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なぜ、AI面接サービスを開発するのか – ZENKIGEN Lab Report 002

石丸 晋平 (株式会社ZENKIGEN 採用DXソリューションの事業開発責任者)

企業において欠かすことのできない「採用」という業務は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいるとは言えず、まだまだアナログな業務が多い現状です。

AI採用には具体的に何ができるのか、どのような情報が活用されるのか、そしてAI採用と人間との関わり方についてZENKIGENの石丸に伺いました。

相手と直接話してみないと見極められないノンバーバル情報が、動画をAIで解析すると見えてくる

ZENKIGENでは、面接動画データを用いて認知バイアスを明らかにするAIの開発していますが、詳しく教えてください。

昨今、人事領域におけるAIの活用事例が増えてきました。しかし、既存業務の代替としてのAI活用がほとんどです。我々は、人が苦手なこと、人ができないことを、AIにサポートしてもらうという発想から独自のAIエンジン「ZIGAN(慈眼)」を開発し、ZIGANを搭載した解析機能をリリースしています。

ZIGAN(慈眼)とは、「慈しみの眼をもって人をみれば、海のように幸せがあふれる」という意味と願いを込めています。そして、ZIGANエンジンを搭載した新機能が「harutaka エントリーファインダー」です。

エントリーファインダーは、数千〜数万件の応募情報の動画データから応募者の熱意や印象を定量化します。本来は、面接で出会うまでわからない人柄が把握できることで、書類では把握できず、不採用の結果になっていた熱意ある応募者を発見できます。

また、面接官の評価軸を学習することで、その企業の評価者が「どのような候補者が良い」と考えているかを可視化し、それぞれの面接官や企業が持つバイアスを明らかにします。人はバイアスを認知すると、自らの行動を変える傾向にあります。その特性を利用し、面接官の行動や価値観の変化をうながすことができます。

ZIGANエンジンは、データの特徴とアルゴリズムの2つの要素が重要になってきます。アルゴリズム・機械学習の強みとしては、特に映像とデータの処理に力を入れています。

我々が扱っているデータというのは動画情報です。動画には、候補者が話している内容の「バーバル(言語)情報」と、仕草や声のトーンなどの「ノンバーバル(非言語)情報」がたくさん入っています。

メラビアンの法則では「対人関係の印象を決める9割はノンバーバル情報から来る」と言われているように、人間は普段、言語の交換だけではなく五感を使ってコミュニケーションをとっているのです。

採用面接において、バーバル情報は今までのエントリーシート・筆記試験でも確認できる情報と重複しています。

一方、動画データにおけるノンバーバル情報は、大量の特徴量を抽出することができ、かなりの情報量になります。目線の動き方や話し方などを特徴量として一つずつ抽出し、総合的に見ることで緊張しているか、集中できているか、コミュニケーションの傾向などがわかります。

今までは会うまでわからず、取扱が困難なノンバーバル情報が、動画データを用いることによって有効活用できるようになるということでしょうか?

そうです。harutakaのエントリー動画(エントリーシートの動画版)の活用が広がり、選考通過者を面接にお呼びする前に、本人のことを知ることができるようになりました。そして、ZIGANを搭載したエントリーファインダー機能により、自社が求める人物を書類とは異なる選考軸で探すことができるようになります。

今までのアナログ採用では、言語化できる情報が重視されてきました。採用選考において、ノンバーバル情報は極めて重要であり、確実に評価に影響しています。しかし、定性的・主観的であるため、意識しても統制不可能なため、可能な限り採用選考に影響していないと説明するほかありませんでした。

対して、ノンバーバルの情報は会うまでわかりませんでした。面接で会う前にわかるという利点に加えて、人間が定性的に感じているけど表現ができてなかったところを発見することができるようになります。

AIが採用業務を補助することによって、コミュニケーションの中あるいは自己PRの中に現れている人となりや印象がデジタルな記録として現れてきます。

また、この動画データを評価や人と人とのマッチングに活用できる可能性が出てきます。

ノンバーバル情報が取れることで、採用面接にどのような影響があるのでしょうか?

