ダイバーシティ&インクルージョンとは?ダイバーシティとの違いや取り組む際のポイントも
ダイバーシティ&インクルージョンという言葉をご存知でしょうか?本記事では、急激に変化する時代に求められる「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方や、推進するメリット、企業での取り組み方法をご紹介します。
目次
ダイバーシティ&インクルージョンとは
ダイバーシティ(diversity)は「多様性」、という意味で個々や集団の中の様々な違いを表す言葉です。ダイバーシティには、表面上で見えやすい、性別、年齢、障がい、国籍などの表層的ダイバーシティや、一見わかりにくい性格、考え方、宗教などの深層的ダイバーシティという分類があります。
インクルージョンは(inclusion)「受容」という意味です。ビジネスの場においては、多様な人材の特性が十分に活かされて企業活動が行われている状態のことをいいます。
この2つを掛け合わせたダイバーシティ&インクルージョンとは、表層的ダイバーシティや、深層的ダイバーシティにかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合い、良い点を活かすという考え方です。
企業にとってダイバーシティ&インクルージョンを取り入れ、推進することは、市場環境の変化へのキャッチアップや、優秀な人材の定着のために重要な課題となってきています。しかし関心が高まりつつある一方、当事者の直面する困難は周囲には見えにくいため、取り組みが進んでいない企業も多数存在するのが現状です。
厚生労働省では、2020年5月に性的指向・性自認に関する取り組み事例集「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~」を作成し、普及を行なっています。事例集では、企業が職場における性的マイノリティに取り組む意義や企業で実施している取り組みのポイント、実際の企業の実例を紹介しています。
参考:職場におけるダイバーシティ推進事業について|厚生労働省
ダイバーシティ&インクルージョンが求められる背景
少子化による労働人口の減少
少子化による労働人口の減少により、多くの企業が人手不足に陥っています。育児や介護といった時間の制約がある人、外国人、何らかの支援が必要な障がいのある人、再雇用で働きたいシニア世代など、今までの条件を見直した人材募集を行うことで、企業はより多くの採用チャンスを得ることができます。
グローバル化による市場環境や顧客ニーズの変化
グローバル化による急激な環境変化が訪れていることにより、異なるバックグラウンドを持った多様な人材が知識・アイディアを持ち寄ることにより、イノベーションが生まれることが期待されています。これまでになかった価値創造を行うためにダイバーシティ インクルージョンが注目されています。
労働者の働き方や価値観の変化
ライフスタイルの変化や感染症対策によるリモートワークの推進など、従来の画一的な働き方ではなく、多様な働き方を求める労働者が増えています。こういった労働者のニーズを捉えた、多様な雇用形態や制度を整えることが企業には求められています。
ダイバーシティ&インクルージョンのメリット
優秀な人材の確保
例えば、フルタイムで働く正社員といったこれまでの採用基準を見直し、間口を広げた人材募集を行うことでより多くの求職者と出会うことができ、結果としてより優秀な人材を獲得することが可能になります。
従業員の満足度が高まる
多様な人材を生かす雇用形態や制度を設けることで、誰もがライフステージ変化などの変化が生じても安心して働き続けることができ、従業員の会社への満足度が高まります。また、従業員それぞれが持っている特性を受け入れる土壌があることで、心身ともに充実した気持ちでいきいきと働くことができます。
労働力の確保
パートタイムや時短勤務、リモートワークといった柔軟な働き方を推進することで、より多くの方が自社に携わる可能性を増やすことができます。多様な働き方の実現により、不足している労働力を確保しやすくなります。
イノベーションの創出
同一の性質を持った人材ばかりでは同じようなアイディアが生まれがちです。バックグラウンドや性質の異なる多様な人材が集まることによって、新しいイノベーションを創出することが可能になります。
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み方
1.目標、行動方針の策定
自社が何のためにダイバーシティ&インクルージョンを推進するのか、どのように推進していくのかという目標を策定します。
例えば、女性リーダー比率を◯%に増加させる、障がい者雇用率を◯%に増加させるといった数値目標や、ダイバーシティ&インクルージョンに関する従業員満足度を◯%に引き上げるといった目標が考えられます。
2.環境の整備、施策立案
策定した目標を達成するために、どのような取り組みを行うか施策を考えていきます。セミナーやイベントの実施といった行動面での施策や、既存の人事制度や福利厚生の見直しといった制度面での施策が考えられます。
3.取り組みの周知、理解の促進
2で立案した施策を活用してもらうために、定期的な周知・理解促進を行います。その際、何のために行うのか、どのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、従業員にとって自分ごととして捉えられる理解の促進を目指します。
4.効果測定、改善の実施
四半期や年度ごとに、目標に対しての効果測定を行なっていきます。数値目標に対しての実績を出すだけでなく、従業員へのヒアリングやアンケートなどを行い、全社を巻き込んでいくことが重要になります。
ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業例
富士通
富士通では、2008年にダイバーシティ推進室を設置し、社長およびダイバーシティ担当役員の下、富士通グループのダイバーシティ インクルージョンの推進を行っています。女性社員向けキャリアワークショップの実施や、社員向けのダイバーシティー推進セミナーの開催といった取り組みを行なっています。
リクルート
リクルートでは、女性向けのキャリア研修、柔軟な働き方のための支援制度の構築やイベントの実施といった取り組みを行なっています。また、マネジメント層向けにVRを活用した体験型のダイバーシティ&インクルージョン研修を取り入れるといった先進的な取り組みを行なっています。
日立
日立では、多様な人財の活躍支援やワーク・ライフ・マネジメントなどダイバーシティの取り組みを推進するため「ダイバーシティ推進センター」を設置し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
女性のキャリア支援に関するセミナーの実施や、ダイバーシティ・ワークショップの実施、「WLI (ワーク・ライフ・イノベーション) 推進月間」の提案などの働き方の見直しなどの取り組みを行なっています。
ダイバーシティ&インクルージョンの課題
多様な人材をマネジメントする能力が必要
これまで似たような属性の人々が集まっていた組織がダイバーシティ&インクルージョンを推進する場合、マネジメントの課題が発生します。マネジメント層はダイバーシティ&インクルージョンの基礎知識や、異なる意見を生かしながらまとめていくスキルなど、より高次元なマネジメント能力が求められます。
より多くのコミュニケーションが求められる
異なるバックグラウンドを持つ多様な人材が集まることで、「当たり前の共通認識」がないため、より多くのコミュニケーションが必要になります。従業員一人ひとりがその認識を持ち、丁寧なコミュニケーションを行なっていくことが重要になります。
長期的な改善が必要であることの理解
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みはすぐに成果が出るものではありません。これまで画一的な組織であった場合には、従業員に一時的にストレスが発生する可能性があります。何のためにダイバーシティ&インクルージョンを推進するのかという意義を理解してもらい、長期的に推進していく必要があります。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、変化に強い組織へ
本記事では、「ダイバーシティ&インクルージョン」の意味や、推進するメリット、企業での取り組み方法や今後の課題について解説しました。ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みは、すぐに成果が出やすいものではありませんが、組織が市場環境の変化にキャッチアップするために重要な課題となってきます。これからダイバーシティ&インクルージョンの推進を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。