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世界のHR Techの最前線を徹底解説 – ZENKIGEN Lab Report 005

風間 滋樹 (株式会社ZENKIGEN harutaka(ハルタカ) 事業推進責任者)

企業に蓄積されたHRに関連するデータを収集・分析して、人事業務の意思決定などに活かす取り組みとして昨今注目を集める「HRテック」

今回は、ビジネス的視点で有望な海外のHRテックサービスについて、ZENKIGENでharutakaの事業推進責任者をしている風間に伺いました。

人材業界で12年渡り歩いてきている風間ならではの視点を交えて、これまでのHRテックの歩みやトレンド、HRテックサービスは今後はどのように発展してくのか。最先端のHRテックサービスだけでなく、HRテックの流れの全貌が見えてきました。

HRテックにおける3つの潮流

HRテック自体が注目されはじめたのはいつごろですか?

2017年から2018年にかけて、世界のHRテック領域の投資額が大きく増加しています。


(出典:Q3 2020 HR Tech Global VC Update

マーケティング領域もアメリカでの投資額が増えたことで、イノベーションが生まれて、それが世界に波及し、日本にも取り入れられるといった流れがありましたが、それと同じことがHR領域でも起きようとしている感触があります。

特に今、人材管理システム(HCM)や採用領域(Talent Acquisition)、タレントマネジメント(Talent Management)といった3本軸での投資が多いです。1番HRテックが進んでいるのは断然アメリカで、世界のHRテック投資の6割をアメリカが占めています。2割がEU、残り2割がその他です。(出典:Market Insights & Trends report on 2020 Global HRTech Investments & Start-up Funding )

HRテックのトレンドや動向を教えてください。

まずHRテックの流れとして、近年3つの概念が登場しています。

  • 1. 情報を一元管理して戦略や人材配置を決める「タレントマネジメント」
  • 2. 従業員のエンゲージメントを高めて、1人1人の体験する経験価値を上げる「ピープルマネジメント」
  • 3. 個人のエンゲージメントだけではなくチームを最適化していき、ワークとライフの融合を図っていく「ワークアンドライフマネジメント」

この大きな3つの潮流に沿って様々なHRサービスが登場しています。


(出典:Josh Bersin. Untangling the HR Tech Market 2020)

一つ目のタレントマネジメントでは、人事のデータを統合して自動化することやデータを元に施策を実践することがメインで、人事のための分析ツールという位置付けのサービスが多いです。

海外では、さらにエンゲージメントの観点を取り入れた二つ目のピープルマネジメントの概念が主流になってきました。SAPの提唱しているようにHXM(Human eXperience Management)といった従業員を起点として考えるような表現も登場しています。しかし、海外に比べると日本ではまだステージが遅れており、日本ではタレントマネジメントの領域が徐々に取り入れられてきているという状況です。

最近のトレンドとしては、Well-being(ウェルビーイング)のような従業員の幸福度をあげる考え方である、三つ目のワークアンドライフマネジメントがあります。この領域は総合したソリューションが存在しているというよりは、色んなベンダーが乱立してマイクロサービス化しているというのが先行しているアメリカでの現状です。

世界的に見ても、日本は活き活きと熱量を持って働いている社員の割合は7%とかなり低いためニーズはこれからもあるのではないかと思います。


(出典:日本人のエンゲージメントが世界の中でも低い理由-エンゲージメントを上げる施策を考える-

現在注目度が高いHRテックとは、どういったものなのでしょうか?

大きなHRテック潮流と同時に注目されているHRテックサービス(人事領域での分析ツール)は、ビジネス関連のデータや人事周りのデータ(ATS, タレントマネジメントなど)を統合できるものです。各種APIを連携してデータをストレージに入れて構造化し、BI(ビジネスインテリジェンス)としてダッシュボードに出力して可視化・分析するというのが基本の全体像です。

タレントマネジメントツールやATS等で収集した人事データを活かし、HRテックサービスを使用することで、従業員のパフォーマンスなど様々な情報をダッシュボードで把握することができるようになります。

しかし、結局分析ツールとして1番使われているのは、未だエクセルというのが現状です。
HRテックサービス(HR Analytics Platform)を使っている割合は少なく、まだまだこれからというフェーズです。


(出典:Sapient Insights Group. 2020-2021 Annual HR Systems Survey Findings, 23rdEdition

HRテックサービスの使用のハードルを下げるために、ノーコードでデータを組み合わせて出力できるツールも最近出てきました。Tableauなどが登場したマーケの世界と同じで、これからはノーコードも広まっていくと思います。

サービス提供側としては、米国サービスのWorkdayのように垂直統合していく会社と、IPaaS(Integration Platform as a Service)のように専門サービスとシステム連携して展開していく会社という二極化が進み始めています。

BIなど分析ツールを導入するきっかけとしては何が多いのでしょうか?

