サーベイとは?リサーチとの違いやメリット、注意点など詳しく解説
自社に対しての従業員の考えや、顧客からの評価や思考を知るために行う「サーベイ」。現在日本でもさまざまな企業で活用されている調査手法で、正しく活用することで大きなメリットが得られます。今回はサーベイとはいったいどのようなものなのか、リサーチとの違いや実施する際の注意点などを詳しくご紹介します。
目次
サーベイとは
サーベイ(survey)とは、実態の全体像を把握するために広い対象で行う調査のことを指します。
サーベイは、ユーザーの行動や思考を調査するマーケティング視点で活用されることが一般的です。また、従業員が業務や職場環境など自社に関する意見を回収するために活用されることもあり、求める情報によって調査対象が異なります。
サーベイを行う目的
サーベイとは何かがわかったところで、どのような目的でサーベイを実施するのでしょうか?
主な目的は2つあります。
1. 従業員が自社に対して抱く課題を把握するため
サーベイによって、従業員の会社に対する理想と現実とのギャップをその時々で確認することができます。従業員の生の声を会社の課題特定に繋げることが可能になります。
2. 企業の現状を正確に把握し、組織の課題を特定するため
企業の現状を数値データとして把握することに加え、売上や利益率などの数値データでは把握できない人材不足・人間関係・離職率などの問題点の発見にもサーベイは役立ちます。サーベイをうまく活用することで、組織としてのより正確な現状把握と課題特定に繋がります。
サーベイの種類
組織内でよく使われるサーベイには種類があります。組織や個人の状態を正確に把握するため、サーベイの種類についても把握しておきましょう。
従業員サーベイ
従業員サーベイは、自社に対してどの程度満足しているのかどうか、職場環境や人間関係に不満がないかなど、組織をより良いものに改善するために従業員向けに調査を行うことです。これらを行うことにより、問題点を見いだし、改善のために対策を講じることができるため、従業員の満足度向上や離職率の低下が期待できるでしょう。
パルスサーベイ
パルスサーベイは、高い頻度で従業員に回答してもらう満足度調査のことです。一般的には1〜5分で回答できる簡単な内容で、週に1回から月に1回程度で行います。現状起きている問題点をリアルタイムで把握することができるのが特徴です。
モラールサーベイ
モラールサーベイとは、その名の通り従業員のモラールを測定することを目的としたサーベイです。モラールとは、「士気・意欲」などと訳され、組織として目的を達成する意欲や態度のことを指します。従業員のモラールが、どのような状態で、パフォーマンスのどの要素に影響を及ぼしているかという事実情報を集めるために使われます。
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、企業と従業員の結びつきを強化することを目的に、課題を可視化するための調査です。職場環境に対する考えを具体的に把握できるため、従業員が働きやすい環境づくりに役立てることができます。近年雇用形態が大きく変動しているため、離職防止の取り組みとして浸透してきました。
エンゲージメントサーベイは、先述した従業員サーベイと類似していますが、従業員サーベイは主に労働環境や福利厚生など”組織が提供するもの”に関する満足度を図る調査を指します。一方エンゲージメントサーベイは、”従業員が自ら組織に貢献する心理”を高めるための調査のこと。これらは、目的や従業員から集めたい回答に合わせて、サーベイの種類を使い分けます。
コンプライアンス意識調査
