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離職率の正しい計算方法を解説。職種別の離職率の改善策もご紹介

少子高齢化により働き手が少なくなっている今、人手不足に悩まされている企業も多いのではないでしょうか。”働きやすい職場”というイメージを持ってもらうためにも、「離職率」の数値が重要視されてきます。今回は、離職率の計算方法や改善策などをご紹介します。

離職率とは

離職率とは、一定の期間のうちどのくらいの社員が退職したかどうかを表す指数のことです。総務省統計局が定義した離職者は、”1年前に仕事をしていたけれど、退職をして現在は仕事をしていない人”となります。

一般的に、企業全体の離職率だけでなく、算出する対象を部署や新卒者などを細かくグルーピングして離職率を出すことで、より正確な人員の流動状況を割り出すことができます。

離職率の計算方法

離職率の計算方法は、法律などで定義されているわけではありませんが、厚生労働省が毎年公表している以下の計算方法を採用する企業が多いでしょう​​。

離職率=期末までの1年間の離職者数÷期初時点の常用労働者数×100(%)

上記の計算方法であれば、「3年間の人事部の離職率」や「2020年4月から2021年3月の新卒社員の離職率」など、期間や対象者に合わせて応用ができます。例えば下記のようなパターンの場合、離職率は以下のような計算となります。

・パターン1
2020年4月時点に100名在籍している会社で、2021年3月までに10人が退職した場合の会社全体の離職率。
→10名(期末までの1年間の離職者数)÷100名(期初時点の常用労働者数)×100=離職率が10%

・パターン2
2018年4月に採用した新卒者20名がいる会社で、2021年3月までに2018年度新卒入社4名が退職した場合の離職率。
→4名(新卒入社の離職者数)÷20名(2018年度4月に採用した新卒者の総数)×100=離職率が20%

・パターン3
2011年から2021年の間で中途入社の社員30名いる会社で、中途社員が10年間で5名離職した場合の離職率。
→5名(中途社員の離職者数)÷ 30名(10年間に採用した中途社員の総数)×100=離職率が約16.7%

離職率を計算する際に注意する点

・離職率の定義に注目する

離職率は、「一定の期間内にどれだけの人数の社員が退職したかどうか」の割合を意味します。”一定の期間”の設定も企業によって様々なため、期間によって企業の離職率は高くなったり低くなったり変動することになります。例えば「離職率0%」とアピールしている企業も1ヶ月間で計算している可能性があるため、どのくらいの期間をどのような定義で計算しているのかどうかをチェックする癖をつけましょう。

また、同時に、自社で離職率を公表する場合、必ずどのくらいの期間でどのような定義で計算しているのかどうかを表記することが大切です。

・算出時は新入社員の人数は含めない

算出時、分母に新入社員は含めないように注意しましょう。例えば、2021年4月〜9月の離職率を求める場合、期初時点である4月1日の常用労働者数を母数にし、4月2日〜9月30日に入社した従業員は計算に含めず算出します。

・定年退職者やグループ会社への転籍者を含めるかどうかを決定する

離職者数の基準も企業によって異なります。定年退職者やグループ会社への転籍者を”離職”として捉えるどうかも計算前に決めておきましょう。一般的には含めない企業が多いですが、算出した数字の活用法次第では含んで計算する場合もあります。

・離職率の公表は慎重に決定する

計算した離職率を公表するかどうかは、経営陣や人事、広報などと慎重に相談することが大切です。一般的に離職率が30%を超えるとイメージダウンにつながる可能性がありますが、その数値を超えていなくても、同じ業界の企業の離職率を調べて公表するかどうかを判断することを推奨します。

職業別に見る離職率

厚生労働省が公表している「2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概況」によると、職業によって離職率に大きな差がでていることがわかっています。

業種

離職率 ※降順

宿泊業、飲食サービス業

33.6%

生活関連サービス業、娯楽業

20.5%

その他サービス業

18.8%

教育、学習支援業

17.7%

卸売業、小売業

15.4%

電気・ガス・熱供給・水道業

15.4%

不動産業、物品賃貸業

15.1%

医療、福祉

14.4%

運輸業、郵便業

12.5%

金融業、保険業

10.7%

学術研究、専門・技術サービス業

10.6%

製造業

9.6%

情報通信業

9.6%

建設業

9.2%

複合サービス事業

7.9%

参考:2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概況

最も離職率が高い職種は、「宿泊業、飲食サービス業」で33.6%という数値となりました。全体の離職率の平均値は15.6%なため、「宿泊業、飲食サービス業」は倍以上の離職率ですが、これらは人材の流動性が高く、入職率も36.3%となっており、全職種の中でも一番高い数値がでています。

