株式会社morich 代表取締役 兼 オールラウンダーエージェントの森本千賀子氏に聞く「コロナ危機における人事課題」の実情【第6回目】(後半)
2020年4月28日(火)、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ:https://harutaka.jp/)」を提供するHR Tech スタートアップ 株式会社ZENKIGEN(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:野澤 比日樹)は、日本初のCHRO養成講座「CANTERA」を運営する株式会社All Personal(本社:東京都港区、代表取締役:堀尾 司)と共同で、新型コロナウイルス関連の緊急対応に奔走する人事担当者の悩みにリアルタイムで答える「コロナ危機における人事課題の相談所Vol.6」を実施いたしました。
今回は株式会社morich 代表取締役 兼 オールラウンダーエージェントの森本千賀子 氏をゲストに迎え、堀尾氏と清水が参加する形で1時間のウェビナーを開催しました。
前回の記事前半では、採用やリモートワークにおける社員との接し方について話が進んだ。
記事後半では、フリートークでの質疑応答の詳細についてお伝えする。
Q1. 社員のモチベーションを保つための工夫があれば教えてください。
森本:これまでフルフレックスを敷いていた企業の例ですが、現在は毎日決まった時間に全社員、あるいはチームメンバーがオンライン上に一堂に会しています。今日取り組む仕事や、昨日のふり返りを共有することで、自粛前よりもチームワークが強くなったとおっしゃっていました。今何をしているか、何に悩んでいるかは見えにくいので、新入社員だけでなく既存社員を含め、こうした取り組みは大切だと思います。
Q2. WEB面接の場合、会社の雰囲気を伝えることができません。どのような工夫をすればよいでしょうか。
森本:確かに会社を見てもらうことはできませんが、オンラインにより社員との接点を持つ機会は増えました。1日3人に、3日間連続で会ってもらうなど、1週間でさまざまなポジションの9人の方に会ってもらったこともあります。これまで対面で会うことについて、お互いに負荷がかかる部分もあったのですがWeb面接により、物理的な時間の制約が減ったことをポジティブに捉えてはいかがでしょう。
エグゼクティブ採用の場合、これまでは最終段階で双方の相性やケミストリーを確認する場として会食したりゴルフに行ったり、中にはサウナに行くなどもありました。今は無理ですが、ちょっとした工夫で心の障壁は下げることができると思っています。たとえばZoom飲み会にしても夜の21時からとか土日に開催するとか、お互いにルームウェアで参加することによって、殻を脱ぎ捨て、素の状態で最終面談の時間を共有していただいてもよいのではないでしょうか。
Q3. この状況下で、人事担当者にはどんなスキルが求められているのでしょうか。
堀尾:現在は働くための環境づくりに追われている段階で、働きがいのモチベーション向上には至っていない可能性があります。まずは、評価のあり方を見直すことが必要です。今まで四半期とか半期に1度であった評価を、1か月ごとや1週間ごとに構造分解して、短期間で達成感が育まれるよう、マネジメントを変える事が求められています。
そしてこの状況下では、恐らく会社としての事業戦略が一気に変わっているでしょう。そこで、経営者の思い描く新たな事業戦略に適応できる組織デザインや働き方、採用ポリシー、評価ポリシー、エンゲージメントポリシーを、来年、再来年を予見しながら、一気に作り替えるスキルが必要になっていると思います。
森本:業務の見直しですね。ITやデジタルに置き換えられる業務と、人間のパッションやエネルギーを費やすべき部分が、今回はっきりしました。今まで予算が取れなかったり、経営陣に理解してもらえなかった分野についても、パラダイムシフトせざるを得ません。
なおかつPRの仕方や採用広報についても、価値観がどんどん変わってくると思います。この1か月で面談一つとっても、私自身、相当な手応えを感じています。人事の皆さんはぜひアンテナを張りながら、自分たちの会社が採用手法についても新しい価値を作っていく!そんな意気込みでやっていただきたいと思いますね。
