エンプロイアビリティとは?企業が注目する理由や向上のポイントをチェック
「雇用され得る能力」という意味を持つエンプロイアビリティ。個人の市場価値を上げるためのものですが、近年評価の対象として導入している企業も増えています。この記事では、厚生労働省が発表しているエンプロイアビリティの定義や、向上させるためのポイントをご紹介します。
目次
エンプロイアビリティとは
エンプロイアビリティとは、英語のEmploy(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉で、「雇用され得る能力」という意味を持ちます。雇用され得る能力とは、転職や再就職で企業に採用されたり、継続して雇用される能力のことを言います。日本では終身雇用制度の崩壊や労働環境の多様化により、必要不可欠な能力として注目されています。
エンプロイアビリティが企業で注目される理由
エンプロイアビリティは個人の能力を高めるものですが、評価の対象として導入している企業も増えています。エンプロイアビリティの向上を評価の対象にすることで、社員は積極的にスキルアップを目指すようになります。社員の能力が上がれば、生産性が高まり会社の業績向上や成長に繋がるでしょう。
エンプロイアビリティのメリット・デメリット
メリット
従業員のスキルアップに繋がる
雇用される力を高めていくことは、従業員の一人一人のスキルアップに繋がります。エンプロイアビリティを評価の対象とすることで、自身のキャリア形成のため意欲的に取り組む人が増えていくでしょう。また市場価値の高い人材になれば将来の不安解消にもつながるので、従業員にとっても大きなメリットと言えます。
優秀な人材が集まりやすくなる
優秀な人材は転職の際、自身の成長・スキルアップをサポートしてくれる企業を優先的に選択すると考えられます。企業は、エンプロイアビリティの向上を支援しているという点をアプローチしておくと、意欲的な人材が集まりやすくなるでしょう。
組織の業績向上
従業員のスキルアップや優秀な人材の確保ができれば、業務の生産性向上が見込めるので、結果的に企業の成長や業績アップに繋がると言えます。
デメリット
導入に負担がかかる
従業員のエンプロイアビリティ向上のためには、企業側の負担が大きくなるでしょう。例えばセミナーに参加する場合、費用だけでなく、担当者の準備工数も負担となってしまいます。エンプロイアビリティの向上を継続的にサポートするためには、実現できる環境作りをしておくと良いでしょう。
優秀な人材を流出してしまう
従業員の市場価値が上がると、優秀な人材を流出してしまうリスクがあります。企業側はスキルアップのサポートをするだけでなく、常に各人材に合わせた条件提示をやより高い目標設定を行い、自社にとどまる理由を作ることが必要になります。
エンプロイアビリティの種類
絶対的エンプロイアビリティ
時代や市場のニーズ変化によって影響を受けにくいのが絶対的エンプロイアビリティ。例えば弁護士や医師など、いつの時代にも必要とされる職業が例に上がります。このように専門性の高いスキルが必要な職業は、安定して仕事を継続することができるので、絶対的エンプロイアビリティを有していると言えます。
相対的エンプロイアビリティ
反対に時代や市場ニーズの変化に影響されるのが相対的エンプロイアビリティ。AI技術の発展によって労働が人間からロボットに代替えされてしまう職種が当てはまります。安定して仕事ができる絶対的エンプロイアビリティとは対照的に、常に市場のニーズを把握し必要な能力を習得していかなければいけません。
エンプロイアビリティの能力の定義
厚生労働省が発表している「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について」では、エンプロイアビリティーの能力は3つの能力からできていると定義されています。
A 職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの
B 協調性、積極性等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの
C 動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの
ただし、Cに関しては個人的属性で可視化しにくいため、AとBを基に評価する必要があります。すなわち高いエンプロイアビリティを目指すには、知識や技能だけを有するだけでなく判断力や協調性、積極性も必要ということになります。
参考:https://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0712-2.html
エンプロイアビリティチェックシートについて
厚生労働省は自己PRに自信のない若者や正規雇用で働くことに意欲が持てない人を対象に、自身の長所や強みを見出すエンプロイアビリティチェックシートを公開しています。上記の対象者でなくても、自分のエンプロイアビリティを確認するために使用することもできます。新入社員の研修や人事育成など、企業でも役立てることができるでしょう。
シートのチェック項目
シートは「就職基礎能力」と「社会人基礎力」の2つの項目から構成されています。「就職基礎能力」は、責任感や向上心・探求心に関する質問に答え、自信の職業人意識をチェックすることができます。「社会人基礎力」は、主体性や計画力・柔軟性などに関する質問に答え、前に進む力・考え抜く力・チームで働く力など社会人として働く基礎力をチェックすることができます。
簡易版チェックシート:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000199567.pdf
総合版チェックシート:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000199569.pdf
エンプロイアビリティを向上させるためには
ここでは、エンプロイアビリティーを向上させる3つの方法をご紹介します。
自分のエンプロイアビリティを把握する
エンプロイアビリティを向上させるには、今の自分のレベルを把握しておくことが重要。スキルを把握することで、今の自分に足りない部分が明確になります。次にどんな知識を得ていれば市場価値が上がるのかを考えるきっかけにも繋がるでしょう。
目標やキャリアプランを立てる
言われた仕事をただこなしているだけでは、自分の市場価値や強みがわからなくなってしまいます。目標やキャリアプランをしっかり持ち、達成していくことで、自分の価値や自己肯定感を上げることができます。
有能な人との関わりを持つ
有能な人と関わりを持つのもエンプロイアビリティを向上させる一つの手と言えます。成功を収めている人の行動特性やコミュニケーション能力を知ることで、新しい知識を取得できたり自信のモチベーションを上げたりすることができます。勉強会や研修など、多くの人が集まる場所に積極的に参加してみるのも良いです。
離職や転職を防ぐ環境作りも忘れずに
社員のエンプロイアビリティを高めることは、個人のスキルアップだけでなく、会社の成長や業績向上にも繋がります。一方で、市場価値が上がるということは優秀な人材を流出してしまう可能性もあります。企業側は、エンプロイアビリティを高めるサポートをするだけでなく、離職や転職を防ぐ環境作りをすることも重要になるでしょう。