今注目の「レコグニション」制度とは?導入方法やメリットをご紹介
労働人口が減少している日本では、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、長期的に働いてもらうことが企業にとって重要な課題となっています。今回はそのエンゲージメントを高めるための制度「レコグニション」を紹介します。
目次
レコグニションとは
「レコグニション(Recognition)」とは、英語で”認識”、”承認”、”認定”の意味を持っており、ビジネスシーンで使われる際には、従業員の功績や活躍を認め合い、称賛し合う制度を指します。
従業員に対して賞与などの金銭的に評価をするだけでなく、第三者が把握できる形で従業員同士が非金銭報酬で称賛し合うなど、さまざまな方法があります。
レコグニションという言葉は、多くの場合人材マネジメントの用語として使われるのが一般的ですが、一部の業種においては、”製品安全規格”という意味合いで使われることもあるようです。
ソーシャルレコグニションとの違い
ビジネスシーンでは、レコグニションという言葉に、「社会的な」「社交的な」という意味合いを持つ「ソーシャル」がプラスされた「ソーシャルレコグニション(Sotial Recognition)」という言葉を耳にすることがあります。
従来レコグニションは、社員表彰制度や永年勤続表彰制度など、”企業が従業員に対して”称賛する制度がほとんどでしたが、ソーシャルレコグニションは、”身近なメンバー同士”で非金銭的報酬で称賛し合うことを指します。
そのためレコグニションは、”従業員を称賛する制度全体”を指し、ソーシャルレコグニションは、レコグニションのくくりの中のひとつで、”報酬を前提とせず、従業員同士が称賛し合う制度”を意味するため、概念の大きさによって使い分けられます。
ソーシャルレコグニションの具体例としては、相手への感謝や称賛の気持ちを伝えるために「サンクスカード」を送り合ったり、社内SNSで従業員を称賛する例がほとんどです。
これらはお互いのモチベーションをアップさせるだけでなく、職場の雰囲気を明るくポジティブに変化させてくれたり、コミュニケーションの活発化にも繋がります。
リワードとの違い
レコグニションは、「ソーシャルレコグニション」のほかに「リワード(Reward)」という言葉にも類似しています。レコグニションは、金銭が必ずしも発生するわけではない制度に比べ、「リワード」は、”褒美”という意味で、金銭が必ず伴うインセンティブを指します。例えば、賞与や昇給などが該当し、従業員の成果に対して金銭で評価がなされる制度が挙げられます。
レコグニションが求められている背景
現代の日本では労働人口が減少しており、人手不足という大きな課題に直面しています。そんな状況下である企業の課題は、長期にわたって働き続けてもらい、一人ひとりの生産性を上げることです。
そのような課題がある仲、離職理由で多く挙げられるのが「職場関係が悪い」という理由があります。そこでレコグニションを行い、社内のコミュニケーションを活発化させること離職率を下げ、モチベーションを維持してもらうことを目的として、レコグニションを導入する企業が増加してきました。
レコグニションのメリット
・従業員エンゲージメントを高める
従業員エンゲージメントとは、自社に対する貢献度や愛着心を示すビジネス用語です。一般的には昇給や昇格など金銭的報酬を与えることだと考えられますが、愛社精神を維持するには一時的でしかなく、会社への帰属意識を高めることがモチベーションを上げる最大の要因と考えられています。
上司から能力を認められたり、同僚や部下と切磋琢磨しあってやりがいや面白さを感じることができるでしょう。レコグニションを取り入れることで、低コストで安定したエンゲージメント向上を図ることができるのです。
・離職率を下げる
上述したとおり、レコグニションは従業員エンゲージメントを向上させるメリットがあります。自社に対して高い愛社精神を持ち続けることができれば、転職への意識が向かずに定着しようという気持ちが自然と高まってくるでしょう。
・ポジティブな雰囲気作りに役立つ