Q4. 今後大きくワークスタイルが変わるであろうと予想される中で、組織のあり方自体も変わってくると思います。人事として、どこから改革していけばよいのでしょうか。
堀尾:あえて言うならマネジメントではないでしょうか。今迄にない、マネジメントスタイルが求められているからです。疑心暗鬼になり、ちょっとでも性悪説に立つマネジメントをすれば、アフターコロナになった時に部下の皆さんは離れてしまうでしょう。部下が期待する働き方をしてくれているか等を考えるだけ無意味です。部下を信じて、部下の不安を取り除き安心して働けるリモート環境を準備する事が重要です。もしもやり方が分からなければ、外部のプロに相談するのもよいと思います。
森本:経営者レベルやミドル・マネージメント同士での会話の少なさが気になります。ジュニア・クラスやメンバー・クラスのフォローに時間を割く中で、皆さん忙しく、お互いに分かっているだろうという気持ちもあるのかもしれません。でも今こそ経営チームとして皆が同じ方向に向けるよう、しっかり会話してほしいなと思います。たぶん今までの延長戦は通用しないと思うので、デジタル・トランスフォーメーションの先のコーポレート・トランスフォーメーションのような感覚で、会社の変革について、皆さんでじっくり会話し、信頼関係を強固にしておいていただきたいですね。
Q5. リモートワークで働き方が見えにくい状況において、どのようなポイントで社員を評価すればよいのでしょうか。
堀尾:人事の方が性善説に立つことが必要ではないでしょうか。働き方が見えにくいと感じるなら、社員や部下の方にスケジュールを登録していただくとか、1日の目標と成果のふり返りを日報のように報告いただく方法もあると思います。一方、上司も翌日の成果の期待値を言葉にして伝えてあげること。これを繰り返すだけだと思います。なぜならそれをウィークリーやマンスリーに直したものが、今までオフラインでやっていた業務だからです。
「見える化」は大前提ですね。見える化の作業は、人事の皆さんの得意領域なはずです。大切なのはそれをルール化し、きちんと合意形成すること。期待値だけ伝えて、フォローしないようなことだけは一番避けなければいけません。
森本:ある会社ではリモートワークと同時に 性悪説の観点で“管理する”ことを目的にWEBカメラを設置したため、社員が一気に引いてしまったそうです。やっぱり信用してあげることが大切ですね。見えづらさを補うためにプロセスマネージメントをちょっと細かくするとか、しっかりふり返る機会を作り、きちんと吸い上げ、褒めてあげるようなコミュニケーションを持っていただくことが大事かなと思います。
Q6. 転職を考え始めている優秀な人材と早期に接点を持つ秘訣があれば教えてください。
森本:移動する時間もなくなった分、未来に対して考える時間が増えて、熱心に情報収集されています。ですから、ぜひ採用広報をもう一度見直していただき、こういう状況だからこそ自分たちが本当に大事にしているミッション、ビジョン、バリューや未来に向けてのメッセージを言語化して発信していただきたいと思います。
では最後に、森本さんから元気の出るメッセージをお願いします。
森本:少し前までの売り手市場の環境から一変し、これからは変革をリードしていくような創造型の人材が必要になっていきます。社員の方々が、いかにそういう人材になっていただけるかを戦略的に考えていただくと同時に、人事の皆さん自身がまずはそういう人材となるべく意識していただくとことが大事だと思います。
とは言え、一人で立ち向かっていくと落ち込むこともあるかと思います。ですから同志の方々と集う場を大事にしていただきながら、この機会を筋肉質になるトレーニング期間と考え、緊急事態宣言解除後にはバランスよく筋肉が付いているような人事になっていただけたらと思っています。
明けない夜はありません。夜明けを迎えた時、より強固で筋肉質なエンゲージメントの高い組織になっているのか、はたまた違うのかは本当に人事の方の腕次第ですので、おおいに期待しております。
森本 千賀子 (株式会社morich 代表取締役 兼 オールラウンダーエージェント)
堀尾 司 (株式会社All Personal 代表取締役CEO)
清水 邑 (株式会社ZENKIGEN コミュニティプロデューサー)