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自律的に成長する「ティール組織」とは?メリットや導入企業を紹介

「ティール組織」という言葉は聞いたことがあっても、どのような組織なのか詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。本記事ではティール組織の概要や、メリット・デメリット、導入企業などをご紹介します。

ティール組織とは

ティール組織とは、組織の目的実現のため、メンバー一人一人が意思決定を行い自律的に成長していく組織モデルです。フレデリック・ラルーの著書『Reinventing Organizations』の邦訳版『ティール組織』が出版されたことにより注目が集まりました。

ティール組織は、上下関係やルール、定期的なミーティング、売上目標や予算などといった従来の組織では当たり前とされていた制度や慣習を撤廃し、メンバー自身が意思決定を行い目標実現のために成長していく点が特徴です。

ティール組織に至るまでの5つ組織

ラルーは、ケン・ウィルバーのインテグラル理論における「意識のスペクトラム」を元に、組織フェーズを5段階に分類しています。ティール組織は突然誕生するわけではなく、レッド以降の組織の進化を内包したより多次元的な組織モデルと言えます。

ティール(進化型) 一人一人が主体性を持ち進化する組織
グリーン(多元型) 人間関係を重視したボトムアップ組織
オレンジ(達成型) 成果により昇進できるピラミッド組織
アンバー(順応型) 軍隊のような上意下達の組織
レッド(衝動型) 強力なトップによる恐怖支配

引用元:『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(2018)書籍

1.レッド組織(衝動型)

「オオカミの群れ」と例えられる組織モデルで、強力な力を持つリーダーが恐怖により組織を支配します。短期的な行動が多く見られ、再現性の低い組織といえます。

2.アンバー組織(順応型)

「軍隊」に例えられる組織モデルで、リーダーは権力や秩序により組織を管理します。組織の役割に沿った安定的な運営が可能ですが、常に同じような手法を取るため変化の多い環境には不向きです。

3.オレンジ組織(達成型)

「機械」に例えられる組織モデルで、基本的な階級は維持しつつも科学的管理を取り入れ成果を重視しています。メンバーは常に成果を求められることで変化や競争に繋がる一方で、機械のように絶えず働き続ける必要があり、人間らしさを失ってしまうという欠点もあります。現代の企業の多くはオレンジ組織に当てはまると言われており、その結果、働き方改革といった考えが生まれるようになりました。

4.グリーン組織(多元型)

「家族」に例えられる組織モデルで、社長や社員といった階級がある点はオレンジ組織までと同じです。グリーン組織では人間らしさや多様性を重視しており、個人に焦点が当てられているのが特徴です。メンバーが意見を出しやすく、互いを尊重し合う風通しの良さがありますが、合意形成に時間がかかるといった欠点もあります。

5.ティール組織(進化型)

「生命体」に例えられる組織モデルで、上司や部下といった概念はなくリーダーや管理職などの役職も存在しません。組織は株主や社長だけのものではなく、組織の関係者全ての人のものと捉え、「組織の目的実現」のために自律的に組織運営を行っていきます。

ティール組織に欠かせない要素3つ

ティール組織には共通する「セルフマネジメント(自主経営)」「ホールネス(全体性の発揮)」「組織の存在目的」の3要素があり、従来の組織からティール組織に進化するためにこの3要素を突破する必要があります。

1.セルフマネジメント(自主経営)

上下の指示系統がないティール組織では、メンバー全員が工夫しながら自己管理を行なっていく必要があります。セルフマネジメントを実現する上で、特に下記の環境を整えていくことが重要です。

①情報の透明化:パフォーマンスや給料等含めたあらゆる情報が透明化されている

②意思決定プロセスの権限委譲:個人の意思決定を尊重しながらも、組織的なフィードバックも届く

③人事プロセスの明確化:採用・退職、給料決定のプロセスが独自に明確化されており、社長や役員等の個人的な権力が及びにくい状態になっている

2.ホールネス(全体性)

ティール組織では、自分らしさや多様性を尊重することで心理的安全を確保することを「ホールネス」と呼んでいます。ホールネスが実現されることで、メンバー一人一人が自分の最大限のパフォーマンスを発揮することが可能になります。

