CHRO育成アカデミーCANTERAの堀尾 司氏が答える「コロナ危機における人事課題」の実情【第1回目】(後半)
2020年4月7日(火)、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」を提供するHR Tech スタートアップ 株式会社ZENKIGEN(代表取締役CEO:野澤 比日樹)は、日本初のCHRO養成講座「CANTERA」を運営する株式会社All Personal(代表取締役:堀尾 司)と共同で、新型コロナウイルス関連の緊急対応に奔走する人事担当者の悩みにリアルタイムで答える「コロナ危機における人事課題の相談所」のライブ配信を実施いたしました。
前回の記事前半では、事前アンケートにおいて票数の多い、採用・マネジメント・労務関連の人事課題を中心に、コロナ禍の現況をお伝えした。記事後半では、フリートークの様子をお伝えする。
人事関係者のリアルな悩みに関するフリートーク
Q1. <労務>人事は今、防疫や保証などの対策と説明を、どの様に対応すべきか。
清水:匿名の投稿、人事からの防疫対策について、健康・給与・保証などの多方面の対策とその説明に悩まれている。
堀尾:他社事例が参考になるかもしれない。スマートHR社は、リモート環境に必要な機器購入で一人2万5千円を支給。今必要な金額の担保をする姿勢が重要だ。他にも、ベルフェイス社などの多くの成長企業で、ベビーシッター利用の補助や、オンライン会食手当などの報道がある。
Q2. <採用>対面にこだわる経営陣をどう説得したらよいか?
清水:リアルなお悩みです。新卒採用の会社説明会を、オンラインに切り替えたいが、社長は対面にこだわっている。対面説明会の開催の回避を、どう説得したらよいか。
堀尾:リモート環境に慣れていないがゆえに、対面にこだわる状況は理解できる。但し、ご自身のお子様が説明会に参加し、コロナ感染する可能性を想像してもらってみると如何だろうか?今の対面開催は、決して安心安全が担保されていると決断できないだろう。結果的には、企業ブランドの毀損や、不評のSNS拡散などのリスクにつながることが容易に想像できる。
Q3. <育成>自宅待機の新入社員の教育をどうするか?
清水:次は、新入社員が在宅勤務となり、先輩が背中をみせて育てるOJT、体系的なOff-JTの研修が行えないなかでの教育をどうするか、という質問です。
堀尾:今は、オンラインの学習コンテンツが拡充してきている。安価に購入できる研究コンテンツもあるため、オンライン形式のコンテンツやツールの見直しは行ってほしい。
また、オンラインだから背中を見せることができないというのは、疑ってみてほしい。会話も顔をあわせることもできる中で、伝える工夫はあるはずだ。新入社員の為にも、知恵を絞って、コミュニケーションの総量を増やして欲しい。
Q4. <採用>22年度卒の採用スケジュール、他社はどの様に対応しているか?
清水:22卒の採用スケジュールは、引き直しの必要に迫られている。他社は、どんな対策やスケジュールで対応しているか、動向や事例はありますか?
堀尾:大きく2つあります。まず、採用活動の実施をするかどうか、という問題です。自主判断で採用スケジュールを遅らせるのは致し方ないことだと。その一方で、学生の皆さんは休校と自粛で、時間を持て余している状況がある。
大切なことは、新卒採用を行うのであれば、人事が採用の意志をもつこと。そして、採用ブランディング、インターンの活用、オフの情報を開示できるツールの選定などの準備を、今のうちからやっておくべきなのではないかと考えます。
清水:確かに、新卒採用ではインターンシップを遠隔、オンラインで実施する企業も増えている。
堀尾:リサーチ系など、簡単に分業できることも多いでしょうから、遠隔でのインターンを当たり前の事として挑戦する姿勢が、企業には求められるのではないだろうか。
Q5. <採用>ポストコロナの採用動向をどう予測する?
清水:次の質問は、ポストコロナ、コロナ後の採用動向はどうなるか。という端的な質問です。
堀尾:まず、自社の社員がそのまま同じ人数で、アフターコロナも働いてくれるのか。私はそこから真剣に懸念すべきだと思います。人事の方も大変な時期ですが、入念なコミュニケーションやフォローをしないと、会社へのロイヤリティーが希薄化し、退職する可能性は高まる。実際に、リモートワークが加速してから、多くの方からの転職相談が来ています。
リモートワークは、優秀な人の生産性を高め、必要なリソースの可視化を進めた。一方で、生産性が低くなる人も多い。優秀な人材は、どこでも引っ張りだこだが、その傾向が加速することになる。要は、必要人材と不必要人材の2極化が一気に起こるという事。今のうちから、与えられた仕事ではなく、新しい仕事を起こす仕事の腕を磨いておく。人事も率先して、スキルを磨いておきたい。
Q6. <採用>最終面接は対面でなければ判断できない、採用延期の判断をどう考える?