例えば、エントリーシートである程度の学力・知能が測れていても、その応募者の中には、コミュニケーションが不安な方が確実にいるわけです。

能力値は高いけどコミュニケーションに不安がある応募者に対しては、会社に入った後に求められる一般的なコミュニケーションができるかどうかに注目して面接をした方がいいはずです。

一方で、熱意あふれる応募で、コミット力が期待できそうですが、思考力や能力の書類選考評価には課題がありそうな応募者に対しては、面接において思考力や地頭、能力を補って余りあるコミュニケーション力が発揮できることなどを重点的に確認するべきですよね。

どんな人であっても、企業が求める全ての能力が均一的に高いなんてことはありえません。必ず凸凹していることを理解した上で、候補者の適性を選考や面接において、客観的かつ正確に把握できるようになるのが一番です。

しかし、従来のアナログ採用では、全ての評価軸がバランス良く一定以上であることを求めた採用方針をとっています。つまり、バランスが良い人物を評価するということです。特に、大量の応募に対しては、学力・能力によるスクリーニングを行い、本人の人間的な魅力などは考慮することができませんでした。ノンバーバルな情報について、面接で候補者と会う前にAIが補助する意味がここにあります。

AI採用に重要なのは「説明できるAI」であること

選考においてAIが補助をするのはとても有用だということがわかったのですが、世の中ではすでに様々なAI採用が提供されていますよね。ZENKIGENが提供するエントリーファインダーはどのような違いがあるのでしょうか?

現状は、人事を構成しているデータという概念がテキスト情報中心であり、デジタル化すると言ってもテキスト情報がベースです。その状態でAIを組み込もうとした時には、自然言語処理やルールベースの解析モデルを用いることが多く、人の評価業務を代替したり、自動化するケースばかりでした。

面接自体を代替するAI面接なども世の中にはありますが、候補者の回答パターンを評価ロジックに振り分けたり、話している内容をテキストに書き起こしてパターン認識するルールベースのAIが多いようです。

先行するサービスは、言語や論理を重視した選考方式の方がAI化の進化が進んでいるのです。また、日本語の自然言語処理は、まだまだ発展途上であるため、実際は、AIというより、旧来のプログラミング処理であるサービスも少なくありません。

しかし、テキスト情報に比べて、動画情報は飛躍的に情報量が増えます。同じ文章・内容であっても、文字で読むのと、本人の表情やしぐさ、文脈を踏まえた発言では、まったく意味合いが変わることもあるでしょう。どんな人物、表情、感情、間、スピード、ピッチ、などでコミュニケーションする人物なのかを想像していただくと、動画情報の情報量が想像できると思います。これらの新たなデータをAIが解析するのです。当然、動画情報をAIで処理するためには、テキスト化された情報を処理するよりも難しいAIを構築することになります。

微細なところまで判断できる人事のプロが、全てのデータを詳らかに確認することは困難でしょう。AIであれば、詳細な特徴量を捉えて判断軸の中に落とし込んでいくことができるようになります。それが、動画データのノンバーバル情報を処理するAIが目指す姿です。

AI採用を構築するにあたって、採用という領域ならではの難しさはありますか。

今のAIは、「教師データ」を準備し、教師を真似することを「学習」とする開発手法が一般的です。ですが、採用という領域の難しさの一つは「何を正解にしたらよいのか」が不確かなことです。採用工程で合格した人物が、活躍するとも定着するとも言えません。他の人物だと駄目だったのか、比較もできません。つまり、採用における教師データは、基準をもたせることはできても、本当に正解かは未来のみぞ知る領域なのです。

営業やマーケティングならKPIがあって、改善に向けて何が有効かを学ばせていくというアプローチが明確にできます。しかし、採用選考は、「ヒト」という最も難しくてまだ解明が十分にできていない相手を対象にします。また、結果がでるまでの期間が数年単位であるため、即座に正解を確認できない。そのため、明確な指標や改善が作りづらいのです。

大丈夫かな?と不安を覚えながらも採用してみたら番狂わせで社長まで駆け上がるような人もいれば、全ての面接官が抜群に優秀と評価したはずなのに、3年目で頭打ちになる人もいます。そのあたりは本当に難しく、人事や採用担当を悩まし続けている領域です。

そのため、採用におけるAI開発は、合否結果や評価情報をそもそも「正解」としていいのかというのが、非常に難しく、悩ましい点だと思います。

また、今までの選考結果を教師データとして機械学習を強化すると、AIの評価自体が無意識的に差別を生んでしまう可能性があります。
例えば、偏ったデータサンプルを学習したAIモデルを開発すると、出身地や大学、性別など、なにか意図しないところで評価をしてしまうAIの評価モデルが出来上がるリスクがあります。

