アサーションとは?アサーションのトレーニング方法やメリットを解説
「相手の意見を尊重しながら自分の主張も行う」というコミュニケーションスキル、アサーション。この記事では、アサーションを身につけることによって得られるビジネスメリットや明日から実践できるトレーニング方法をご紹介します。
目次
アサーションの意味は?
アサーションとは、「相手の意見を尊重しながら自分の主張も行う」というコミュニケーションスキルのこと。もともとはアメリカの精神医学用語として使用されており、「自己主張」という意味を持っていましたが、日本で使用され始めた1980年頃からは、一方的な自己主張ではなく「自他を尊重した自己表現」という意味を示すようになりました。
相手に嫌な思いをさせずに自分の意見をしっかり伝えるということは、円滑なコミュニケーションを取るうえでとても大切なこと。アサーションを身につければ、より良い人間関係の構築を目指せるようになります。
アサーションの歴史
アサーション・トレーニングの歴史は、1970年代のアメリカで起こった人権運動から始まっています。誰もが対等に保証された人権によって、人種・性別・民族等の差別が撤廃されました。それまで抑圧されてきた人たちが自己主張の機会を得て、政治屋求職活動に参加していけるようになりました。それまで表現する機会がなかったため、自分をうまく表現する方法がわからず、自身喪失につながっていきます。
その後、アサーション・トレーニングはこのような人々に対して援助するために使われました。歴史的な背景により、個人がなぜアサーティブになれないかの理由やどのように対処したら良いのかの問題に繋がっています。
日本には1984年に導入され、日本文化に合うように開発されたことで教育現場や産業、看護などの分野で実施されています。
医療現場におけるアサーション
医療現場では看護師が、患者やその家族などとの適切な信頼関係、治療方針の相互理解や情報収集などのためにコミュニケーションが必要不可欠になります。看護師同士のコミュニケーションでは同僚や上司との情報共有に応用することができます。医療チームとしてコミュニケーションは必要であり、他の職種のスタッフとの関係性を作ることや情報共有を行うことで円滑な関係を作ることができます。
自分の意見や感情を表現することで相手に対して伝えたいことや伝えなければならないことをきちんと伝わるようになります。相手を尊重しつつも、自分の権利も尊重しながら対等に誠実な表現を行います。
アサーションには、相手がどのように反応するのかは含まれないため、「どのように伝えるか」「どのように受け取ってもらうか」が重要であることになっています。言いたいことが言えずにストレスが溜まっていることや情報誤認、未伝達からのインシデントや医療事故を防ぐためにも高めていくことが求められています。
参考文献:「宮崎大学」アサーティブ・トレーニング
アサーショントレーニングとは?
アサーションを身につけるために行うトレーニングのことを“アサーショントレーニング”と呼びます。最近では社員のコミュニケーション能力を高めるためにアサーショントレーニングを導入している企業も増えています。アサーショントレーニングは、実際のコミュニケーションの中で実践していくことで身につけることができます。具体的なトレーニング方法は後ほどご紹介します。
アサーションのメリット
身につければコミュニケーション能力が高まるというアサーションですが、ビジネスの場面では具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
自由な意見が出しやすくなりストレスが軽減される
コミュニケーションを取る際、相手の反応を気にして本心が言えないという人は少なくありません。自分が思っている本当の気持ちを我慢することはストレスに繋がり、逆に人間関係を悪化させてしまう可能性があります。自分の意見をうまく相手に伝えられるようになると気持ちの良い関係を築くことができ、ストレスを感じる機会も少なくなるでしょう。
立場の違う相手とも意見交換ができるようになる
ビジネスの場面では、上司と部下の関係やクライアントなど立場の違う相手と話す機会が多くありますよね。自分よりも目上の人に対しては失礼になるのではないかと、意見が言えなかったりイェスマンになってしまうことも。お互いに対等であることを意識し、失礼のない伝え方を習得すれば立場の違う相手でも意見交換ができるようになります。
自分にはない価値観を知れて、新しいアイデアが出やすくなる