清水:次は、中途採用に関して。最終面接は対面でないと判断できないと思っている。一方、感染拡大に配慮しなければ、ブランド毀損になるため、採用延期の方針とする企業が大半ではないか。最大限の配慮のうえでの対面を提案、難しければ終息後のリスケを提案が最善と思うが、どの様に考えるか。
堀尾:先週(4月1週目)は、最終面接を対面とする企業が大半だったが、今週(4月2週目)からは、対面のリスクを自覚し、オンライン面接に切り替える傾向が顕著だ。
もし、面接スキルがオンラインだと及ばないという懸念があるならば、候補者の自宅付近に行く、という選択肢も考えてみてはどうか。固定概念を変える必要がある。「今、来てもらう」ことが、どれほど心象の悪いことなのか、自覚を持つことが大事。新入社員の入社後、社長自ら自宅をまわって「大丈夫だ」と伝えていた企業さえある。オンラインでの面接が当たり前になる前提を受け入れて、時代に合わせて採用プロセスを進化させて欲しい。面接日程の先延ばしは、候補者の立場からすれば、意欲ある他社を選ぶ事に繋がる。
清水:やはり、候補者は有事の際の企業姿勢に敏感で、判断軸になるということ。
Q7. <復職支援>メンタル疾患の復職プログラムを中断する判断は適切なのか?
清水:次は、「メンタル疾患の社員が、休職から復職プログラムに移り、簡易業務を行っている。全社員が原則在宅勤務に切り替える予定であり、復職プログラムの業務がなくなる。会社都合で休業に戻ってもらう必要性がでている」とのこと、アドバイスはありますか。
堀尾:苦渋のなかで判断せざるを得ない課題だ。経営上の切迫した状況での判断であれば、第三者が言えることはない。しかし、必死に努力して回復してきた復職者の心情を考えると、人事として悩み抜き、できる仕事をつくってほしいと思う。もし通常勤務の方であれば、リモートでの対応を考えるはず、「メンタル不調だから」という理由をつけて、考え抜くことを止めないでほしい。私が人事なら、迷わずリモートでの職務を必ず作る。
Q8. <採用>面接延期中の求職者のリテンションをどうするか?
清水:寄り添うことが大切ですね。続いては、「面接の延期を行っているが、求職者へのリテンションの施策を行いたい」という悩みです。
堀尾:「採用ファネル」で考えることが重要だ。今、面接工程をストップする企業は多い。一方で、ある時期からアフターコロナで事業が急活性することもあると思う。その際、過去の不合格者、辞退者も含め、今のうちからコミュニケーションの機会をつくるべきだ。その方法は、オンラインのカジュアルランチなどで構わないのではないか。結果、いざという時の候補者のコミュニケティが作れているはず。
清水:既に実践している企業はあるか?
堀尾:面接工程のなかで、カジュアルな会話を含めるケースは多い。採用では自社の理解度を上げてもらうこと以上に、相手の状況把握が大事。そのために、この人事の方であれば、なんでも情報を開示できる、という状態をつくれるか。積極的にオンラインのコミュニケーションを行い、ランチの費用精算は会社が負担とする等の施策もやってみてほしい。
清水:オンラインのコミュニケーションにおいて、社員毎に在宅のWi-Fi通信環境がばらつき、生産性に影響するのではないか。ハード面の支援をしている企業はあるのか。
堀尾:むしろ会社の支援がないほうが不安だ。今、家電量販店にいってもテレワーク関連の機器は品切れになっている。会社が法人契約で手配する、テザリングの通信費を立替え払いにする、長時間の作業疲労を軽減させる仕事用の椅子の準備など、会社のサポートが必要不可欠。
Q9. <テレワーク導入>リモートワーク環境整備の重要性を、どう伝える?
清水:次は、リモートワークについて、「来週から在宅勤務がはじまり、通常勤務よりコミュニケーション頻度を増やす仕組みが大事だと思うが、その重要性が伝わらない」との悩みです。
堀尾:2日もすれば懸念が晴れるのではないか。いざはじめると、うまくいかない。経験者に頼り、リモートワーク環境を整備してもらうニーズが生まれるはずだ。
一方、導入前から進めたい場合は、テレワーク導入の経験を活かし、導入時の課題や問題、不満などをまとめて伝えることが大事だ。業績や生産性の低下が起こりうる事象を伝え、改善策の必要性の理解を促してほしい。
Q10. <人事全般>コロナ不況に伴う業績後退、人事が準備できる対策とは?
清水:現在、残り19件の質問があがっている、あと1, 2問の回答になる。次は、「コロナの影響で不景気のリスクが高まっている、人事として行える不景気による業績後退への準備はあるか」という質問です。
堀尾:コロナの影響において、過剰な恐怖という懸念をもっている。まず、政府発表にある縮小や自粛の対象業界かどうか。国からの助成・補助は巨額の経済規模を把握して欲しい。意外に、助成・補助の適切な活用が行えていない。無担保無利子の補助もある。人事としても、自分の管轄領域外にも手を伸ばし、会社の減益を担保できる状況をつくれないか、ということを調査、検討して会社一丸で乗り越えてほしい。
あとは、固定費・販管費の圧縮は進むことが予想されるため、広告費の削減だ。採用であれば、採用PR・採用ブランディング・採用広告の費用になる。個人としてのソーシャル力を上げ、フォロワー数、ファンを増やすことは、自助努力で行える。
Q11. <採用>オンライン・インターンシップの動向は?
清水:最後の質問は、「22年度採用の他社動向を知りたい。オンラインのインターンシップを何かしら検討する必要があると考えている」ということです。
堀尾:例えば、オープンワークのなかでインターンシップの実施企業を、情報収集することをお勧めする。オンラインで他社との共同インターンシップを実施する企業も増えている。合同インターンシップ・合同入社式、合同新卒研修は、一般的な選択肢になってきている。
堀尾 司 (株式会社All Personal 代表取締役CEO)
清水 邑(株式会社ZENKIGEN コミュニティプロデューサー)