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ハインリッヒの法則とは?ヒヤリハットの事例や予防方法も解説

建設業や運送業、医療現場などで用いられることが多かった「ハインリッヒの法則」。労働災害や事故の発生についての経験則のひとつですが、最近では接客業や教育の現場など幅広い場面で使われています。この記事では、仕事の中での災害防止に欠かせないハインリッヒの法則について解説。重大事故の元になりうるヒヤリ・ハットの事例や対策も併せて紹介します。

世界中の災害防止のバイブル「ハインリッヒの法則」とは?

ハインリッヒの法則とは、1931年に保険会社の安全技師だったハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ(Herbert William Heinrich)の著書「Industrial Accident Prevention-A Sceoentific Approach」(日本では「災害防止の科学的研究」として翻訳)の中で発表した、労働災害に関する経験則のひとつです。

「1件の事故の背景には重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、その背後には事故寸前だった300件以上のヒヤリ・ハット(ヒヤッとしたりハッとしたりする危険な状況や状態)が隠れている」という考え方で、「1:29:300の法則」とも呼ばれます。

以前は、製造業や建設、運輸、医療などの、一歩間違えれば大きな事故につながる可能性がある業種で用いられていましたが、現在はオフィスワークでも広く浸透しています。

職場での事故や不祥事は偶然ではなく、何らかの予兆があるという教訓を示しており、世界的な災害防止バイブルといえるでしょう。

覚えておきたい「ドミノ理論」

ドミノ理論とは、「Aが起こればBが起こり、Bが起こればCが起こる」というような、事故は連鎖的に起こるという考え方です。ハインリッヒの法則に取り入れると、前の段階の連鎖を止めることで、その後の事故を防げると考えられるようになります。よって、日常や業務中の行動から見直すことが、大きな事故を防ぐのに重要だといえるでしょう。

ハインリッヒの法則が注目される理由

ハインリッヒの法則について、もっと知りたいという企業が増えています。その理由は以下の2つです。

企業の不祥事や事故が明るみに出やすくなった

SNSの発達により、以前よりも企業の不祥事や事故などが世間一般に広く知れ渡る可能性が増えました。また、拡散するスピードも早いため、企業存続の危機につながるリスクが以前よりも高まっています。

社員のモラルの低下

社員のモラルの低下も見られ、不祥事や事故の件数が増えていることも、注目を受ける理由のひとつです。

ハインリッヒの法則から学べること

ハインリッヒの法則は、職場や業務上での事故やトラブルを防ぐための教訓にできます。

ひとつは、ヒヤリ・ハットが起きないようにすること。2つ目は、ヒヤリ・ハットが起きるかもしれないという事象の把握と、それに対して対策を練ることの重要さです。

次の項では、業種別のヒヤリ・ハットの事例や対策方法を紹介します。

業種別ヒヤリ・ハットの事例

ヒヤリ・ハットにはどのような種類や事例があるのでしょうか。企業として、ヒヤリ・ハットの事例やどのような場面でそれが起こりやすいのかといった可能性を知り、対策を練ってみましょう。

ここでは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」で報告されている、ヒヤリ・ハットの事例を参考にお伝えします。

参照:職場のあんぜんサイト ヒヤリ・ハット事例|厚生労働省

建設業

ヒヤリ・ハットの報告事例の中で一番多いのが、建設関係の現場からです。理由は、高い場所での作業や重い資材などを使った作業が多くあるため、ヒヤリとする場面が起きやすいとされています。

事例1

屋根塗装の吹き付けのため屋根に上がり、残圧が残った吹き付けのホースが跳ねた反動で落下しそうになった事例です。

対策には、吹き付け機を完全に停止させ、ホース内の空気圧が低下するまで塗装ノズルをしっかりと握り、吹き付け作業時の体制をしっかりと維持することが挙げられています。

事例2

移動クレーンで資材を巻き上げたところ巻きすぎたため、ロープが切断され落下した資材が作業員にぶつかりそうになった事例です。

原因は、クレーンの巻過防止装置を止めた状態で行ったこと、クレーン車の運転に必要な資格を持っていない作業員が運転していたことです。対策には、巻過防止装置の電源を入れて作業すること、運転業務には有資格者に行わせることとしています。

