面接データに秘められた可能性。ソフトバンクがソフトバンククルーの中途採用に『harutaka IA』を導入した理由とは
AIの力で、増加し続ける採用人数と面接数に対応したい
『harutaka IA』を導入した背景を教えてください。
片岡さん:ソフトバンク株式会社では、店舗における接客や運営を担う中途契約社員をクルーと呼び、年間を通して多数の社員を採用しています。本採用(以下、クルー採用)は、新卒採用やキャリア採用に比べて採用人数・面接数が多いことから、AIの活用により採用生産性をより向上できないかと考えていました。
また、人事業務においてはブラックボックス化されている部分やアナログな要素も多いため、AIを用いることで選考の質を高めたいという気持ちもありました。
片岡さん:我々がこれらのことを意識し出した数年前は、まだ社会的にデータ・AIを活用した採用が一般的ではありませんでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、社会全体でWeb面接による選考が主流となり、データ・AIの活用を後押しする動きが起き始めました。
弊社人事チーム内で打ち出された「AIの活用に積極的にチャレンジしていこう」とする方針も相まり、『harutaka IA』の導入に至りました。
『harutaka IA』導入にあたって期待した点は何ですか?
片岡さん:面接のブラックボックス化を解消し、見極めや魅力付けの精度を上げるといった『面接品質』の向上です。面接の可視化により面接品質のばらつきを統一すれば、合格率や内定承諾率を向上させることができるのではないかと考えました。これまでの面接では、録画情報やテキストデータもなく、面接内容そのものがブラックボックスに包まれていたため、そもそも面接内容の振り返りや分析を行うことが困難だったからです。
鈴木さん:採用目標数が多い一方で、どうしても採用市況から見ると販売・接客の業態は応募者から選ばれにくい傾向にあります。
ご応募頂いた方々に選考を通じ納得感を持った上でご入社いただけるように『harutaka IA』のデータ分析を活用しながら応募者体験を高めつつ、採用人数を増やしたいという狙いもありました。
録画情報や文字起こしの活用で面接課題の把握・改善に成功
クルー採用では『harutaka IA』における録画や文字起こしデータを積極的に活用されていると伺いました。どのように活用しているのかを教えてください。
鈴木さん:大きく2点あります。1点目は面接を担当する現場社員へのフィードバック材料です。面接録画データを人事が確認するなかで、伝達事項の伝え方や見極め目線のすり合わせど、調整や改善が必要な部分が見つかった場合には適宜現場へ伝えています。これらのフィードバックを通し、それまで面接合格率が低かった職種における見極め品質の改善や、面接官の振る舞い改善に繋げています。
もう1点は、面接内容の再確認です。クルー採用では面接担当者が応募者に確認しなくてはならない事項が多岐に渡ります。『harutaka IA』を導入したことで、もし面接担当者が記録を残し忘れてしまった場合などには人事が録画や文字起こしのデータからヒアリング内容を再確認できるようになりました。
人事から現場へ直接フィードバックをするのに、気まずさはありませんか?
鈴木さん:いいえ、そのようなことはありません。むしろ我々の場合は、「面接での応募者離脱を防ぐために、面接担当者としてどうすれば良いのかアドバイスしてほしい」という声が現場から寄せられていたからです。導入当初、録画データの活用に対する現場の皆様からの反応はいかがでしたか?
鈴木さん:「面接品質を向上させるために録画をします」と導入時に率直に伝えたこともあり、特に現場からの反発やネガティブな声は上がりませんでした。より良い人材をピンポイントで採用するという目的に向け、内定承諾率や入社後定着率を高めていくのは、人事と現場が双方で立ち向かう課題という意識が社内にあるからです。ただし録画データについては、個人情報取り扱いの観点から人事のみが確認するフローにしています。
選考の最適化と面接の質向上に『harutaka IA』と挑む
ソフトバンクとZENKIGENが『harutaka IA』を用いて現在進めているプロジェクトについて簡単に教えてください。
片岡さん:大きく2点あります。1点目は現場面接担当者のトレーニングです。分析データを元に、応募者の魅力を引き出すための会話の深堀り方法や面接における振る舞い方法を指導しています。2点目は、選考の最適化です。録画データや文字起こしデータを活用し、面接回数や面接担当者人数をよりスリムにできないか、といった検証をしています。
それぞれのプロジェクトにおいて、『harutaka IA』に期待する点を教えてください。
片岡さん:1点目の現場面接担当者のトレーニングでは、面接担当者の能力が高まることで、応募者体験ひいては内定承諾率の向上を期待しています。また、自社とよりマッチする応募者の見極めとその精度向上にもつなげたいです。2点目の選考の最適化という点では、選考期間の短縮による応募者体験や内定承諾率の向上をはじめ、人事工数の削減や公平な判断の担保という点への効果も期待しています。
面接データを蓄積・分析し、その情報を未来へ活かせること自体に価値がある
『harutaka IA』の導入後にこれまでの貴社採用を分析したと伺いました。その結果、どのような傾向が分かりましたか?
片岡さん:面接担当者ごとに合否の基準や承諾率に差があることが顕著に現れました。笑顔などの基本的な振る舞いを可視化できたことで、実践できている人とできていない人の差も明確になりました。また内定承諾率と応募者・面接担当者の発話比率に相関性が見つかり、面接の質が応募者体験に影響を与えている可能性があると分かりました。
『harutaka IA』の導入を通し、貴社の採用はどのように変わりましたか?
片岡さん:圧倒的に面接後の振り返りが変わりました。冒頭でお話したように、これまでは面接内容そのものがブラックボックスに包まれていたこともあり、面接の振り返り自体ができず、課題の可視化・改善が困難だったからです。ブラックボックスだった観点がクリアになったことで、できないと思っていたことができるようになった驚きと感動は今でも忘れられません。
鈴木さん:応募者へのフォロースキルが従来のガイダンスだけでは足りていなかった点も分かりました。至らなかった点が定量情報として判明することによって、今後それらの点をチューニングしていけること自体が大きな変化だと思っています。
何よりも面接データの蓄積・分析が行えるようになったおかげで、そのデータを未来へ活かすことができるようになったという点において『harutaka IA』が我々に与えた価値は相当なものです。
最後に、今後のクルー採用における展望や構想を教えてください。
片岡さん:短期的には、工数削減という意味で面接の最適化を進め、採用の無駄を減らしていきたいです。それが結果として内定までのリードタイムを短縮し、応募者体験の向上につながるはずだからです。長期的には「この店舗だとこういう人が活躍する」など、入社後に向けたデータ活用やマッチング改善のような、ミクロな応募者傾向とその分析が行えたらと考えています。そのためにも、応募者のコミュニケーションスタイルや発話内容にさらに踏み込んだ傾向分析が将来的に『harutaka IA』で行えるようになることを期待しています。