コンプライアンス意識調査では、社会や職場のコンプライアンスに関する従業員の意識を調べます。エンゲージメントサーベイなどで使われる心理的安全性指標などと併用することで、コンプライアンスリスクの高い組織を早期に発見し、解決を試みることで、コンプライアンス関係のリスクを予防する効果があります。
ストレスチェック
ストレスチェックとは、従業員が抱えるストレスについて点検する調査です。従業員の状態を把握し、ストレスに関して組織単位で分析を行います。ストレスチェックは、2015年12月から50人以上の労働者を抱える職場で毎年1回の実施が義務化されました。
サーベイとリサーチの違いについて
「サーベイ(survey)」とよく似た言葉として挙げられるのが「リサーチ(research)」です。
リサーチは、調査する対象や目的が明瞭で、より細かく物ごとを調査していくときに使われる言葉です。一方サーベイは、対象や目的を明瞭化させるために広範囲を対象に調査を行い、全体像を把握することが目的とされています。そのため、リサーチとサーベイは調査対象の規模に応じて使い分けられます。
サーベイを実行してから活用するまでの流れ
サーベイは有料のツールだけでなく無料で調査できるツールもあるため、調査したい内容に合わせてツールを選択するのがおすすめです。どのツールを使用するかどうかを選んだら、以下のステップで進めていきましょう。
1.現状の課題を知るためにサーベイツールを使って調査をする。
2.調査結果を基に、課題を把握する。
3.課題への解決策を講じて、実行に移す。
4.再びサーベイツールを使って調査し、効果を検証する。
サーベイは調査結果を収集して終わるだけでは、サーベイ本来の目的を果たせません。課題を見つけてプランを実行したあとに再び効果検証をしてPDCAサイクルを回していくことが大切です。
サーベイとアンケートの違いについて
また、アンケートとの違いはどのようなものなのでしょうか。
アンケートとは、同じ質問を多くの人に投げかけて回答を求める調査方法のことを指します。アンケートは調査をするためのツールという位置付けになります。
一方で、サーベイは調査の全体を表す概念を指します。サーベイを行う観点でいえば、アンケートはサーベイのために用いる1ツールとなります。
以下はサーベイとアンケートの言葉が示す範囲を図解したものです。
こうしてみると、2つの言葉が表す意味の違いは明らかですね。
(参照サイト:https://dev.classmethod.jp/articles/diff-of-survey-and-questionnaire/)
サーベイを行うメリット
回答者の思考をデータ化できる
サーベイを行うことにより、対象者の考えがデータとして可視化できることです。今まで良かれと思っていた対策が実は対象者に受け入れられていなかったり、今まで抱えていた不満などを知ることができるため、企業が解決すべき課題が見つけやすくなります。
次回の施策に活かせる
一度回収したデータは、次回の対策を行う上での判断材料やエビデンスとして活用ができます。例えば、データと一緒に「従業員の8割がこういう考えをしているので、この施策を進めたい」と経営陣に提出することで、理解が得やすくなるでしょう。
トラブルを予防できる
社内でサーベイを行う場合、サーベイの設計次第で未然にトラブルを防ぐことができます。職場では、パワハラやセクハラなどは相談しずらいため、問題が浮き彫りになったときには手遅れな可能性があります。匿名でアンケートを設け、現状の悩みを引き出せるような設計を行い、火種を見つけて組織全体で改善を進めていきましょう。
サーベイを行うデメリットと実施のポイント
先ほど紹介した多くのメリットから、サーベイを実施することで多くの効果が期待できることがわかりました。しかし、実はサーベイ実施にはデメリットも伴います。考えられるデメリットを紹介した上で、サーベイを行う際にどんなことに気をつけるべきかを考えていきましょう!