3.進化する目的(組織の存在目的)

組織を「一つの生命体」と捉えるティール組織では、組織の存在目的は常に変化し成長していきます。組織の将来がどのように向かうべきかメンバー一人一人が考え、定期的に話し合う必要があります。

ティール組織のメリット

従業員の主体性を成長させる

上下の指示系統がなく、個人の裁量を重視するティール組織では、従業員は自ら積極的に業務を進めていく必要があります。計画から実行までを一貫して行うことで従業員自身の主体性を成長させることができます。

階層に捉われず自由なコミュニケーションが取れる

上司・部下といったヒエラルキーのないティール組織では、上下関係に捉われない自由なコミュニケーションが可能になります。フラットな環境で新しいアイディアや施策が生まれやすくなるといったメリットがあります。

変化に対応できる柔軟な組織になる

メンバー一人一人が常に組織の成長を意識することで、市場や環境の変化に柔軟に対応することができます。トップダウンの組織のように意思決定までの時間がかかることもないので、スピーディに変化に対応していくことが可能です。

ティール組織のデメリット

環境構築が難しい

ティール組織を実現するために、先述の3要素「セルフマネジメント(自主経営)」「ホールネス(全体性の発揮)」「組織の存在目的」を突破していく必要があります。今までオレンジ組織のような階層を重視していた組織の場合、制度面を整えるだけでなく、メンバーの意識においても3要素を浸透させるために、時間をかけて対話を行なっていく必要があります。

メンバーのモチベーションが低いと維持が難しい

メンバー一人一人に権限を移譲し、自律的な働きを求めるティール組織では、メンバーのモチベーションが低いと組織の維持が困難になります。モチベーションの低い従業員を管理する役職がないため、慎重な採用を行う、モチベーション向上の施策を行う、といった対策が必要になります。

新しい組織体系で不明瞭な点が多い

ティール組織は提唱されてからまだ日が浅いため、体系化されていない情報も多くあります。また国内での導入企業事例なども多くないため、自社に合った仕組み作りなどを模索してティール組織を目指していく必要があります。

ティール組織の考えを導入している企業紹介

サイボウズ

グループウェアなどのクラウドサービスを提供するサイボウズでは、「公明正大」「自立と議論」「ルールより目的」といった文化を重んじ、従業員一人一人の多様性を尊重した働き方を実現しています。また、社員同士で議論を重ねて人事制度策定するといった独自の人事制度策定プロセスを持っているのも特徴です。

ヤッホーブルーイング

「よなよなエール」などのクラフトビールを製造・販売するヤッホーブルーイングでは、ホールネスを実現するためにコミュニケーションの量・質を増やすための独自の制度を設けています。ニックネーム制度や雑談朝礼など、従業員同士が安心して自己開示ができる環境を整えています。

ティール組織について学べる本3選

1.ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わったのち、エグゼクティブ・アドバイザー/コーチ/ファシリテーターとして独立したフレデリック・ラルー氏が2年半にわたる新しい組織モデル調査を行い執筆した一冊。ティール組織について体系的に学びたい方におすすめです。

2.実務でつかむ! ティール組織 “成果も人も大切にする”次世代型組織へのアプローチ

https://www.amazon.co.jp/実務でつかむ-ティール組織-成果も人も大切にする-次世代型組織へのアプローチ-吉原/dp/4804718443

日本初Holacracy(ホラクラシー)認定ファシリテーター、吉原史郎氏が日本の大手、中小、ベンチャー企業、NPOを事例にティール組織へのアプローチを紹介しています。複数の事例を知りたい方におすすめの一冊。

3.自然経営 ダイヤモンドメディアが開拓した次世代ティール組織

日本でどこよりも早くティール型組織を構築した「ダイヤモンドメディア」創業者・武井浩三氏と、元ソニー天外伺朗氏が実践的な「ティール組織」について語った一冊。ティール組織実現のために具体的な情報を知りたい方におすすめです。

まとめ

この記事では、メンバー一人一人が意思決定を行い自律的に成長していく組織「ティール組織」の概要やメリット・デメリット、導入事例や参考書籍などをご紹介しました。新しい組織づくりに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

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