「会社や個人の状況が見えていないから」という理由が多いです。

例えば、とても業績が落ち込んでいる際に、セールスやマーケティングが原因でもなく、製品開発が原因でもない場合に、人や組織が問題として浮上します。チームの関係性が悪くてモチベーションが低下しているなどが考えられても、そこにデータがないと何も見えてきません。

人や組織に対して何かしらの手を打たなければいけないという状況になった際に、危機意識を持って導入の動機形成がなされるケースが多いですね。大体、勘や経験などで人事周りは動いていることが多いので属人的になりがちです。

ビジネスの現場を変える、注目のHRテックサービス最前線

1. 採用管理システム(ATS):HRMOS, eightfold.ai

採用情報を一元管理するATSは国内でも既に利用企業が多いと思いますが、国内ではどういった動向がありますか?

日本国内の採用管理システムでは、後発ですが、私の古巣のビズリーチ社が提供する「HRMOS」が特に中途採用領域でシェアを伸ばしていると感じています。先日、新卒エディションもリリースされましたね。。現状の採用管理システムで感じている負を消しに行った点とUI/UXが優れている点、シリーズとして採用だけでなく人事領域全般へ展開しつつある点がシェアを伸ばしている大きな理由ではないでしょうか。
ビズリーチの顧客基盤が既にあった点も大きいですね。


人財活用プラットフォーム (出典:HRMOS

海外では注目しているサービスはありますか?

海外では2020年9月に1億2500万USDを調達した「eightfold.ai」という、スキルを自動的に推測し可能性を確認するAIを使用して、社内外の候補者を評価、ポジションにマッチングするCRM、採用管理、タレントマネジメントシステムを統合したサービスがあります。

また、Hiretualという、マッチしそうな人材をクローリングしてタレントプールに自動的に追加され、タレントプール内の人材のナーチャリングをして採用していくといったソーシングサービスも注目しています。マーケティングの世界でいうMA(マーケティングオートメーション)ツールのような役割ですね。

インテグレーションも進んでいて、ATSやタレントマネジメント、Workplace領域のシステムともAPI連携ができることで、様々なデータを管理できるようになっています。


AIを活用した採用最適化サービス(出典:eightfold.ai

日本にはHiretualのような機能を備えているサービスはないのでしょうか?

日本で同じサービスはないですが、似たようなサービスとしては「LAPRAS」がありますね。採用決定など成果が出ると更に広がっていくと思うので期待したいです。


AIを活用したエンジニア採用サービス(出典:LAPRAS  SCOUT

2. Workplace:SAP Success Factors, Workday

Workplace領域のサービスとは、どのようなサービスでしょうか?

SAP Success Factorsを例にあげて説明すると、Workplaceとはタレントマネジメント、ATS、トレーニング管理、キャリア、パフォーマンス、報酬、採用計画などが含まれている総合的なプラットフォームのことです。このWorkplaceに蓄積されたデータをSAP Qualtricsといったアナリティクスツール側で分析をするという流れです。

オンボーディングのデータと突き合わせたいなど複数のデータが必要な場面が存在するので、Qualtricsのような分析基盤が必要になります。Success FactorsとQualtricsはSAP内で連携しており、今勢いがあるサービスです。


SAP製品構成(出典:SAP HRソリューション

どういった動向があるでしょうか?

Workplaceは山のようにサービスが乱立しています。Workforce Analyticsのマーケットシェアをみても、支配者がいるわけではなく様々なベンダーが存在していることが分かると思います。人材管理システム(HCM)の付帯機能としてアナリティクスが存在しているところが比較的シェアを占めています。


(出典:Top 10 Workforce Analytics Software Vendors and Market Forecast 2019-2024
※現在Ultimate Softwareはkronosと合併済

3. WEB面接サービス:HireVue, harutaka

コロナの影響もあって、遠隔リモートでWEB面接を行うケースは増えてきているように感じます。WEB面接サービスの動向を教えてください。

WEB面接ツールのHireVueをはじめ、世界で約80社の多くの類似サービスが存在していますあります。その中でも、画像・音声・自然言語など何らかのAIを活用した機能を実装しているベンダーが20社程度です。


WEB面接ツール(出典:HireVue

今後どのように発展していくでしょうか?

