嘱託社員の特徴は?メリットや待遇、契約社員との違いを解説!
嘱託社員とは、非正規雇用の一種で主に定年退職した人材を再雇用する際に用いられる制度のことです。この記事では、嘱託社員の採用による企業や雇用者が得られるメリットや、採用後の待遇についてご紹介。雇用形態が似ていることから間違われやすい、契約社員との違いについても一緒に解説します。
目次
嘱託社員とは
嘱託社員とは非正規雇用の一種。一般的には定年退職した社員に対し有期契約を結び、再び働いてもらうことを指します。
技術やスキルのある人材に定年退職後も活躍してもらうために用いられる雇用制度です。医師や弁護士など専門的な知識を有する職種では、定年後でなくてもこの雇用方法が利用されます。
契約社員との違い
契約に期限のある契約社員と似ていますが、基本的にはフルタイムで労働する契約社員に対し、嘱託社員は週の労働日数や時間を制限した契約を結んでいる場合が多いのが特徴。ただ基本的な雇用形態は似ているため、嘱託社員を契約社員の一種として考える企業もあるようです。
派遣社員も契約期間が決まっている非正規雇用の一種ですが、派遣社員は会社との雇用関係がないという点が異なります。
嘱託社員を雇用する企業側のメリット
嘱託社員の雇用は企業側と労働者側、どちらもメリットを得ることができます。まずは、企業側のメリットをご紹介します。
1. 人材採用のコストが抑えられる
新しい人材を採用する場合、求人の募集や選考には多くのコストがかかってしまいます。すでに勤務経験のある人を嘱託社員として採用すれば、採用にかかるコストや時間の削減ができるでしょう。
また嘱託社員の場合、労働時間を自由にコントロールできるので、フルタイムで勤務する正社員や契約社員と比べ、人件費を抑えることも期待できます。
2. 即戦力として活躍してもらえる
スキルや知識があっても、新規で採用した人が会社や業務の進め方に慣れるまでには時間がかかってしまいます。その点、嘱託社員は会社の方針や業務の進め方を把握している人が多いので、即戦力として活躍してくれるでしょう。
既存社員との信頼関係ができている点も、スムーズに業務を行ううえでの重要なポイントです。
嘱託社員として働く労働者側のメリット
1. 定年後も収入を得られる
正社員の頃よりは収入額が減ってしまう場合もありますが、嘱託社員として働ければ、定年後でも当然収入を得ることができます。60歳以上であれば同時に年金の受給も可能ですが、収入額によっては年金の一部や全額が支給停止になる場合があるので、注意が必要です。
2. 働き慣れた環境で活躍することができる
生涯現役で過ごしたいという人が増えている現代では、定年後も自分のスキルを活かしたいと考える人が多くいます。
働き慣れた環境であれば、すでに従業員との関係性が深まっていたり業務のフローを理解しているので、時短勤務であったとしてもスキルを発揮することができるでしょう。
3. 体調や状況によって労働時間を調整できる
まだまだ現役!と思っている人でも、やはり定年後は病気やケガなどのリスクが高まるのが現実。嘱託社員は、勤務日数や時間を自由にコントロールできるので、無理のない範囲で働くことができる点も大きなメリットです。
嘱託社員を雇用する際に注意する点
嘱託社員の雇用は、雇用主と雇用者の双方にメリットがありましたが、注意しなければいけない点もあります。実際に雇用する際に覚えておきたい注意点をご紹介します。
1. 契約終了後の再契約には更新手続きが必要
嘱託社員は有期雇用なので、契約を継続する場合は更新の手続きを行わなければいけません。契約期間が終了に近づいたら双方の契約内容の見直しや書類作成など、事務的な作業を行う時間を設ける必要があるでしょう。
2. 雇用方法の変更で働きにくくなる可能性もある
嘱託社員の場合、正社員時代に何らかの役職に就いていた可能性も少なくありません。定年退職後、かつ時間が制限される非正規雇用の場合、役職に就くのは難しくなるので、今まで上司と部下だった関係が逆の立場になることもあります。
元部下に指示されることに不満を持ったり、元上司へ意見を言うことに抵抗を感じてしまう社員へのサポートを行うことも重要なポイントです。
3. 契約終了にはルールが定められている
嘱託社員のような有期契約であっても、やむを得ない理由がある場合以外は契約期間中の解雇は禁止されています。
また3回以上の更新があったり、継続勤務が1年を超えている人の契約を終了する際は、30日前までに予告しなければいけません。
さらにこれまでの契約状況などを考慮し、雇用の継続が合理的と考えられる場合も自動的な契約終了は認められないので、30日前までに解雇理由を明確に伝えておく必要があります。
嘱託社員の待遇や福利厚生について
嘱託社員は、非正規雇用の一種なので正社員の頃とは待遇や福利厚生が変更になる場合があります。ここでは、給与と賞与や社会保険についてを解説します。
給与と賞与
嘱託社員への給与や賞与に関して、法律で決まっていることはありません。そのため具体的な金額などは、双方の合意に基づいた内容で契約が進められます。
ただし業務時間が短くなることが多いので、正社員のときよりも減ってしまう場合がほとんどと言ってもいいでしょう。
社会保険
・1ヶ月の所定労働日数が15日以上
・1週間の所定労働時間が30時間以上
上記の条件を満たしている嘱託社員は、一般被保険者になるので、正社員と同じ社会保険への加入が必要です。雇用者が65歳以上の場合は、高年齢被保険者、4ヶ月以内の有期雇用や1週間の労働時間が30時間未満の場合は、短期雇用特例被保険者へ分類されます。
有給休暇
定年退職した社員を嘱託社員として引き続き雇用する場合、勤続年数は通算となるので、年次有給休暇は退職前の勤続年数を含めた日数を付与することになります。また、雇用者には退職前の残っている有給休暇を使用する権利もあたえられます。
期間を定めない契約に変更できる無期転換ルール
無期転換ルールとは、有期労働契約が5年を超えて更新された労働者からの申し出があった場合、無期雇用への転換ができる制度のことです。
有期労働契約者の雇用を安定させるため、平成25年(2013年)4月1日に改正労働契約法として施行されました。企業は労働者からの申し出があった場合、これを拒否することはできません。長期的な社員育成を行えたり、企業の実務に精通するスキルを持つ人材が獲得しやすくなるメリットなども得られるので、制度について正しく理解し、活用していくことが大切です。
無期転換ルールの条件・期間
契約期間に定めのある場合はすべて「無期転換ルール」の対象となります。派遣社員は、派遣先ではなく派遣元の企業に無期転換ルールが適用されます。
【申請権の発生期間】
契約期間が1年の場合→5回目の更新後、次の更新までの1年間
契約期間が3年の場合→1回目の更新後、次の更新までの3年間
嘱託社員は双方にメリットのある働き方!
嘱託社員は、優秀な人材にまだまだ活躍してもらいたいという企業側と定年後も安定的に働きたいと考える雇用者、どちらにもメリットのある働き方と言えます。法律的に雇用形態が定められているわけではないので、労働時間や期間を調整できる点も嬉しいポイント。導入の際の注意点を考慮すれば、企業の成長にも役立つでしょう。