G」への投資など、通信事業環境は決して楽観視できる状況ではない、と源田氏は語る。

「現在の顧客基盤や通信ネットワークを活用して、例えばフィンテックやセキュリティ、あるいはクラウドなど、新たな事業に積極的に取り組んでいく必要があります」

このような背景から、ソフトバンクでは、新たな事業を推進するために、経験豊富な人材や最新技術に精通した技術者などの中途採用に力を入れている。

一方で、新卒採用に関してもここ数年で大きく方向転換しているところだ。これまでの採用活動では、マス向けのアプローチをして大量の母集団を形成し選抜する方針だったが、求めている人材に対して自ら積極的にアプローチしていく採用手法に切り替えたという。

もともとは当社にエントリーいただく約3万人ほどの学生さんの中から当社にマッチする人材を選抜していましたが、こちらから優秀な学生さんに直接アプローチして、ソフトバンクの世界観や事業、リアルな働き方というものをしっかりと伝えて志望度を上げていただく“攻めの採用活動”にシフトしました

ソフトバンクでは今年度、マスにかける人的リソースやコストを3分の1ほどに削減した結果、母集団の数は約9割に減ったという。母集団にかける工数、エネルギーを削減して、その分より多様で優秀な人材の獲得に注力しているのである。

源田氏は、”攻めの採用活動”の事例をいくつか紹介してくれた。

まずは、スポーツや学術などジャンルを問わずナンバーワンの実績を持つ学生を採用する『No.1採用』。ソフトバンクでは2011年度から続いている取り組みだ。

そして、一ヶ月間、もしくは二週間、実際にソフトバンクで他の社員と同じように働いてもらう『就活インターン』。本選考でインターン期間中の評価が考慮されるまさに採用直結型。4500名ほどの応募があり、今年は約430名の学生が実際に働き、その3分の1がインターン経由で入社することが見込まれているという。

「当社は今後、例えばAIやIoT、ロボティクスといった最新の分野に挑戦していくところですが、一般の学生さんの間ではどうしてもソフトバンクという会社に“携帯電話会社”という印象が強く、なかなか求めている人材のイメージが伝わっていないのが現状です。実際のインターンを通してソフトバンクをより深く知ってもらうという意味合いが非常に強いですね」

次に、地方創生インターン『TURE-TECH(ツレテク)』。これは、日本の地方自治体が抱えているリアルな課題の解決に取り組むプログラム。学生がチームを組み、フィールドワークで現地の市民と直接対話し、解決策を練る。最終的には市長に提案して良いものは採択され、予算もついて遂行していくところまですべてやりきるという非常にユニークなインターンだ。
他に、学校推薦や研究室訪問と地道な活動にもしっかりと取り組んでおり、グローバル採用も積極的に行っているという。

“攻めの採用活動“に注力するため、エントリーシートの評価判定にAIを導入

ソフトバンクでは、エントリーシートの評価判定にAIを活用している。導入を決めた背景について、源田氏は次のように語る。

「2月から3月にかけて、当社には大量のエントリーシートが送られてきます。また、その時期は大学訪問や会社説明会の時期と重複しているため、候補者となる方へのアプローチ、つまり”攻めの採用活動”に時間を割くことが難しい状況になってしまいます。何かを効率化する必要があって踏み込んだのが、エントリーシートでのAI活用です」

採用担当者がエントリーシートを1件1件読み込んで書類選考するのには膨大な時間がかかる。さらに、複数名で分担し評価することで目線のブレが発生しないとも限らない。源田氏は、AIを導入することで人事業務負荷を削減し、より公平なジャッジも可能になると考えたという。

同社では、IBMの『Watson』に判断基準を学習させるため、過去のエントリーシートをすべて読み込ませることからスタートした。しかし、思うような結果は得られなかったという。

「そこで、読み込ませるエントリーシートを、直近のもの、さらにはベテランの採用担当者がジャッジしたものに絞っていきました」

その後も、データを分解し、様々なトライアンドエラーを繰り返していったという。その結果、理想の仕組みに到達した、と源田氏は語る。

AIと採用担当者が同時に5人分のエントリーシートを読み込み早さを競う実験では、AIは15秒、採用担当者は14分30秒という結果が出た。また、AIも採用担当者も「基準に満たない」と判断したのは同じエントリーシートで、AIの“早さ”と“正確性”が実証される結果となった。 とはいえ、源田氏は、AIによる評価判定への世の中の反応や学生からの不安の声を懸念したという。そのため、「AIで不合格となったエントリーシートは必ず採用担当者が確認し合否の最終判断を行う」というプロセスを入れている。

AIの活用により、対応時間や人件費を75%ほど削減することができました。大幅効率化だけでなく、統一された評価軸でのより公平な選考が可能になり、さらに創出された時間を戦略的な採用活動に回すことができたと考えています」

採用活動において様々なHRテクノロジーを積極的に活用

エントリーシート以外においても、ソフトバンクの採用活動では様々なテクノロジーを活用している。
イグナイトアイの採用管理システム『SONAR』も導入しており、管理工数をできるだけ減らす取り組みをしているという。
また、『Watson』と『LINE』のAPI連携によって、チャットボットによる問合せ窓口自動化もしている。新卒採用の問い合わせは年間4000件にのぼるが、チャットボットで回答する仕組みにより、80%ほどの1次対応の巻き取りに成功した、と源田氏は語る。
さらに、ZENKIGENの『harutaka(ハルタカ)』の動画選考機能を、主にインターンで活用しているという。

「インターンだけでも4500名ほどのエントリーがあって、その選考にも実は非常に工数がかかってしまうんです。録画面接では深堀はできませんが、表面的な人物イメージは充分に確認可能だと考えています

ソフトバンクでは、人事・総務領域でAIなどのテクノロジーを積極的に活用した働き方を考える未来実現推進室というものも設置している。リアルな将来像の作成、情報収集&配信、各種のトライアルの推進を軸に、講演やニュース配信、事例紹介イベントの開催などを行っているという。

「当社では、採用だけではなく社員サポートでもチャットボットを利用していますし、携帯アプリを活用した会議室の予約、VRでオフィス環境を紹介するVR社内ツアーなども行っています。テクノロジーをどんどん使ってみて、PDCAを回して良いものを取り入れていこうということで、これからも積極的に取り組んでいく考えです」

→第2回:『超!全力採用』から始まるHR革命へ

源田 泰之(ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長)

1998年、ソフトバンク株式会社入社。営業職を経て2008年より現職。採用責任者及びソフトバンクグループ社員向けのソフトバンクユニバーシティ及び孫正義氏の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(ソフトバンクイノベンチャー)の事務局責任者を務める。また、一般財団法人孫正義育英財団の事務局長も務めている。

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