今後は統合プラットフォーム化に進むベンダーとスクリーニングアセスメント領域を深ぼっていくベンダーの2つに分かれると思っています。後者のほうがAIの活用が進んでいくという印象があります。

AI実装がないサービスは、前者のようにCRM機能をつけたり、ATS機能と連携したりといったプラットフォーム化やオペレーション最適化のところに向かっています。

例えば最近だとWEB面接ツールを提供していたインドのスタートアップAspiring Mindsが、人材評価システムの大手企業SHLに買収されていました。

> 参考:SHL Acquisition of Aspiring Minds Signals The Next Generation Of Talent Strategy Is Here

従業員の幸福度を向上させるための“処方箋”としてのHRテック

HRテックはどのように変化していくと思いますか?

2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)は米国証券法にもとづく「レギュレーション S-K」を改訂すると発表し、人的資本に関する情報開示が義務化されました。
例として「人材の誘致、育成、維持」に関する開示が挙げられており、開示する情報の詳細な内容については言及がなく、企業は何らかの基準に則って情報開示を実施すると思われます。

現在、国際基準として利用できる人的資源マネジメントの国際規格としては、「ISO30414」があり、恐らくグローバルスタンダードとして、重要になってくると思われます。
今後、HRのレポートも企業は投資家に情報開示していかなければならなくなるので、最低限の分析が必要になっていくはずです。アメリカで導入されたものは日本でも波及することが多いため、日本でもその流れが進むのではないかと思います。

そしてHRテックサービスは、処方箋のような対策を打つもとになると思っています。現に従業員の処方的行動プラットフォームという立ち位置を大手ベンダーは取りにいこうとしています。

個別最適化された従業員体験を届けることで、従業員の幸福度(Well-being)を向上させ、業績・ビジネスの向上につなげるという世界に進み、人事の役割も変化していくように感じています。

そのためには様々なデータを統合する必要があるので、加工されたデータのみを人事に渡すといったように、倫理的観点や情報保護の問題などの色んな制約をどう乗り越えていくのかが課題となりそうです。

「HRテック」から「Workテック」へ

今後どのようなデータが重要視されるでしょうか?

そもそも分析というのは特に新しいものではなく、見える化の手法とデータ量の増加、テクノロジーの進化という部分が大きな違いなのかなと思います。

遡って考えると人の調査・分析というのは、国の政策に役立てるための国勢調査と一緒だと考えていて、徴兵や納税などのために国勢調査は古代のバビロニアの時代からやっていることですよね。それが会社単位で発展しているものが、今のこの状況なのではないかと思います。

HR領域は、採用情報、異動情報、退職、エンゲージメント、スキル、トレーニング、パフォーマンス、評価、給与など様々なデータが存在しますが、これからは「コミュニケーション」と「ネットワーク」のデータも重要視されていく流れがきています。

しかし「人事のための分析」から「ビジネスのための分析」に移り変わっていく中で、今のシステムでは圧倒的にコミュニケーションのデータが足りていません。リレーションのアナリティクス(人のネットワーク)を可視化していくところが今後の課題になっていくのではないかと感じています。

コミュニケーションやリレーショナルデータが重要になると考えているので、弊社が取り組んでいる動画データは特に人のネットワークを可視化するということに関して有用かなと思っていますし、世界的にみても他に取り組んでいる企業はあまりないと思います。

働く時間が人生に占める時間は膨大です。その時間が豊かな時間ではないということはとても哀しいことだと思っています。

そして、それは家族や周囲の人に連鎖、悪影響を及ぼすこともあります。
大変だとしても、私は自分の子供にいきいきと働いている姿を見せてあげていたい。
そのような人が増えれば、きっと次世代に良い未来を残せるのではないでしょうか。
決して仕事のために人があるのではなく、人のために仕事があるのです。
尊厳を奪われるのではなく、尊厳のある働き方を取り戻す。
そのためのプロダクトを世の中に広めていきたいと考えています。

エンジニアの岡島より技術的な視点から最先端のHRテックサービスについて紹介している記事もありますので、合わせてご覧ください。

>次回 ZENKIGEN Lab Report 006 はこちら

風間 滋樹(株式会社ZENKIGEN harutaka(ハルタカ) 事業推進責任者)

12年人材業界で働くHRビジネスのエキスパート。アデコ 8年(アウトソーシング企画、プロマネ、プロデュース) 、人材エージェント(人材紹介、アウトソーシング事業部長) 、ビズリーチ (大手のセールスマネージャーなど10部門) 、 夢真グループ(ベトナムHR・教育事業責任者・新規事業企画) を経て、 ZENKIGENに2020年8月入社。

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