「プレゼンティーズム」とは?企業にもたらす影響や具体例をご紹介
働き方改革が進む中、「プレゼンティーズム」という言葉を耳にするかたも多いのではないでしょうか?企業が持続的に成長していく上で、ぞんざいにはできない課題のひとつです。今回は「プレゼンティーズム」がどのようなものか、具体的な施策や企業に与える影響などをご紹介していきます。
目次
プレゼンティーズムとは
「プレゼンティズム(presenteeism)」とは、心身の不調を抱えていながら業務を行っている状態のことを指します。
例えば、頭痛やうつなどの問題を抱えているなか、無理をして仕事を行うことをプレゼンティーズムと言います。この状態のまま業務を行うと、生産性が下がったり、ケアレスミスが起きてしまったり、終いには大きなトラブルを招く恐れがあります。
上記の状況を指す「プレゼンティーイズム」をそのままにしておくと、「アブセンティーイズム」につながってしまう可能性も十分あるでしょう。
「アブセンティーイズム(absenteeism)」とは、体調不良による遅刻や早退、欠勤や長期休職など、業務が行えない状態を指します。 欠員がでてしまうとチームや組織全体のパフォーマンスが下がる原因となるため、企業において大きな損失が生まれるのです。
プレゼンティーズムの原因
私たち日本人は労働時間外にも働き、勤勉が美徳であるとされていました。働き方改革が進められている一方で、体調が不調でも休まずに働く人はまだまだいます。しかしこれらの認識を改善しない限り、プレゼンティーズムを避けることができません。
アメリカの調査によると、下記の10項目がプレゼンティーズムによる生産性低下につながると公言しています。
1. アレルギー
2. 関節炎
3. 喘息
4. 首や腰の痛み
5. 呼吸系の疾患
6. うつ
7. 糖尿病
8. 偏頭痛
9. 循環器系疾患
10. 胃腸の疾患
これらの症状が少しでも発生したときに、”プレゼンティーズムが起きている状態”とみなしているのです。しかしなによりも症状が起きる前に事前に防ぐこと重要です。10項目の症状が起きる要因としては次のようなことが挙げられるでしょう。
・睡眠不足
・運動不足
・食生活の乱れ
・生活習慣の乱れ
・ストレス(疲労)蓄積
企業がこれらの症状を予防するには、労働時間の見直しや食堂メニューの見直し、定期的に従業員のストレスチェックを行うなど、健康経営への取り組みを行うことが必要です。
プレゼンティーズムが会社に与える影響
従業員の体調不良は、目に見えづらく、客観的に尺度を測るのが非常にむずかしいです。軽度の体調不良であれば、一時的な休息を設けたり、病院で診療するなどの対応で問題ありませんが、長期間体調が改善しない状態や精神的に不安定な場合においては、症状を悪化させる可能性もあるのです。
このプレゼンティーズムが長引けば長引くほど、業務上のパフォーマンスが低い状態を持続させることとなってしまい、チームや組織に影響を及ぼします。また、退職してしまった場合、重要なリソースを失うこととなってしまうため、企業は深刻な事態になる前に対策を行うことが大切です。
プレゼンティーズムを改善するメリット
従業員が健康な状態で業務を行う環境を整えれば、個人のパフォーマンスや労働意欲がアップするほか、”健康経営をしている企業”として企業イメージの向上も期待できます。
1. プレゼンティーズムを解消するために対策を講じる
↓
2. 従業員のパフォーマンスが向上し、業績がアップ
↓
3. より質の高い健康経営の実現化
これらのサイクルを循環させることにより、従業員だけでなく企業にも大きなメリットをもたらしますでしょう。
プレゼンティーズムの対策
・従業員同士でサポートし合う
まずは従業員同士がコミュニケーションを取りやすいような環境づくりから始めます。顔色が悪い人や遅刻が増えてきている人など、プレゼンティーズムを感じさせるような変化に気づいたら、互いに声を掛け合い、業務を手伝ってあげるなどして、少しでも心身の負担を減らせるようサポートし合いましょう。”体調が悪いときには仲間に頼ってもいい”という文化を作ることが大切です。
・定期的にアンケートを行う
上司や同僚に直接相談しづらい場合や、従業員の率直な意見を回収したいときは、匿名でアンケートを行うことで現状の課題や改善策を把握することができます。従業員の心身状況は、日によってさまざまなため、3ヶ月〜半年に1回程度など定期的に行いましょう。あまりにも頻度が多いと、回答する従業員の負担になったり、惰性で回答されてしまう恐れがあるので注意してください。費用対効果の良い対策は早々に取り入れ、決定事項を従業員に周知しましょう。
・定期的な健康診断の実施
会社が従業員の健康を把握できるようにするために、定期的に健康診断を受診できる環境を整えましょう。従業員の身体に関する情報を得られるだけでなく、求人サイト等で”健康診断の実施”を記載することにより、企業イメージもアップします。
健康経営を実施している企業と例
・アマゾンジャパン
総合オンラインストアとして広く知られている「アマゾン」は、『Work Hard, Have Fun, Make History』という社風のもと、楽しみながら働くことをモットーとしています。
社内には従業員の意見を回収するファシリティ部門も設置されており、従業員の声を活かし、良いオフィス作りに努めています。具体的な例として、気分転換や体を動かすことを目的とした”ボルダリングウォール”の設置や、できる限り化学調味料等が少ない食材を使用した栄養バランスの良いメニューを提供するなど、従業員の生活習慣改善に寄与していることがわかります。
・ローソン
大手コンビニの一つである「ローソン」では、従業員に対してのみ「ローソンヘルスケアポイント」という制度を導入しています。健康診断結果が生活習慣病リスクに該当していない場合にポイントがもらえたり、生活習慣を振り返る内容のアンケートに回答するとポイントが付与されるなど、自分の体と向き合うことで、目に見えるメリットがあります。もちろんこのポイントは一般のPontaカードと同じく、1ポイント=1円で使用することができます。
・DeNA
インターネット企業「DeNA」では、従業員の健康をサポートするための専門部署”CHO室”という部署を設けています。全従業員を対象に、”食事”・”運動”・”睡眠”・”メンタル”のカテゴリで半年に1回アンケートを実施し、従業員の健康管理を細かくチェックしています。
また、DeNAは、経済産業省と東京証券所が共同で選定する『健康経営銘柄2020』に2年連続で選定されており、”健康が当たり前の社会”の実現を目指しています。
働きやすいオフィス作りを
労働人口が減少している日本において、プレゼンティーズムへの対策を行うことは、企業が成長していく上で欠かせない施策です。従業員一人ひとりがやりがいを感じて最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、従業員の声をもとに、働きやすいオフィス環境への実現を目指しましょう。