人は皆それぞれの価値観を持っており、考えていることが異なります。お互いの価値観を尊重して話しができるということは、自分にはない新しい考えを知るチャンスになるでしょう。価値観の違いと聞くとネガティブに感じてしまいますが、別視点からの意見を聞くことで新たな発見が得られ、アイデアが生まれやすくなるとも言えます。
アサーションのタイプと具体例
ひとえにアサーションといっても、人の自己表現には3つのタイプがあります。アサーショントレーニングに取り掛かる前に、まずは自分のタイプを知ることから始めましょう。
アグレッシブ(攻撃タイプ)
1つめの“アグレッシブ”は、競争心が強く思っていることをはっきりと言う攻撃タイプ。常に自分が優位に立っていたいという気持ちから、思い通りにならないことがあると大きな声で主張したり相手が傷つくようなことを発してしまう場合があります。敵に回すと面倒ですが、味方につけるといいことも。「あまり関わりたくない」と感じてしまうような目立つ存在です。
ノン・アサーティブ(非主張タイプ)
2つめの“ノン・アサーティブ”は、自己主張が控えめで自分の意見を言えない非主張タイプ。はっきりと意見を言うことに苦手意識があり、自分に自信のない人が多いのが特徴。相手の反応を伺いながら発言や行動をするので、常に言い訳っぽくなってしまったり、意見を聞いても曖昧だったり少し扱いにくい存在です。
アサーティブ(攻撃的タイプと非主張タイプの黄金比)
3つめの“アサーティブ”はコミュニケーション能力が高く、人と良い関係性を築くことのできるバランスのとれたタイプ。相手の意見を聞きつつ、自分の主張もできるので仕事もスムーズに行うことができます。空気を読んだり、その場にふさわしい表現を使うことが得意な人気の存在です。
アサーションのトレーニング方法
実際にアサーションを身につけるためには、どんなトレーニングが必要なのでしょうか。ここでは、アサーション習得に役立つ3つのポイントをご紹介します。
①アサーティブな考え方を意識する
円滑なコミュニケーションを目指すためには、アサーティブな考え方を意識する必要があります。まずは、自分の意識を以下の項目のように変えてみるトレーニングをしてみてください。
【自分の考えを理解する】
相手に意見を言うとき、自分の考えがまとまっていなければ上手に伝えることはできません。自分の素直な気持ちに耳を傾け、理解してあげることが大切です。
【周囲の反応を気にしすぎない】
周囲の反応を気にしすぎると自分の本当の気持ちがわからなくなってしまうことがあります。周囲の反応は気にしすぎず、自分の気持ちに素直になりましょう。
【自分も相手も尊重する】
自分の気持ちに耳を傾けるのと同じように、相手の意見も尊重しましょう。また自分と相手は対等であることを意識しましょう。
②「DESC法」に当てはめて伝える
「DESC法」とは、自分の気持ちを4つの要素で相手に伝える方法。問題解決のために「状態・感情・提案・選択」を整理するようにしましょう。
(使用例)大事な打ち合わせの前に上司に急ぎの頼みごとをされたときは以下のような対応が当てはまります
③アイメッセージを使う
アイメッセージとは、主語をYOU(ユー)からI(アイ)に変えること。相手を傷つけてしまいそうなことや話しにくい内容なのどはアイメッセージを使用することで、嫌な印象を避けることができます。ただし、あまりにも表現が遠回しになると相手にきちんと伝わらない場合があるので注意してください。
(使用例)
ユーメッセージの場合:「君」はまだあの仕事を終わらせてないのか
アイメッセージの場合:今日中に仕事を終わらせてくれたら、「私」は助かるよ
アサーションを学ぶおすすめ書籍
アサーション入門
参照:www.amazon.co.jp/dp/4062881438
アサーションの第一人者、平木典子さんによる明日から実践できるコミュニケーションスキルが学べる1冊。
【書籍情報】
・著者:平木典子(著)、星井博文(シナリオ)、サノマリナ(画)
・出版社:日本能率協会マネジメントセンター
マンガでやさしくわかるアサーション
参照:www.amazon.co.jp/dp/4820719289
アサーション入門の著者、平木典子さんがコミュニケーションスキルをマンガで解説した1冊。
【書籍情報】
・著者:平木典子
・出版社:講談社
アサーションで円滑なコミュニケーション能力を身につけよう
アサーションはコミュニケーションを取る上でとても重要な要素になります。学ぶというよりは日常での実践が大切なので、まずはトレーニング内容を意識して過ごすようにしてみてください。円滑な人間関係を築いて、よりスキルアップを目指しましょう!
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