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WEB面接でも公平・公正な試験はできる。大学プロジェクト責任者が伝授する「オンライン入試で失敗しないための4大ポイント」

坂本 珠里 (株式会社ZENKIGEN 大学入試オンライン化プロジェクト 責任者)

新型コロナウイルスの感染対策として、就職活動だけでなく、大学入試でも面接のオンライン化が進められています。しかし、業務の煩雑さや切り替えの困難さから従来通りの選考を継続した学校も少なくありません。

今回、WEB面接を大学入試に普及させるために10以上の学校を支援したZENKIGEN(ゼンキゲン)大学プロジェクトリーダー坂本に入試のオンライン化を妨げる課題をはじめ、WEB面接導入に向けてサービスを検討するときに評価してほしい「4大ポイント」を教えてもらいました。文末には本プロジェクト立ち上げ背景や誕生秘話などを記載したnoteもございますので、ぜひ最後までご覧ください。

大学入試のオンライン化を妨げる「3つの課題」

2020年5月、文部科学省から総合型選抜や学校推薦型選抜では「ICT (通信情報技術)を活用した入試」を検討するよう大学側へ通知が出されました。入試のオンライン化を実施するにあたり、各校が乗り越えないといけない課題は何でしょう?

坂本:課題は3つあります。受験生の安全を考慮した上で、試験機会を平等に提供するための公平性と公正性の担保です。

【大学入試がオンライン化できない「3つの課題」】

  • 1. 公平性の担保:オンラインの環境を平等に提供することができない
  • 2. 公正性の担保:カンニングなどの不正を行っていないか確認ができない
  • 3. サポート不足:新たな入試に対応できるだけの十分な支援が整っていない

坂本:例えば公平性の担保でいうと、「IT初心者の人でも、初めて使うWEB面接ツールで試験時にいつもの力を発揮できるのか?」などが挙げられます。公正の担保では、「受験者の使用デバイスによらず、通信環境やセキュリティの安全が担保された状態で試験を問題なく実施できるのか?」などのご相談を受けました。

なるほど。この中でも特に各校が問題視していたのはどのような点でしょう?

坂本:不正対策への対応です。大学が準備した環境以外で入試を行う場合、受験生の状況把握や行動のコントロールが難しくなることから、「入試で求められる要素が変わりすぎて、何を準備したら良いかから分かりません」と頭を抱える担当者が多かったんです。こうした新たな入試へのサポート体制が不足していることも、オンライン化に踏み切れない大きな要因です。

サポートが不足している背景には、どのような理由があるのでしょう?

坂本:一言でいうなら「今までの入試と真逆の試験スタイルになったこと」です。従来の面接では受験生が面接官を訪問していましたが、WEB面接では、画面の先で待っている受験生へ面接官が会いに行きます。新たに試験方法や対応策を一から講じなくてはならないため、サポートを受けようにも大学側としても現段階ではどこから手をつけて良いかが分からない状態なのです。

引用元:ZENKIGEN 大学入試面接 オンライン実施ご検討中の皆様へ 対面面接とWEB面接の違い P.3

入試の場合、就職活動とは異なり、試験日程が一般公開されますよね。情報が公開されている中でオンライン試験を実施することに対し、サイバーリスクを懸念する人も少なくないと思います。

坂本:仰られる通り、大学入試は詳細が開示された状態で実施されるため、オンライン入試にはハッキングのリスクがあります。受験生の個人情報を扱うことも踏まえ、セキュリティ対策にも今まで以上の配慮が必要です。しかし、入試を担当する職員の方の大半が、ICTやセキュリティは専門外です。そのため、受験生と大学を技術的にサポートすることが求められます。

引用元:ZENKIGEN 大学入試面接 オンライン実施ご検討中の皆様へ Withコロナ環境下の大学入試実施に求められること P.2

WEB面接の検討ポイントは「短期大量型の面接」に最適かどうか

こうした課題がある一方、ZENKIGEN大学プロジェクトでは約半年の間に10校近くがWEB面接サービスharutaka(ハルタカ)を導入し、オンライン入試を実施しました。実際、各校がサービスを検討するとき、どのような点を考慮していたのか教えてください。