運送業

主だった事例は、運転中のものが多いですが、荷物を降ろす際にもトラブルは付き物です。

事例1

積載したトラックで国道を走行中、路面凍結のため、反対車線にスリップしてはみ出してしまった事例です。

この事例に対する対策は書かれていませんが、雪道用のスタットレスタイヤを装着する、安全運転をするといったことを意識するということが対策として挙げられるでしょう。

事例2

トラックからの荷下ろし中に、1台のカーゴ台車が別の台車にぶつかって倒れ、横で支えていた作業員が店頭しそうになった事例です。

ぶつかってきたカーゴ台車にストッパーがかかっていなかったことが原因とされています。対策はストッパーをかけること、またストッパーをかけたか確認の作業指示を出すこととしています。

事務

建設業や運送業に比べれば、一見危険なことが少なく感じられる事務職ですが、ヒヤリ・ハットな事例は存在します。

事例

デスクでの作業中、FAXを流そうと席を立つと、開けっぱなしにしていた移動式袖机の引き出しにつまづいて転びそうになった事例です。

対策としては、机周りを片付け、歩くスペースを確保すること。引き出しは使い終わったらきちんと閉めることが挙げられています。

ハインリッヒの法則以外の労働災害の法則

ハインリッヒの法則以外にも、労働災害の法則は存在します。ここでは、ハインリッヒの法則の事後研究から生まれた2つの法則を紹介します。

バードの法則

フランク・バード(Frank E.Bird Jr.)による「バード法則」は、重大事故の背景にある経験則を示したものです。ハインリッヒの法則が「1:29:300の法則」と呼ばれましたが、ハードの法則は「1:10:30:600の法則」と呼ばれます。

175万件のデータから導き出された法則で、物損事故の割合も含められているため比率が異なります。

ハインリッヒの法則の事後研究結果であるため、似ているのは当然と言えますが、重大事故の背景には、配慮不足による危険な状況があるという考え方が共通している法則です。

タイ=ピアソンの法則

タイ=ピアソンの法則とは、イギリスの保険会社のデータを元に考え出された法則です。「1:3:50:80:400の法則」と呼ばれます。1件の重大事故の裏には、400件のヒヤリ・ハットがあるという考え方です。

ヒヤリ・ハットを防ぐ3つの方法

ハインリッヒの法則と深い関係にあるヒヤリ・ハット。重大事故につながるかもしれない事例が多く、早期に発見、未然に防ぐことが重要です。職場でのヒヤリ・ハットを、ハインリッヒの法則を用いて防ぐ方法を紹介します。

1.事故につながる可能性を確認・排除する

車内や現場で、重大事故につながるようなヒヤリ・ハットな状況がないかを事前にチェック、取り除くようにしておくと安心です。自社で、どのようなヒヤリ・ハットが起きる可能性があるのかデータがない場合は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のヒヤリ・ハット事例を参考にしてみてください。

参照:職場のあんぜんサイト ヒヤリ・ハット事例|厚生労働省

2.どんな小さな異常でも報告するルールを作る

職場や現場で異常を発見したら、すぐに報告するというルールを作成し、周知しましょう。専用の報告書を用意して、「いつ、どこで、何があったのか」について簡潔にまとめる方法だと取り入れやすいです。

3. ヒヤリ・ハットの見える化

報告を受けたヒヤリ・ハットな事例は、原因を分析したら、社員や従業員に周知する必要があります。社内報や会議などで知らせる方法もありますし、社員が必ず通る廊下や休憩所などに、ヒヤリ・ハットの事例を張り出すのも効果的です。

ハインリッヒの法則を取り入れ未然に事故を防ごう

職場での事故は、起こらない、起こさないに越したことはありません。取り締まろうとして取り締まれるものではないので、ハインリッヒの法則やバードの法則などを用いて、組織として事前に事故やトラブルを防ぐ意識と環境を作るのが大事です。小さなヒヤリ・ハットの裏には、いつでも重大な事故やトラブルが隠れていることを忘れないようにしましょう。

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