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AI採用開発者に聞く、海外のポテンシャルのあるHRテックサービス – ZENKIGEN Lab Report 004

岡島 明伸 (株式会社ZENKIGEN プロダクトマネージャー)

企業に蓄積されたHRに関連するデータを収集・分析して、人事業務の意思決定などに活かす取り組みとして昨今注目を集める「HRテック」

HR業界でのAI活用はどのように進んでいて、今後HR領域でのAI活用はどのように展開していくのでしょうか。

技術的観点で有望な海外のHRテックサービス、またHR領域でAI活用が進まない背景や今後の展望について、ZENKIGENでエンジニアである岡島に伺いました。

技術的に見逃せない!注目のHRテックサービス最前線

1. チャットボット・エンプロイーエンゲージメントサービス:Leena AI

HRテックで注目しているサービスを教えてください。

Leena AI」というFAQチャットボットサービスに注目しています。

裏側は自然言語処理を活用した普通のチャットボットとなっているため、システム
をよく知らないユーザーからも直感的に挙動が理解しやすく、導入もしやすいことがポイントです。


従業員からの質問や問い合わせに回答できるFAQチャットボットサービス(出典:Leena AI

なぜ注目していますか?

社内FAQに力を入れているチャットボットの会社は多いです。その中でもLeenaAIは、チャットボットの対話型AI(カンバセーショナルAI)が優れているというのはもちろんのこと、HRIS(人事管理システム)とも連携しつつ、Employee Engagementまでカバーできている点が良いと思っています。

人事はどのような施策に対しても、長く勤務してもらうこと、パフォーマンスを向上してもらうことの2つをミッションとして重要視しています。
長く勤務してもらうための施策は会社ごとによって異なりますが、福利厚生の充実など従業員のエンゲージメントやロイヤリティを向上させるための施策が多いです。

しかし実際は、日常的に発生する勤怠管理や経費申請などのワークフローが面倒といった些細なことが積み重なった結果、最終的に社員の離職につながるケースもあるため、HRISとの連携によりその業務を簡略化するかも重要だと考えています。

その点でチャットボットは、”会話するだけ”で日頃のワークフローを完結することができるインターフェースとして優れています。そしてエンゲージメントが向上したかどうかを図るためのツールも備わっていることで、簡略化したことに対する効果測定も可能なんです。

「会話ができる」「HR関連業務が簡単に完結できる」「どう感じたかを測る仕組みがある」という3軸を抑えているのが重要です。
FAQだけ作れる、サーベイだけとれるといった個別のサービスは多く存在していますが、3軸全てを手広くカバーしている「LeenaAI」はHRのことをよく考えて設計されていて良いと思っています。

上記の3軸にくわえてチャットボットの優位性として、ユーザーからの入力ハードルが低く、情報蓄積の手段として有効というのが挙げられます。特にサーベイとのインテグレーションは効果が期待できるため、その情報をもとにした次の改善に進みやすくなります。

チャットボットはどのような場面で活きるでしょうか?

今後HR業界において、従業員の体調を整えていく仕組みがさらに重要になると考えており、それはチャットボットがヘルスケアサービスとも連携することで実現できると思います。

現状、AppleWatchのようなデバイス単体ではストレスレベルなどを精度高く計測することはできません。デバイスから収集したヘルスケアに関するデータと主観データ(自分の体調などを自身で記録したもの)を両方取得する必要があります。

その点でチャットボット系のサービスは、簡単に質問を出して回答できるので主観データを集めやすいです。

人事情報だけでなくヘルスケアと掛け合わせた情報(勤怠やスケジュール情報+心拍や主観データなど)を活用することで、移動中に寝ているため心拍が落ち着いているといったことが分かるようになります。

もちろんこれらの情報はセキュアである必要があるため、人事施策目的で利用することには賛否両論あると思いますが、同時に従業員自身が活用していくことで、自分の仕事が自分の体調やメンタルにどのように影響しているかを理解・把握することや普段と違うことに気づく手助けになっていくと考えています。