坂本:観点は学校毎にさまざまですが、共通していたのは「総合型選抜や学校推薦型選抜を実施するために、大量の面接を短時間でやり切ることが可能なサービス」かどうかです。予定通りに進行するため、受験生の接続状況を大学側がリアルタイムで把握したいという声も多かったです。また、業務工数の増加や煩雑さから人為的なミスが発生しない機能や仕組みが備わっているか、入試までのサポート体制や支援内容についてもよくご質問されました。

【大学入試にWEB面接を導入したい学校が検討する「4大ポイント」】

  • その1:「短期大量型の面接」が可能なサービスである
  • その2:接続状況や面接進捗など「リアルタイムでの見える化」ができる
  • その3:面接URLの自動送付など、入試担当者に煩雑な業務や人為的なミスが発生しない
  • その4:大学特化型マニュアルなど、入試をサポートする体制が整っている

実際に導入いただいた方から好評だったのは、harutakaのどの機能でしたか?

坂本:特に反響が大きかったのは「リアルタイムでの進捗見える化」です。大学入試では、可能な範囲リスケをせず、予定通り日程を終える必要があります。そこで求められるのが、「当日の接続トラブルを可能な限りゼロに近づけること」です。harutakaでは、「接続確認チェックボード」という独自開発したモニタリング機能で、ネット環境や機器に不備がありそうな学生を抽出し、事前に大学からフォローできるようにしました。受験生に対しても、画面や声が乱れる心配がない状態を事前共有できるため、面接のみに集中してもらうことが可能となりました。

引用元:ZENKIGEN 大学入試面接 オンライン実施ご検討中の皆様へ 入試運用に適したharutaka独自のモニタリング機能 P.8

坂本:また、面接進捗をリアルタイムでモニタリングできるため、「対面面接以上にスムーズな運営ができた」という声も大学関係者から寄せられました。

まさに課題として上がっていた「公平性の担保」の解決策の一つですね。

坂本:はい、モニタリング機能の導入は、公平性の担保につながると思います。接続確認チェックボードが導入されるまでは、担当者の方が全受験生に連絡し、接続状況をひとつずつ確認する状況でした。受験生の接続状況が一目で分かるのは、担当者の業務負担という面でも大きな変化だと思います。

実際にこの機能が追加されたことで、医療系の学会からも「WEB面接でも公平性は担保される」とご判断いただき、専門医の面接試験においてharutakaが導入されました。

オンライン化に踏み切れない大学の中には、面接用URLの発行や送付など、従来の面接以上に担当者の業務が増加し、かつ煩雑化することを危惧している担当者も少なくありませんよね。

坂本:日頃から、オンライン会議向けサービスやスケジュール管理ツールを用いている大学担当者ほど、この印象を抱くかもしれません。harutakaでは受験生用の面接URLを一度に発行し、対象者へメールで届けることができます。ひとりずつ手作業でURLを発行し、コピペして学生や関係者へ送付する必要はありません。

大学入試を網羅した専用マニュアルを作成。試験当日まで各校に並走した

オンライン化に向けた課題の中には「サポート」という点も挙げられていましたが、実際に導入を進める中で、大学担当者はどのような支援を求めていましたか?

