企業がLGBTに取り組む理由とは?LGBTフレンドリー企業の事例も解説
「LGBT」という言葉をご存知でしょうか。これからの企業にとって、優秀な人材獲得や生産性向上の鍵となるLGBT施策の具体例や、先進的な取り組みを行っている企業をご紹介します。
目次
LGBTとは
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとって組み合わせた言葉で、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉の一つとして使用されます。
L:レズビアン…女性同性愛者
G:ゲイ…男性同性愛者
B:バイセクシュアル…両性愛者
T:トランスジェンダー…心と身体の性が一致しない人
性的指向と性自認
性的指向とは、どのような性別の人を好きになるか、という意味です。LGBTの「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシャル」はこの性的指向に分類されます。
性自認とは、性の自己認識、つまり自分の性をどのように認識しているのかという意味です。「心の性」と言われることもあり、「身体の性」と「心の性」が一致せず、自身の身体に違和感を持つ人たちもいます。LGBTの「トランスジェンダー」は性自認に分類されます。
性のあり方を表現する際、すべてのセクシャリティを含む概念として「SOGI」(ソジ)という言葉で表現されることもあります。SOGIは性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity )の頭文字をとった言葉で、異性愛の人なども含めたすべての人が持っている属性のことを言います。
企業がLGBTに取り組む理由とそのメリット
企業がLGBT施策に取り組む理由は社会的責任だけではありません。全ての人に働きやすい環境を作ることは企業・従業員双方にとってメリットがあります。
優秀な人材の確保・定着
少子高齢化による労働人口の減少により多くの企業が人手不足に悩んでいます。LGBTに関する施策を行うことで、より働きやすく「選ばれる企業」になることで、優秀な人材を獲得するチャンスが広がります。
また、現在働いている従業員にとっても安心して長く働くことができる要素の一つになります。
生産性の向上
性的指向や性自認にまつわる困りごとを解消することで、差別やハラスメントを防止し、安心して働くことができます。
理解されている・尊重されていると感じることで高いモチベーションを得ることができ、結果的に生産性の向上に繋がります。
企業価値の向上
LGBTへの取り組みを行うことは、従業員だけでなく取引先や投資先、消費者にとっても先進的でオープンな企業であるという印象を与えます。また、会社全体がLGBTへの理解を深めることで、LGBTフレンドリーな商品・サービスの開発といった新たな利益創出に繋げることが可能になります。
LGBTフレンドリー企業とは
LGBTフレンドリーな企業とは、従業員がLGBTをカミングアウトしている、していないに関わらず、LGBTが働きやすい職場職場づくりに取り組んでいる企業のことをいいます。日本国内ではwork with Prideという団体が、独自の指標で企業のLGBTに対する取り組みを評価し、毎年発表しています。
LGBTフレンドリー企業の取り組み
LGBTフレンドリー企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。5つの観点から企業ができる取り組みを見ていきましょう。
行動宣言
会社としての行動規範や人権方針、ダイバーシティ宣言等の中で、あるいは単独の方針としてLGBT等の性的マイノリティに関する方針を明文化し、ウェブサイトなどで社内・社外に広く公開するといった取り組みを行っています。特に、性的指向や性自認を尊重することや、差別禁止について触れていることが重要です。
当事者コミュニティや相談窓口の設置
従業員がLGBT当事者・アライ(Ally=支援者)に関わらず、性的マイノリティに関する相談ができる窓口の設置や、意見を言えるコミュニティを立ち上げるといった取り組みを行っています。その際、当事者をあぶりだすことにならないよう、無理に参加者が当事者であるか/アライであるかといった確認を行わないことが大切です。
従業員への啓発活動
従業員に対して、性的マイノリティへの理解を促進するための研修や啓発用メディア・ツールの提供、社内への情報発信などを行っています。特に、採用を担当する人事部門や多くの従業員への影響力を持つ管理職への研修はより重要視されています。
人事制度、プログラムの整備
LGBT当事者に関する人事制度やプログラムを提供しています。具体的には、同性パートナーがいる従業員やトランスジェンダーの従業員に対する取り組みが挙げられます。
同性パートナーがいる従業員にも家族手当や家族にまつわる制度を適用する
従来、結婚していたり、世帯を持っている従業員に適用していた制度を同性パートナーがいる従業員にも適用する取り組みです。例として下記のような制度が挙げられます。
・休暇・休職(結婚、出産、育児、養子縁組、家族の看護、介護等)
・支給金(慶事祝い金、弔事見舞金、出産祝い金、家族手当、家賃補助等)
・赴任(赴任手当、移転費、赴任休暇、語学学習補助等)
・その他福利厚生(社宅、ファミリーデー、家族割、保養所等)
トランスジェンダーの従業員が働きやすい制度・環境の整備
自分が希望する性で業務が行えるよう、例として下記のよう取り組みが考えられます。
・性別の扱いを本人が希望する性にする(健康診断、服装、通称など)
・性別適合手術・ホルモン治療時の就業継続サポート(休職、勤務形態への配慮など)
・ジェンダーに関わらず利用できるトイレや更衣室などのインフラ整備
社会貢献・渉外活動
LGBTへの社会の理解を促進するための社会貢献活動や渉外活動を行っています。具体的には、LGBTイベントへの協賛、主催、寄付や、社員への参加呼びかけなどが挙げられます。
LGBTフレンドリー企業の福利厚生における取り組み事例
では、実際にどのような企業がLGBTフレンドリーの取り組みを行っているいるのでしょうか。ここでは先進的なLGBTフレンドリーの福利厚生における取り組み事例をご紹介します。
KDDI
KDDIでは、2020年6月より、同性パートナーの子を、社内制度上“家族”として扱う「ファミリーシップ申請」を導入。法律上親権を持てない同性パートナーとの子についても、育児休職や子の看護休暇・出産祝い金などの社内制度の適用対象となりました。この取り組みは、先進的で顕著な取り組み事例として2020度のwork with Prideのベストプラクティスに選定されています。
また、これまでもトランスジェンダーの従業員に対してのワーキングネームの使用、健康診断の個別実施、ユニバーサルトイレの利用を推奨や、就職時のエントリーシートでの性別の記載廃止、配偶者の定義を改訂(同性パートナーも配偶者に含む)することで、配偶者に適用される全ての社内制度 (祝い金、休暇、各種手当) を同性パートナーに対しても適用するといった取り組みを行っています。
富士通
富士通では、同性パートナーについて慶弔見舞金の支給、休暇、休職などの社内制度の適用範囲の拡大を行っています。併せて、人権研修やリーフレット配付、経営幹部向け講演会、イントラネットでのメッセージ発信などにより、全社的な認知・啓発を推進しています。
また、従業員へのアライ(支援者)の輪を広げる取り組みとして、多様なLGBT当事者と一緒に話し合う「LGBT+Allyミーティング」の実施や、LGBTとアライをテーマにした映画上映会の開催を行っています。これらの取り組みにより、参加者がオフィスPCやカードケースにLGBTの尊厳を象徴するレインボーカラーのシールを貼り、自然に“アライ宣言”をする動きも出始めています。
LGBT施策で誰もがいきいきと働ける企業へ
本記事では、「LGBT」の意味や、LGBT施策の具体例、LGBTフレンドリー企業取り組みをご紹介しました。LGBT施策の実施は、当事者だけでなく全ての従業員がいきいきと働ける環境づくりに貢献することができます。自社でLGBT施策を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。