従業員に負担がかかる
サーベイの実施が従業員にとっての負担となってしまうおそれがあります。サーベイの実施をしっかりと行うには、全従業員からアンケートに回答してもらうことが重要です。
しかし、従業員は常に各々の業務を抱えている状態です。そのような中で、サーベイのために時間を作らなければならないとなると、忙しい社員にとっては回答が難しいでしょう。現場の負担を下げられるような、答えやすい設問設定などの工夫が必要です。
従業員からの不満や反発
サーベイを行うことで従業員から不満や反発の声があがる可能性があります。ただでさえ忙しい中、わざわざサーベイに時間をかけることは従業員にとって負荷がかかります。実施によってメリットがあるのか、実施の意図は何なのかといったところがうまく伝わっていないと、回答の必要性を感じてもらえず、回答してもらえない、いい加減な回答を提出されるといった事態に繋がりかねません。サーベイの実施の際には、その目的や効果を事前に共有しておくことが大切です。
また、サーベイの実施の仕方や活用の仕方が不適切だと思われた場合も、不信感を抱かれてしまう可能性があります。結果が完全非公開になっている、サーベイが社内改善にどう繋がったかが見えないといった要素も従業員のサーベイ回答に対するモチベーションの低下に繋がります。
サーベイ実施に当たっては、誠実に従業員の声を汲み上げ反映させていくという姿勢をあらゆる段階で示していくように心がけましょう。
サーベイを行う際の注意点
回答者の負担にならない質問設計の作成
自身の時間を割いて回答することになるため、質問は回答者の気持ちになって設計することが大切です。回答は記述式ではなくできるだけ選択式に、回答時間は数分で済ませられるようにするなど、本当に聞きたい内容だけを厳選しましょう。
また、高頻度で回答してもらうパルスサーベイの場合、質問内容が重複したり、従業員に回答する意味を見出してもらえなくなると、惰性で回答されてしまう場合があります。質問の重複を防いで無駄を省いたり、サーベイの実施目的を従業員に共有するなど、モチベーションを維持できるよう工夫することが大切です。
匿名で回答できるようにする
サーベイは、嘘偽りのない率直な意見を集めることが目的です。そのため、質問内容によっては匿名で回答してもらい、周りの雰囲気に左右されず安心して回答できるような環境を作ってあげることが大切です。特に社内でサーベイを行う際に注意したいポイントといえるでしょう。
結果を社員に共有する
社内でサーベイを行う際、結果が開示されなかったり、課題に対する解決策が行われていることを感じられなければ、従業員から不信感を抱かせてしまう場合があります。そのため、結果を報告し、従業員の意見をしっかりと受け止めたという意思を従業員に伝えることが大切です。
また、課題が解決されれば、従業員の満足度があがったり、離職率の低下にもつながるでしょう。
サーベイを行うごとに目的を明確化する
サーベイを繰り返し実施していると、実施する行為が目的となってしまうことがあり、本来サーベイで得られる情報や回答を集められないケースがあります。
対象者に回答してもらう意味や実施する目的を毎回明確にし、その目的に合った質問設計をすることが重要です。
サーベイを導入してから活用するまでの流れ
サーベイは有料のツールだけでなく無料で調査できるツールもあるため、調査したい内容に合わせてツールを選択するのがおすすめです。どのツールを使用するかどうかを選んだら、以下のステップで進めていきましょう。
1.現状の課題を知るためにサーベイツールを使って調査をする。
2.調査結果を基に、課題を把握する。
3.課題への解決策を講じて、実行に移す。
4.再びサーベイツールを使って調査し、効果を検証する。
サーベイを導入してから活用するまでの具体的なフローについては以下を参考に進めてみましょう。
サーベイは調査結果を収集して終わるだけでは、サーベイ本来の目的を果たせません。課題を見つけてプランを実行したあとに再び効果検証をしてPDCAサイクルを回していくことが大切です。
1. 組織の課題を分析する
組織の課題は定量的なものだけとは限りません。定量分析・定性分析を組み合わせながら、多面的に組織の課題を捉えましょう。
2. 仮説を設定する
組織課題についての分析結果が出たら、課題の原因について自社の状況を踏まえて仮説を設定しましょう。
3. 調査項目を決める
仮説が正しいか確認する項目と、改善する方向性を確認する改善項目に分け、項目を設定します。
4. サーベイの実施方法を検討し、実施する
サーベイの頻度や手法について、どのような方法が有効かを検討します。サーベイの実施方法が確定したら、実際に従業員に対してサーベイを行いましょう。
5. サーベイ結果の分析を行う