坂本:初めてオンライン入試を実施する大学が大半のため、harutakaの使い方サポートはもちろん、入試準備に向けた支援を求める声が多かったです。その一環として各校へ提供したのが、オンライン入試に特化したマニュアルです。学校関係者の声を踏まえ作成したことで、操作のみならず、募集要項での案内文面や入試当日の運営手順など、入試に必要な要素を網羅的に準備できました。


ZENKIGENから大学関係者へ提供された大学入試特化マニュアルの一例

坂本:マニュアルをそのままご活用いただく大学もあれば、入試に合わせアレンジされる大学もあり、皆様に使いやすい形でご利用いただいてます。なお内容は、各校からのフィードバックを参考に、定期的に更新しています。

新たな入試実施に向けて「分からないことが分からない」と悩まれている担当者も少なくないとのことですが、こうした大学関係者と話す中で、坂本さんが意識されたことを教えてください。

坂本:どの大学も手探りで進めている状況のため、「現在地の見える化」に取り組みました。スケジュールの全体像や面接実施までに必要となる業務の棚卸など、各校の担当者が無事に入試当日まで辿り着けるようガイドとして並走した感覚です。また、harutakaのようなクラウドサービスを初めて使う方も少なくないため、大学で導入されているオンプレミス型サービスとの違いなど、オンライン化に向けた基本的な話からお伝えしました。


ZENKIGENから大学関係者へ提供した大学入試での実施に向けたスケジュール例

学校経営もデータ戦略の時代へ。オンライン入試が変える大学の未来

現在WEB面接を導入している大学の中には、新しい形でオンライン入試を実施する学校も少しずつ登場しているそうですね。

坂本:はい、harutakaを導入いただいた駒澤大学など複数の学校では、従来のWEB面接の枠組みを飛び越えた「新しいオンライン試験」を行っています。

例えば、駒澤大学では、今年からスタートした「プレゼンテーションを用いた自己推薦」でharutakaを利用しています。オンライン上で資料を提示してもらいつつ、双方の顔を見ながら話せる状態がつくれたことで、操作や機能面も含め、教員の皆様からもご好評でした。

また、別の大学では学校推薦入試を、面接から録画選考に変更しました。つまり、これまでリアルタイムで行っていた面接を廃止し、学生が撮影した動画から候補者を判断することにしたんです。担当者は「録画からでも受験生の人物像や熱意を理解することはできましたし、何より面接運営にかかる業務工数の大幅な削減になった」と話しています。

WEB面接という選択肢が登場したことで、まさに大学入試は転換を求められていると思います。オンライン面接の将来を坂本さんはどのように考えますか?

坂本:現在WEB面接はツールとして注目されていますが、面接情報を蓄積する中で、どのような学生がどんな動機で受験しているかをデータとして解析できる未来が待っていると思います。これまで担当面接官しか知り得なかった情報を解析する中で、退学率削減に向けた対応策を検討したり、ターゲットにしたい学生像をより具体的にしたりできると思います。活用が進めば、受験生獲得に向けて効率の良い場所に広告を打ち出せたり、大学事業戦略の足掛かりが見つかったりするかもしれません。

最後に入試のオンライン化を検討する大学担当者にメッセージをお願いします。

坂本:デジタルな世界が広がる今、大学もデータドリブンな組織になって欲しいと思います。その一つとして活用いただきたいのが、オンライン入試です。今回ご紹介したオンライン入試向けのノウハウを冊子にまとめています。ぜひ下記からダウンロードいただき、まずはツールとしてのWEB面接利用から始めていただきたいです。

オンライン入試向けのノウハウはこちらからダウンロードください

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【受験生支援プロジェクト】未来の就活生のために私たちができること(執筆:坂本)

公立大学法人国際教養大学(AIU)様の導入事例
・ZENKIGEN大学入試のオンライン化支援のためWEB面接サービス「harutaka」の初期費用無償化プラン提供開始

坂本 珠里(株式会社ZENKIGEN 大学入試オンライン化プロジェクト 責任者)

株式会社リクルートスタッフィングに新卒入社し、法人営業に3年半従事する。その後、株式会社サイバーエージェントに転職し、約1年間広告営業を担当した。2019年12月、ZENKIGENへ入社。フィールドセールスチームにて営業に従事しつつ、2020年9月から大学入試オンライン化プロジェクトの責任者も兼務する。同プロジェクトでは、現在までに国公立・私立大学併せて10以上の大学を支援した。

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