また、人の評価バイアスをそのまま学習させてしまうことは、果たして「正しい」と言えるのか、採用領域におけるAI開発では、避けて通れない命題です。

AIが間違った差別を生んでしまう事例は、海外などでも発生していますよね。大きな命題だと思うのですが解決方法はあるのでしょうか。

この問題に対処するために、ZIGANエンジンは「説明できるAI」を前提とした開発を進めています。

重要視しているのは「AIに説明責任を果たさせる」という考え方です。
過去の評価、人事部の評価を教師データとして、ディープラーニングを用いて人の評価を再現しても構いません。しかし、その結果が全て正しいという盲目的な開発や利用ではなく、あくまで人の認知バイアスを含む結果の再現として取り扱います。そして、「なぜその人が合格したのか」という要素を中間変数として指標化することを重視しています。そうすることで「その候補者が合格した理由」を人事がさかのぼることができます。

採用業務は一期一会です。その場その場での最善の判断が求められます。しかし、その評価結果が、必ず正しいとは限らない。だから、結果的に良かったケースと良くなかったケースが出てきた時に、人事はZIGANエンジンが示す説明を見直すことが大事です。これまで振り返ることができなかったレベルで、特徴的な傾向を見つけて、評価軸や変数を調整できるようになり、AIと人事が相互にカバーしあう業務運用を構築することができます。

AI採用と人事は役割を分担していきたい

AIと人事はどのように関わっていくべきだと考えていますか?

デジタルソリューションがあらゆる産業や業務をトランスフォームする時代です。これまでのアナログ採用の中でも人事は最大限の誠意を尽くしていて、できる限りの評価や対応をしています。しかし、そこにはやはり限界があります。アナログな採用では、人が対応できる限界のなか、試行錯誤の結果として構築された業務だと思います。改善ではなく、新たなAIテクノロジーを用いて、ゼロからあるべき採用の姿を描くことが重要だと思います。 一方で、AIが既存のバイアスがかかった評価軸を再現するだけでは、アナログ業務の一部代替は実現できるかもしれませんが、DXが推進されたとは言えません。人事の苦労をAIに背負わせて、AIに過度な信頼を置いて任せきってしまうと、間違った評価が助長され続ける結果になってしまいます。人事が採用業務とその結果のハンドルをもち、適切にブレーキをかけなければいけません。 採用や人事業務における人とAIの付き合い方を考える際には、人の能力を見極める、そして引き出すという人事の本分に立ち返ることが近道だと思います。もはや、入社後の忠誠心を期待する時代背景ではありません。出会った人材が、社会のなかで活躍できることを支えるために、人事が果たすべき役割は非常に多いはずです。そして、アナログ業務では達成できない課題ばかりです。その様に考えると、デジタルトランスフォーメーション後の世界観を各社の人事担当者の皆さんが考えたり、発想しやすいのではないでしょうか。 我々AIベンダーには、開発者としての責任があります。そして、人事にはAIの使用者としての責任があります。たんに「AIが自動でやってくれるから楽になった」を目指すのではなくて、AIを用いることで、今まで介入できないことができたり、曖昧なものが高度化される業務や課題に着目すること、そして、AIの特性を理解し、強みや限界を理解した上で活用することが抜本的なデジタル化を成功させる秘訣だと思います。 人事の皆さんにとっては、少し面倒で大変な道だと思いますが、DX推進は、短期的に対処するよりも、数年の時間軸で、有効なサイクルを回すことで、確実に新しい景色をみせてくれるものだと考えています。

AIと人事が協働して採用に取り組むこと

AIの特性を活かしつつ、業務運用を踏まえて、一つひとつの現場で、きちんと今まで以上の公平さを担保できる状態にしていくことは、我々だけではなく、AIを導入する人事の皆さまにも負担があります。少しばかり大変な道のりです。だからこそ、真摯に取り組み続けるからこそ実現できる未来があります。 AI採用にできること、できないこと、AIに任せるべきこと、人事が担うべきことを適切に把握しながら、人事の皆さまと共に、採用のDXを推進していきます。

>次回 ZENKIGEN Lab Report 003 はこちら

石丸 晋平(株式会社ZENKIGEN 採用DXソリューションの事業開発責任者)

1983年福岡県生まれ。全機現というビジョンに共感して、2018年にZENKIGENに参画。 人は社会の財産という想いから「社会に開かれた人事」をコンセプトに掲げ、HRをヒューマン・リレーションシップス(資源管理から関係支援)に変容することを目指している。現在は、事業開発を中心に、企業人事への新たなテクノロジーとメソドロジーの実装、人の感情や身体に関わるデータとコミュニケーションの関係を計測する共同研究に従事。

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