互いに成果や功績を称賛し合うことは、同時に他人の行動に関心を持ったり、縦や横のつながりが増えていくことにも繋がります。また、他人の努力や成果を素直に称賛できる人が増えることで、職場の雰囲気が明るくなり、従業員が働きやすい環境へと変化していくでしょう。
・従業員の生産性向上
レコグニションを導入することにより、自分の良い点や他人が評価されている点を目の当たりにします。そのため、良いと評価された点は継続して維持しようと考え、他人の良い点を取り入れようと努力する傾向にあるため、従業員一人ひとりのパフォーマンス最大化が期待できます。
レコグニションの導入方法とポイント
レコグニションの導入はそれほど難しいものではありませんが、最適なレコグニションを構築するには下記のステップを順番にチェックしていきましょう。
1.対象範囲を明確にする
会社規模に関わらずさまざまな企業がレコグニションを導入していますが、正社員にのみに適用する制度を導入する傾向があります。アルバイトや契約社員などの非正規社員も対象にすることで、全社員が納得し、”組織の一員として認められている”という安心感をもたせることができるでしょう。属性問わず人間関係を構築させていくには、全社員を表岡対象にすることをおすすめします。
2.レコグニションの運用ルールを決める
レコグニションを行うには、だれが称賛するのか、どのように称賛するのかなどの運用ルールを決める必要があります。下記の要素を軸に考えるとスムーズに決定できるでしょう。
・レコグニションを与える人物または組織
・レコグニションを与えられる人物
・レコグニションを与える規準
・レコグニションを与える場所または方法
・レコグニションを与えるタイミング
対象は正社員のみなのか全社員が対象なのか、SNSを活用するのか直接サンクスカードを渡し合うのかなど、要素次第でさまざまな効果やシチュエーションを生み出すことができます。
3.従業員に周知する
ルールが整ったら、レコグニションを行うことを従業員に周知します。レコグニションを行うことでどのようなメリットがあるか、どのような方法で実施するのかなどを、説明会や資料を配布するなどしてしっかりと理解してもらいましょう。
4.効果検証とフィードバックを行う
新しい制度を導入した際には、効果を確認して改善点を見出すことが大切です。レコグニションの制度が最適であるかどうか、現場でのコミュニケーション量が改善されたかどうかなど様々な視点で振り返ります。ここでは従業員視点で評価することが重要なため、匿名でレコグニションに関するアンケートを実施するのもよいでしょう。
レコグニションを導入している企業例
・株式会社オリエンタルランド
東京ディズニーリゾートを運営しているオリエンタルランドでは、「ファイブスター・プログラム」と呼ばれるレコグニション制度を実施しています。
ゲスト(来場者)に対しておもてなしを提供するための行動・判断基準がまとめられた「The Four Keys~4つの鍵~」に従ってるキャスト(従業員)に対して、上司からファイブスターカードが渡されます。このファイブスターカードを5枚集めると、ファイブスターパーティーという招待制のパーティーに参加することができるのです。
キャストの従業員モチベーションを高めるだけでなく、ゲストの満足度を向上させる評価内容のため、顧客満足度を高める良い好循環をもたらすことができます。
・GMOインターネット株式会社
多様なメディアサービスを提供するGMOでは、従業員同士の称賛を報酬へと連結させる「ピアボーナス」というレコグニション制度を導入しました。これらは従業員に社内アンケートをとったところ、導入の要望があり実現化されたそうです。
導入の結果、これまで縁の下の力持ちであった従業員がスポットライトに当たるようになったり、従業員同士の相互理解が深まったという結果がでています。普段コミュニケーションを取る機会がない従業員同士や、感謝の気持ちを伝えるのが難しい従業員にとって、お互いの理解を深めるよい機会となったでしょう。
運用コストが低くメリットが大きい制度
レコグニションの導入は、内容によっては金銭的コストをかけずに実施することができ、社内の文化や雰囲気を変化させるためにも大きく貢献するでしょう。慢性的な人手不足が続いているビジネス市場では、今後ますますレコグニションが注目されるのではないでしょうか。