
なぜパレスホテルは、AI面接を「アトラクト」の準備時間に変えることができたのか。導入から半年で見えたこと
年90名採用、パレスホテルの新卒採用

はじめに、採用計画の全体像について教えてください。
新卒では、年間90名程度の入社を計画しています。2026年入社のメンバーもおおよそこの規模で、内訳は大学生と専門学校生。2027年卒についても、同様の人数感で着地予定です。
今年度の選考フローは、書類による初期選考に、グループディスカッション、AI面接、個別面接、最終面接、内定という流れでした。
求める人材像として、特に掲げていらっしゃるものはありますか。
採用コピーとして「自分の価値で、世界に挑む」という言葉を掲げ、採用サイトにも掲載しています。守りに入るのではなく、自分の意思で動いていける方。そして、パレスホテルの良さを世界に発信する志のある方に来ていただきたいと考えています。新規事業も展開していくなかで、そうした姿勢を持った方を必要としています。
AI面接導入、社内の反応は前向き

AI面接の導入を検討され始めたとき、どのような狙いがあったのでしょうか。
ひとつは、採用メンバーが増えていくなかで、面接官によって聞き方も違えば、掘り下げ方も違うという状況がありました。そこを統一していく手助けになればいいね、と話題にあがりました。
もうひとつは、採用手法としての「攻め」の部分です。ホテル業界ですと、比較的攻めた採用手法は取られていない傾向にあります。今までの古い体制のまま採用活動をしているのではなく、新しいことに取り組んでいる企業であるということ自体が、学生へのアピールになると考えました。当社としても新たな取り組みでしたが、新しい戦略として踏み出しました。
社内では、最初どのような反応がありましたか。
何かを変えないといけない、変えていこうというタイミングで、前向きでした。
当初は採用メンバーしか知らない状態から始まりましたが、否定的な反応はありませんでした。まずは試してみようという発想です。
適性検査に代えて、AI面接を導入。設問を、あえて1問に
『まずは試してみよう』という空気があったのは心強いですね。選考フローのなかで、AI面接はどこに位置づけられたのでしょうか。
選考の、中盤です。従来の適性検査に代わる形で、個人面接の前の段階に入れています。グループディスカッションの通過者に対して、個人面接の日程調整と合わせてご案内しました。
当社では、AI面接そのもので合否はつけません。あくまで個人面接の参考材料という位置づけとして、学生にもそのようにお伝えしたうえで受けていただいています。
合否に直結させないからこそ、質問の中身が重要になりそうです。質問設計はどのように進められましたか。
いろいろなアイデアは出たのですが、最終的には学生が話しやすいものを、ということで「入社後にやりたい仕事」の1問に絞りました。どんな仕事がしたいのか——ホテルで働く、そのなかでもパレスホテルで働く、その想いの強さがよりわかる質問設定だと考えたからです。大学生・専門学校生の共通の設問としています。
何度も議論を重ねたというよりは、採用メンバーで意思統一したうえでスムーズに決めることができたと思います。
AI面接の事前情報で、個人面接が変化

実際に導入されて、個人面接ではどのような変化がありましたか。
学生がどの程度話しているかは一人ひとり差がありましたが、ある程度その方の方向性を理解したうえで面接に臨めたのは良かった点です。
特に活用できたと感じたのは、興味のある部署についてです。履歴書の時点で興味のある部署を書いている学生もいれば、書いていない学生もいて、比率で言うと書いていない方のほうが多くいらっしゃいます。もちろんインターンシップ、仕事体験など、それまでの会話のなかで知っていることもありますが、AI面接で事前にうかがえたことで、話の持っていき方、組み立て方をうまく作れたと感じます。
「この分野に関心があるのであれば、こういうキャリアもあるんだよ」というプラスアルファの提案も、事前に準備したうえで、できました。これまでは面接時間のなかで最初にヒアリングをして、そこからリアルタイムでアプローチしていく流れだったので、事前にヒアリングができている状態で臨めるというのは、引きつけ・魅力づけの面で大きいと感じています。
事前の準備に使えるようになったというのは大きいですね。面接官の皆様は、レポートをどのように使われていましたか。
当社の場合、面接官全員がシステムに入るのではなく、レポートを出力したものを個人面接官が手に持って面接に臨むスタイルにしました。ただ、レポートを全面的に信頼するというよりは、あくまで参考にする向き合い方でしたね。「参考の指標であり、しっかり人の目で見てください」と伝えていました。
AIに頼りきらない運用方針が伝わってきます。テクノロジーを使われてみて、率直な体感はいかがでしたか。
最初は慣れるのに時間がかかりましたが、質問設定を変えるなど、AIをもう少しうまく活用していきたいという気持ちのほうが強いです。
専門学校からの反響と見えた課題
導入してみて良かった点、改善が必要だと感じた点を、それぞれお聞かせください。
良かった点は、専門学校からの反響です。専門学校生の場合、学生と直接ではなく学校のご担当者にご連絡をするため、「新しい取り組みをしています。ただし、これで直接合否が決まるわけではありません」と前置きをしながら進めていきました。するといくつかの学校から「このような取り組みもされてるんですね」というお話をいただきました。学校側でも活用を検討していたところだった、というお声もありました。ホテル業界で他にAI面接を実施している企業はあまりないのではないか、と先生方からも言っていただけたのは、思わぬ収穫でした。
一方で改善点としては、学生、特に専門学校生がフィードバックを求める傾向にあったことです。AI面接がオンラインで終わってから個人面接まで1週間ほど期間が空くケースがあり、その間ずっと不安なまま。個人面接の場で「こういうお話があったんだね」と触れることはできるのですが、受検直後は緊張していて何を答えたか覚えていない、というケースもあったようです。
学生向けのフィードバックレポートもお出ししていたのですが、そちらはあまり見られていなかったのかもしれません。学生本人にヒアリングができていないので、今後確認したいところです。
今後の課題は、質問と運用の改善

最後に、今後の展望をお聞かせください。
今後、学校の授業や他社の選考で使う学生が増えていくと、応募してくださる学生の不安の払拭や、システムの使いやすさにもつながるのではないかと思います。
今回の導入は、私たちにとって最初の一歩でした。質問項目を変えたり、運用をブラッシュアップしたりしながら、本当に聞きたいことを事前にうかがえるように育てていきたいと考えています。