今まで主観的に疲れてきたから休憩しようと判断していたところを自分自身の数字や根拠に基づいて判断できるようになるというメリットを従業員に提供できるようになります。

コロナの影響で会社選びにおいて出社が必須の会社は避けるといった人も出てきている中で、このような体調管理ツールといった特殊なサービスを案内できるというのは、会社としての価値向上につながると思っています。

2. ビジネス特化型SNS:「Linkedin」

2つ目に注目しているのはどのサービスでしょうか?

Linkedin」です。HRテックサービスではないのですが、会社を跨いだ情報が大量に集まっているサービスとして、この情報を今後どのように活用していくのか、新サービスを作っていくのかという点で注目しています。


世界最大級のビジネス特化型SNS(出典:Linkedin

Linkedinにどんなポテンシャルを感じますか?

10年以上前から私も使用していて、当時からアメリカにおいて一般化されユーザーみんなで作っていくようなキャリア、ビジネスリレーションを作ることができるサービスでした。

サービスとしては分析サービスと呼ぶには時期尚早だとは思います。

しかし、社外の人材情報が蓄積されているサービスは世の中に少なく、第3者からAPIもあまり利用できないので、Linkedinに集まる情報の価値や活用方法に期待しています。情報の価値にポテンシャルを感じて2016年にマイクロソフトも買収したのだと思っています。

近年、履歴書重視の採用からリファラルなどを含めてリレーションから採用していくというトレンドもあるので、日本ではソーシャルを軸にしたWantedlyなども出てきています。採用トレンドに合わせてソーシャル要素を強めたサービスを展開が主流になってきている中で、Linkedinを今後どのようにより良くしていくのかにも注目していきたいです。

3. インテグレーションサービス:Panalyt

3つ目は、どのようなサービスでしょうか?

Panalyt」という人事データのインテグレーションサービスです。

データをインプットする部分は色んなサービスが揃っていますが(例:Slackのチャットボットから色んなサービスに情報が蓄積されるなど)、サービスを横断してインプットデータを統合するサービスはまだ未発達の領域と感じています。

勤怠システム、人事情報など各社各様のサービスに落ちた後、入ったインプットデータをどうやって統合していくのかが肝だと考えています。

HRサービス同士を統合するサービスも存在していますが、各HRサービスに落ちている社内データを結合できるのが「Panalyt」です。

まだ私の理想とする完璧なインテグレーションサービスは見つけられていませんが、Panalytのコンセプトが一番近いものだと感じています。

HRに関連するインプットデータを結合するインテグレーションサービス(出典:Panalyt

岡島さんの理想はどのようなインテグレーションサービスですか?

Panalytは、あくまで社内の勤怠や人事情報を結合するためのサービスです。

理想とするインテグレーションサービスは、各HRサービスに落ちている社内のデータを結合できるだけでなく社外の人材データも結合できて、タレントを採用する上で採用/入社から定年まで一気通貫でデータ利用できるものです。

LinkedinやGitHubのような社外の人材情報を自動でクロールしてくれる「TalentBin」や「Entelo」といったサービスとPanalytが連携できるようなイメージです。

TalentBinやEntelo単体だとタレント採用のためのソーシングで終わってしまいますが、社内の人材データと結合できると、社内外の人材データの分析をし、採用の戦略立案ができるようになります。各社だけの視点ではなく、社会全体の経済発展という目的において、「開かれた人事」のような企業の枠を超えた適材適所ができるようなサービスがあれば良いと思っています。

HR業界ではAI活用の進みが遅い?

なぜHRはFintech・サプライチェーンのような領域と比べて、技術が進みにくいのでしょうか?