また、「複合サービス事業」は、7.9%という数値で最も離職率が低い業種と言えます。複合サービス事業とは、営利を目的としない協同組合など、複数の業種に関わっている事業を指します。この業種は、福利厚生が整っていることや中小企業が少ないことが理由として挙げられるでしょう。

これらの数値は社会情勢や業界動向によって変動するため、あくまで参考値として留めるようにしましょう。

離職率が高くなる原因

退職の理由は人によって様々で、家の事情やステップアップのために退職する場合も十分にあるため、必ずしも会社側の責任というわけではありません。ですが、下記の理由で退職する人も多いため、自社に当てはまっていないかどうかチェックしてみましょう。

・福利厚生に問題がある

“労働時間が長い”、”休みが少ない”、”労働に見合った給与が出ない”など福利厚生に関する待遇面が十分でないことが理由に挙げられます。長く働く上でこれらの条件に合わないのは、離職率が高くなってしまうのは当然と言えるでしょう。

・人事評価に不満を感じている

人事評価制度が整備されていない場合や自分の成果が正当に評価されていない場合、退職の原因になることも十分あり得ます。また、評価に応じて昇給や賞与のアップなどの見直しを行うことも大切です。

・職場環境が悪い

退職の理由として、「職場の人間関係がうまくいかなかった」という理由も上位に入ってくるため、離職率が高くなる原因といえるでしょう。職場の雰囲気は精神的にもダメージを与え、モチベーション低下により業務効率も下がってしまうため、早急な対処が必要です。

離職率を下げるためにできること

・従業員の働き方を見直す

残業が多い場合や休みが少ないという場合、従業員の負担が大きくなっている可能性が非常に高いです。ワークライフバランスを重視している人が増えているなか、多様な働き方ができるよう「フレックスタイム制度」や「テレワーク」の導入も視野にいれてみるといいでしょう。

また、有給休暇は、2019年4月に施行された「働き方改革関連法案」によって ”毎年5日の有給休暇を取得させること” が義務づけられました。これらを遵守しない場合、罰則が課せられる場合もあるので、この法案を従業員に周知し、従業員が有給休暇を取りやすくなる環境作りに徹しましょう。

・従業員が納得する評価制度を設ける

日本の企業は、”年功序列型”の賃金制度を採用している企業が非常に多いですが、実績と関係なく給与が決められてしまうことは、社員のモチベーション低下へとつながります。そのため、社員一人ひとりの成果を適切に評価できる”成果主義”の評価制度へ見直しが必要です。「360度評価」や「コンピテンシー評価」などさまざまな人事評価制度があるため、自社に合う制度を導入してみてはいかがでしょうか。

・職場環境の見直し

職場環境が、失敗やミスを許されない空気であったり、コミュニケーションが極端に少ない場合、改善の余地が十分にあると言えます。従業員同士が互いに称賛や励まし合いができる環境に整えるためには、コミュニケーションがとれる場を企業側から積極的に設けたり、チームが団結できるよう企業の目標を明確化したりして、離職率の改善へとつなげましょう。

また、悩みがあったらすぐに相談できる環境にするために、「1on1」を導入したり、匿名で相談できる窓口を設けることも効果的です。

・採用のミスマッチを減らす

時間やコストをかけて新入社員を採用しても、仕事内容や給与などの認識にズレがあると、早期退職を招いてしまう恐れがあります。これらを防ぐためには、応募者にできるだけ情報を共有できるかどうかが重要になってきます。

福利厚生を明確に伝えるのはもちろん、社内イベントを公開して会社の雰囲気を把握してもらったり、面接の前に担当部署のリーダーと面談をする場を設けるなどして、入社後のミスマッチを減らして離職率改善を目指しましょう。

自社の離職率を把握して人材流出を防ごう

働き手が減って人材不足が課題ななか、離職率を低下させて定着率を上げることが企業にとって重要な課題と言えるでしょう。離職率が低くなれば、優秀な人材も集まりやすくなり、従業員のモチベーションも上がるため、まずは自社の離職率をしっかりと把握し、離職率を低下させるための対策を練りましょう。

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