サーベイの結果を踏まえて、分析を行います。事前に立てた仮説が正しかった場合は、改善項目から従業員のニーズを捉え、そこから施策を検討しましょう。仮説が正しくなかった場合、新たな仮説を立て直し、次回のサーベイで検証し、サイクルを回していきます。
6. 従業員に対してフィードバックを行う
サーベイの結果を従業員に対してフィードバックします。フィードバックは、サーベイを今後継続的に行っていくためにも、サーベイの結果行うことになる施策を実施する際にも重要です。従業員のサーベイ回答のモチベーションを下げないためにも、フィードバックは欠かさずに行いましょう。
サーベイツールの選び方
1. まずはサーベイの目的を明確に
ツールを選ぶ際には使いやすさの部分に目がいきがちです。しかし、いくら使いやすいツールでも、求めている成果物が手に入らないのではサーベイを実施する意味がありません。ツールを選ぶに当たって、自社がサーベイに求めているものを明確にしましょう。現状把握をわかりやすくすることなのか、課題や原因の追求、改善を図りたいのかといった内容面に関わることや、自社にツールを扱える人材がいるのか、予算などの要因についても把握しましょう。
そして、ツールを検討する際は、わかりやすさや操作のしやすさだけで飛びつくのではなく、そのツールでは何ができるのか、自社がツールに求めていることを明確にして、導入すべきか判断しましょう。
2. 体験版のお試しで比較検討する
ツールの体験版がある場合は、ぜひ体験版を試してみてください。決めうちして契約前に軽く試すのではなく、複数のツールを試して比較することでより自社に合うツールを見つけるヒントになります。
3. 導入事例は自社に近いものを参考にする
導入事例の記事が見れることもあり、ツールがどのように活用されるのかという点で参考になります。しかし、自社とはあまりに規模や文化が違う会社の事例だと、いくらすごい成果を残していても自社に合うとは限りません。ツール選定という視点で言えば、自社の状況に近い事例を見つけて参考にするのが良いでしょう。
4. シェアや人気にこだわりすぎない
高いシェアを誇るツールや人気のツールは失敗がないのではないかとつい思ってしまいますが、人気だからといって自社の環境や目的に合っているとは限りません。
シェアや人気にとらわれすぎず、自社にとってもいいツールなのかというところを必ず確認するようにしましょう。
サーベイツールの良し悪しは、導入する企業や目的によって変わってきます。良いツール・悪いツールと一般論として調べるのではなく、自社に合うツールはどれかという判断軸でツールを比較してみてください。
サーベイ開発の流れ
自社にピッタリのサーベイを行うためには、開発済みのツールを使う以外にも、自社でサーベイを開発するという選択肢があります。しかし、自社でサーベイを開発する場合、質問項目を何となく書き連ねて完成というケースが多々あります。しかし、正しく設計されていないと、回答が集まっても分析が正しい結果に繋がらない場合があります。
従業員に時間を割いて協力してもらうからには、手順をおさえて成果に繋がるサーベイ設計を心がけてみましょう。
1. 調査プランを検討する
サーベイの目的や測定する事象、対象、期間を検討する。調査目的はサーベイの最も重要なポイントとなるので、さまざまな角度からプランのチェックが欠かせません。
2. 文献の調査を行う
調査プランが決まったら、測定したい事象と類似する文献について調査し、妥当性や信頼性の高い設問項目を集めます。類似の研究が見つからない場合、研究機関と共同開発する選択肢もあります。
3. 設問案を作成する
文献から調査した設問項目を参考に、測定したい事象についての設問案を作成します。設問を作成する際は、性別や年齢のバラエティに富んだメンバーで作成するように心がけるなどして、できる限りバイアスを排除するように注意しましょう。
4. テストサーベイを実施する
十分なサンプルを対象に設問案の調査を実施し、データを取得する。社内での調査だけでなく、サーベイ会社などを活用して社外調査を行うと、より一般化したサーベイを設計することができます。
5. データクリーニングを行う
テストサーベイの結果を参考に、回答の偏る設問を省くなどして質の高い設問のみが残るように抽出します。
6. サーベイ評価基準を作成する
抽出した設問でさらに複数回テストを実施して、結果を解釈する基準を作成します。
第一歩は明瞭な課題を見いだすこと
単にサーベイを活用して回答を集めるだけでなく、課題を見つけて対策を実行したあとにさらに効果検証を続けていくことで、サーベイ本来の効果を実感することができるでしょう。企業が発展し続けていくには、明確な課題を見いだすことがはじめの一歩です。サーベイを活用して現状の課題を明らかにし、やるべきサイクルを繰り返すうちに、企業価値を磨き上げることができるでしょう。