HRでは「データが構造化されていない」という理由が大きいです。

Fintech・サプライチェーンといった領域では統一されたルールや仕組みがあり、会社に依存しない構造化されたデータが溢れていたため、技術発展が進みやすい環境でした。その反面、HRではデータ自体はあるけれども構造化されていないため、分析まで進むことができないケースが多いです。

例えば、採用領域ではLinkedinやWantedlyのようなサービスが登場しているものの、未だにレジュメや履歴書が手書きの場合が多く、エンジニア採用時にはGitHub上でのコミットの履歴を追いかけるなど、構造化されていないデータや属人的なフローが多いです。

しかし、ZENKIGENでも動画から数値化するといったことに取り組んでいるように、
AIが非構造・非言語のデータ(画像や音声など)を処理することが可能となってきました。

さらにHRでも少しずつ分析しやすい形でデータが蓄積できる基盤が出来てきました。

データの基盤が出来ると、将来的にはFintech・サプライチェーンといった他のサービス領域と同じように、AI解析が展開できるような領域になっていくのではないかと考えています。

特にHRのどんな領域でAI活用が進むと思いますか?

まずは「社内での活用」が進むと思います。大企業であるほど社内に大量のデータが既に存在しており、お金をかけずに社内の情報解析からスタートするケースが多いと思います。

HRでの情報解析が進んでノウハウが溜まってくると、社内の他部署からもエンジニアを投下できるようになり、社外の採用領域などにも活用できていくのではと思います。

しかし、お金になりやすいのは採用領域だと思います。

外部でHRサービスを立ち上げるという場合には採用領域に特化したサービス開発、事業会社の人事部の場合には業務改善や効率化として社内の人事情報を活用した情報解析といった2極化が進むと考えています。

アウトプットの出し方に未だ正解がない

HR領域でのデータ活用における課題はありますか?

HRではアウトプット(出口)は、まだ固まっていないと認識しています。というのも、先程述べた通りで元々非構造のデータが多くインプットすらない状況だったので、アウトプットはこうあるべきだという答えがないんです。

インプットがようやくできるようになりましたという”蓄積系”のサービスが多く、今後どうしていくべきかといった”シュミレーション系”のサービスはまだまだ少ないと感じています。

例えば、「あだ名で呼び合うと離職率が20%減ります」といった脈絡のない結果が返ってきたときに本当か疑ってしまうなど、施策ベースでもダッシュボードベースでも分析した結果のアウトプットの出し方が難しいです。答えが常に流動的で明確でない・業種業態によって求める指標が異なる中で、何をアウトプットするといいのかというのはHR全体の課題として存在しています。

今後の活用の広がりに期待が集まる

ようやくHRでもデータの蓄積がされるようになり、分析や分析結果のアウトプット方法などを検討できる基盤が出来つつあります。

これまで属人的で可視化されていなかった領域をデータ活用によって、人事業務の効率化だけでなく、従業員全体のエンゲージメント向上など様々な効果が狙えるため、HRでの今後の技術発展に期待を寄せています。

プロダクトの価値だけでなく人の情報を扱う上での倫理観も私たちが同時に提供すべきだと考えています。特に私たちのコア技術は言語に頼らない情報を抽出することを得意としていることで、文字に含まれる以上の情報を提供することとなります。新たな価値を創造することは、ともすれば悪用されてしまう可能性もありますが、それを防ぐための運用設計込みでお客様と協業しながらプロダクトを成長させていきたいです。

事業推進責任者の風間よりビジネス的視点から最先端のHRテックサービスについて紹介している記事もありますので、合わせてご覧ください。

>次回 ZENKIGEN Lab Report 005 はこちら

岡島 明伸(株式会社ZENKIGEN プロダクトマネージャー)

大学時代にHuman Resource ManagementのCertificateを取得。その後、ワークスアプリケーションズに入社してHR製品の開発に携わる。ZENKIGENではアドバイザリーとして関わっていく中で、2021年よりZENKIGENのプロダクトマネージャーとして従事。

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